『人生ことわざ面白“漫”辞典』第69回

 2月17日発売の「ビッグコミック」3月増刊号を購入しました。

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 この雑誌を買った目当てである『人生ことわざ面白“漫”辞典』第69回は「瘧が落ちた」です。藤子不二雄Ⓐ先生が今直面されている“瘧が落ちた”状態が綴られています。これはマンガ作品ではないしペースの遅い連載ながら、Ⓐ先生が一つでも連載をお持ちなのはありがたいなあ、と思います。だって、Ⓐ先生の新たな言葉、思い、近況などに定期的に触れられるのですから!

テレビ東京「新美の巨人たち」でマグリット回

 2月13日(土)放送のテレビ東京の番組「新美の巨人たち」のテーマがルネ・マグリット、ということで録画しておいたものを観ました。

 誰でも知っているようなものを意外なかたちで組み合わせて違和感や不思議な感じを生みだすマグリットの手法に中川翔子さんが挑むところなど面白かったです。中川さんがそれを「マグリットごっこ」と称していたのも好きだな。マグリットごっこ、楽しそうです。

 

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・「藤子不二雄Ⓐ展」で展示された『マグリットの石』の直筆原画

 

 藤子不二雄Ⓐ先生と仲良しの中川翔子さん、マグリットとの出会いはⒶ先生の短編『マグリットの石』だったとか。

 そうですよね、そうですよね! 私もそうなのです!!『マグリットの石』をはじめいくつかのⒶ作品でマグリットの存在を知り、魅惑されたのです。

 そういう共通体験をお持ち方、けっこういらっしゃるでしょう。

 

 藤子不二雄Ⓐ先生とマグリットといえば、個人的には2002年Ⓐ先生が名古屋でマグリットの講演をされたことが非常に思い出深いです。名古屋でⒶ先生と会えるだけでも比類なき喜びなのに、そのⒶ先生からマグリットのお話をたっぷり聴けるなんて、愛知に住む藤子ファンでマグリットが好きな私にはたまらない出来事でした。

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 Ⓐ先生はその講演の冒頭でマグリットの絵の最大の特徴として「観る人の想像力をかき立てる」と述べ、マグリットの絵画には「絵に描かれたものと、それとは無関係のタイトル」「シュールとリアル」「抽象と具象」といった様々なミスマッチがみられる、と解説されました。

 Ⓐ先生がマグリットの作品とご自分の作品を関連づけてお話しされたくだりには、とくにワクワクしました。マグリットの作品『世界大戦』について「貴婦人の顔がスミレの花束によって覆い隠されているという匿名性が特徴」と解説され、その特徴をご自分の作品『仮面太郎』と結びつけて話を展開されたのです。

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・「藤子不二雄Ⓐ展」で展示された『仮面太郎』の直筆原画

 

 講演のクライマックスは、Ⓐ先生の作品である『マグリットの石』をⒶ先生ご自身が解説するコーナーです。スクリーンに『マグリットの石』を1ページずつ映しながら解説していかれました。作者ご本人による全ページ解説を生で味わえるなんて、じつにじつに胸躍る体験でした。

 

 そして、Ⓐ先生がこの講演のために制作したマグリットのパロディ画×4枚にも歓喜しました。「富士山」「新宿の高層ビル群」「トキワ荘」「名古屋城とナナちゃん人形」の上空に巨大岩石が浮かんでいる画です。

 とくに、ローカルな「名古屋城とナナちゃん人形」を題材にしてくださったのには感謝感激でした。Ⓐ先生による講演地・名古屋への大いなるサービスですね。

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 講演会場は撮影NGだったので、記憶を頼りに「名古屋城とナナちゃん人形の上空に浮かぶ巨大岩石」の画を再現してみました。

 もちろんⒶ先生が制作された画はもっとずっとクオリティが高いのですが、まあだいたいこんな感じの構図だった…ということで(笑)

 

 Ⓐ先生がナナちゃん人形をご存じだったのは、かつて(1990年前後?)藤子スタジオにいらした女性スタッフのおひとりが名古屋出身で、Ⓐ先生はそのスタッフさんから「名古屋駅前にナナちゃんというノッポの美女が立っている」と聞き、たまたま用事で名古屋へ行くことになったときナナちゃんと対面していたからです。

 

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 講演後、美術館の売店マグリット展の図録のほか『ピレネーの城』のアドレス帳、『アルンハイムの領地』『リスニング・ルーム』の絵はがきなどを購入しました。

 

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 講演後にはⒶ先生と記念撮影もしていただけました!(当時Ⓐ先生のマネージャーをしておられたⒶ先生のお姉さまの取り計らいでした。ありがたや~!)

東大生が選ぶ“勉強になると思う漫画”ベスト1は『ドラえもん』

 2月16日(火)夜にテレビ朝日で放送された番組「林修今でしょ!講座特別編」で「東大生500人が選ぶ“勉強になると思う漫画”ベスト20」という企画をやっていました。

ドラえもん』がランクインするかしら!?と期待しつつそのコーナーを観ていたら、1位が『ドラえもん』でした!

 さすがは東大生のみなさま、お目が高い!!

 

ドラえもん』が勉強になると思う理由として東大生の方々が挙げたのが「ひみつ道具」です。

ひみつ道具が理科系への興味をそそる」「ひみつ道具が現実社会の発明のヒントになる」といったふうに理由が述べられたのです。

 

 すでに似たものが実現している(あるいは、似た概念のものが実現しているので将来的に実現が可能だと思せてくれる)ひみつ道具として、タケコプター、スーパー手ぶくろ、きせかえカメラが東大生の方々から紹介されました。

 MCの林修さんが紹介したのは「おこのみボックスがスマホという形で実現している」ということ。それは林さんの意見というより、そういうことがよく指摘されている、というスタンスでの紹介でした。

「ハッピープロムナード」などが期間限定で無料配信中

 公式による藤子・F・不二雄作品無料配信の企画、2月13日(木)から2月17日(水)午前10時まで以下の3作品が公開されています。

 

[現在配信中の作品]2/13(土)AM10時~2/17(水)AM10時

 

「ハッピープロムナード 」(てんとう虫コミックスドラえもん」21巻より)

「天体観測で見つけたものは」(てんとう虫コミックスチンプイ」3巻より)

みどりの守り神」(藤子・F・不二雄SF短編集Perfect版3巻より)

 

 https://dora-world.com/contents/1766

 

ドラえもん』の「ハッピープロムナード」は、百科事典のセールスマン氏の覇気のなさ・自信のなさをあらわす擬態語「ショボクレー」がとても印象的で、この「ショボクレー」という響きとともにお話が私の記憶に刻まれています。

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・『ドラえもん』「ハッピープロムナード」より

 ショボクレーとしょぼくれているセールスマン氏のいかにもしょぼくれた表情も忘れがたいです。

 この一コマの影響で、私もがっかりしたときなど不意に「ショボクレー」と口にしたくなるくらいです(笑)

 今回の無料配信で久々に読み返して、ますます「ショボクレー」への愛着が強まりました。

 

  SF短編作品の配信、前回は『ノスタル爺』で今回は『みどりの守り神』ですね。私はこの2作品のタイトルが並ぶと、こんなつながりを意識します。

『ノスタル爺』の土蔵などの風景を高峰至先生(アシスタント時は青木則幸さん)が描いており、『みどりの守り神』のジャングル化した新宿の風景も高峰先生が手がけているのです。(たしか、『みどりの守り神』が単行本に収録されるさいの同シーンの加筆修正作業は別の方がやったはずですが)

 

 当ブログで『みどりの守り神』と小松左京氏の小説『復活の日』を比較してみたことがありますので、無料配信で『みどりの守り神』を読まれたあとにでもご覧いただけたら幸いです。

 https://koikesan.hatenablog.com/entry/2020/12/29/225226

 

「コロコロコミック」3月号で『宇宙小戦争2021』の情報公開!

 本日、「コロコロコミック」3月号を購入しました。(公式の発売日は2月15日です)

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 今度の映画ドラえもんに関する情報がいろいろ載っている「のび太の宇宙小戦争2021超バトル出撃BOOK」が付録です! これを目当てに購入しました。

 原作には登場しない新キャラクター(女性のピリカ星人)が誰なのかもついに公式発表されました。

 映画の公開がますます待ち遠しくなります。

 

 巻末では、今号で執筆された各漫画家さんが「好きな歴史上の偉人を教えてください」との質問に答えています。

 徳川家康坂本龍馬エジソンダ・ヴィンチなど偉人と言ったらこの人物!という名前が並ぶなか、藤子・F・不二雄先生と答えている方が2名いらっしゃいます。そして、手塚治虫先生の名をあげた方も2名見つかりました。

コロコロコミック」で描かれている漫画家さんですから、『ドラえもん』の作者であり初期コロコロの中心作家だった藤子F先生のお名前が出るのは意外でもなんでもないのですが、それでも「歴史上の偉人」括りで藤子F先生の名をあげる方が複数名いらっしゃるというのはとても嬉しいですし、感慨深いものがあります。

コロコロコミック」に限らず漫画家さん全般に「好きな歴史上の偉人を教えてください」と質問すれば、手塚先生の名はかなり出てきそうな気がしますが、やはり手塚先生の名がこうして出るのも非常に嬉しいです。

 そして、現役のコロコロ作家さんにとっては藤子F先生も手塚先生も同時代人というよりすっかり歴史上の人物になっているんだなあ、ということもあらためて実感しました。私は藤子F先生や手塚先生と20年以上は同じ時代を生きられたわけで、そういう期間がただあったというだけで、じつにありがたい気がしています。

藤子・F・不二雄先生の異色短編『ノスタル爺』

 藤子・F・不二雄先生の異色短編『ノスタル爺』が、期間限定で無料配信されています。

 https://dora-world.com/contents/1766

(『ノスタル爺』の公開は2月13日(土)午前10時まで)

[期間限定]

STAY HOME特別企画!

まんが無料配信!

ドラえもん」はじめ藤子・F・不二雄作品を公開中!!

 

[現在配信中の作品]2/9(火)AM10時~2/13(土)AM10時

「きこりの泉」(てんとう虫コミックスドラえもん」36巻より)

「見た!パー子の正体」(てんとう虫コミックスパーマン」7巻より)

「ノスタル爺」(藤子・F・不二雄SF短編集Perfect版2巻より)

 

 公式的に無料公開されたおかげで、いま『ノスタル爺』がSNSでおおいに話題にのぼっています。

 主人公の浦島太吉は、自分の人生において掛け替えのない大切なもの(結婚相手と故郷)から戦争によって引き離され、そのあげく30年ぶりに帰国してみれば、何より大切なものの一切合切が完全に失われている事実を突きつけられます。

 ところが、通常ならありえない奇跡的な現象が太吉の身に起きて、失った大切なものをごっそりと取り戻すことになりました。溺れるように全身全霊で郷愁にひたる太吉……。

 

 私がこの短編マンガを初めて読んだのは、中学生のころでした。

郷愁」という感情の精髄、「郷愁」に内包された本質的で甚大な力のようなものをヒシヒシと感じたのをおぼえています。

 そのとき抱いた私の感情は、感動と言えるだろうし驚きとも衝撃とも言えますが、それまで味わったことのない独特の心の振動が私のなかに生じた記憶があります。

 

 自分にとって人生の根幹となるような大切なものが完全に過去のものとなり、永遠に失われ、もう二度と絶対に取り戻すことはできない……。

 そのはずだったのに、それら失ったものを奇跡的に取り戻すことができたとしたら……。

 いったんは失ったものの重要さ、大きさ、懐かしさを思えば、何があってももう二度と絶対に手放したくない!と思うのは自然な感情の流れでしょう。

 

 懐かしくてたまらないもの、思い残したもの、いったんは失ったもの、もう帰ってこないはずだったもの……。浦島太吉はそうしたものたちを奇跡的に取り戻し、深く果てしない思いに浸ります。郷愁です。何ものにも替えがたい、ほんものの、絶対的な郷愁。

 そんな深甚な郷愁に心身を浸してしまえば、「今後自分がどんな不遇な身に落とされても、奇跡的に取り戻した大切なものたちをもう決して失いたくない!」という思いに満たされるでしょう。そしてその思いは、しだいに動かしがたい強固なものになっていくでしょう。

 太吉は、取り戻したものを失わないための決断をします。

 客観的に見れば、彼のその後の人生が台無しになる世捨てのような決断です。しかし太吉には、それこそが失った妻と故郷と自分の時間を取り戻し己の全身全霊を満たしていく最善にして唯一の方法だったのでしょう。もうそれしかなかったのです。

『ノスタル爺』の作品空間に充満しているのは、そういうたぐいの深甚な郷愁です。その圧倒的な感情に触れて、私は心が震えました。

 

『ノスタル爺』で描かれた太吉の郷愁は、そのように特別な力と意味を有していて、単純に一般的な郷愁と比べることはできません。しかし、太吉の郷愁じゃなくとも郷愁というものは本質的にそういう力を潜ませているものではないか…と私は本作を読んで感じたのです。

 それを「郷愁力」だなんて言いあらわすと言葉が軽くなってしまいそうですが、ともあれ、郷愁がもつ力の侮りがたさがじわじわと胸に浸透してきます。

 

 

 『ノスタル爺』を読むと、「抱けえっ!!」という短い言葉がインパクトをもって強く心に刻まれます。その「抱けえっ!!」と同じくらい「それはそこにあった」も初読時の私にはインパクトがありました。ビシッと鮮烈に心に刻印されたのです。

 目の前でありえないことが起こっていて、そのありえない現象にSF的なロジックや理知的な説明はまるで加えられないのに、「それはそこにあった」というごく短い言葉だけで私はすべてを説得されてしまいました。

 

「抱けえっ!!」の叫びは、この物語を初めて読んだときと次に読むときとでは印象ががらりと異なって感じられ、「抱けえっ!!」と叫ぶ爺さんの表情から受け取れるニュアンスもまた違って感じられます。その意味で2度読み必定の作品ですね。

 

 奇跡的な現象が起きて、溺れるように郷愁にひたる太吉の耳に聴こえてきたのは、幼い里ちゃんの歌声。こーこはどーこの細道じゃ…。

 このシーンもおそろしいくらい私の心に迫ってきました。

 幼い里ちゃんの歌声が、この作品を読む私の耳にも物理的に聴こえてきたような“それはそこにあった”感を味わったのです。自分のいるこの現実の部屋が、里ちゃんの歌声以外は無音になったような不思議な感覚でした。

 

 浦島太吉は、太平洋戦争の終結を戦地で迎えたものの、終戦を知らぬまま孤島のジャングルで30年間生き抜いて日本へ帰ってきた元日本兵として描かれています。

 この太吉の設定からは、戦後28年間にわたりグアムのジャングルで潜伏生活をおくっていた元陸軍軍曹の横井庄一氏や、フィリピン・ルパング島のジャングルに潜んで暮らし戦後29 年目に生還した元陸軍少尉の小野田寛郎氏が思い出されます。

『ノスタル爺』が発表されたのは「ビッグコミックオリジナル」1974年2月5日号においてです。横井氏は1972年1月24日に発見され同年2月2日に帰国、小野田氏が日本へ帰国したのは1974年3月12日です。

 ということは、『ノスタル爺』が描かれた時期は小野田氏が帰国する少し前のことになります。その時期は、小野田氏が帰国することになる!といった報道が活発になされて旬の話題だったのかもしれませんね。しっかり調べたわけじゃないので確かなことは申せませんが…。

 

 そして、浦島太吉のネーミングの由来はもちろん「浦島太郎」です。太吉の故郷であり浦島一族が暮らしていた「立宮村」のネーミングは当然ながら「竜宮」から来ているのでしょう。

 

 1970年代のある期間の藤子マンガ(F・Ⓐ作品とも)に見られる緻密で抒情的な風景は、当時アシスタントだった高峰至先生が描かれていることが多く、たとえば『みどりの守り神』のジャングル化した新宿高層ビル群や『愛ぬすびと』の雨の降りしきる室生寺などが高峰先生のお仕事です。そして『ノスタル爺』の土蔵も(たぶん、土蔵以外の田舎の家屋なども)高峰先生が手がけておられるそうです。そうした実在感のある田舎の風景描写が、主人公に起きた奇跡「それはそこにあった」にいっそうの説得力を与えています。

 

 藤子F先生は、『ノスタル爺』で扱った「終戦を知らずジャングルで潜伏生活を送った元日本兵が日本へ帰還したら、故郷の村はダム建設で水没、大切な人も亡くなっていた…」というモチーフを、エスパー魔美「生きがい」でも取り上げています。

「生きがい」の初出は「少年ビッグコミック」1980年7月25日号です。藤子F先生は『ノスタル爺』で一度扱ったモチーフを6年半ほどのちに『エスパー魔美』で再び手がけ、『ノスタル爺』よりすっきりした前向きな結末を用意しました。“故郷を失った元日本兵”が物語のなかでより救われる結末を描いたのです。

 

『ノスタル爺』の“故郷を失った元日本兵”浦島太吉は、奇跡的に取り戻した過去に強く強く執着してそこから離れないでいようと世捨て人のような道を選びました。それに対し『エスパー魔美 生きがい』の横沢元二等兵は、失った過去に自分なりのケリをつけ前向きに第二の人生を歩んでいこうとします。

 世を捨て過去にとどまり続ける『ノスタル爺』と、社会の一員として未来を向いて歩き出す『エスパー魔美 生きがい』。“故郷を失った元日本兵”が物語のラストで取った選択は、そのように実に対照的です。

 

 むろん、『エスパー魔美 生きがい』のほうがモヤモヤせずすっきりとしたハッビーエンドを迎えるわけですが、『ノスタル爺』のほうも、それはそれで浦島太吉にとっては彼がそのとき取れる最善の道を選んでおり、二度と失いたくない故郷を死ぬまで失わずにすんだのですから、どちらが幸か不幸かは一概には言えないでしょう。

 ただ、これだけは言えましょう。

エスパー魔美 生きがい』が健全にすっきりと希望的なラストを迎えられたのは、やはり横沢元二等兵が魔美ちゃん&高畑さんとたまたま出会えたことが非常に大きいのだと。その出会いがあって、ほんとうに幸いだったと思うのです。

 

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・ゴールデン・コミックス『異色短編集4 ノスタル爺』(小学館

 私が『ノスタル爺』を初めて読んだのはこの単行本です。

 この巻に限らず、ゴールデン・コミックス異色短編集はどの巻も藤子先生が描いたのではないシリアスでミステリアスな画が表紙を飾っています。その表紙に加え、異色短編集の「異色」という語の響きが心に刺さって、未熟な私にはまだ早い世界を覗くような、なにかイケないものを見てしまうような、そんな感覚で単行本のページをめくったのをおぼえています。

 そして、実際に読んだひとつひとつの作品の内容にも、なにかイケないものを見てしまった感じを受け、カルチャーショックというか、自分の足場が揺らぐような驚きや衝撃をくらうことになったのです。