『ドラえもん』関連の記事いろいろ

 リニューアル『ドラえもん』の初回放送まであと3日となった。そんなところで、最近雑誌や新聞で見かけた『ドラえもん』関連の記事について書きとめておきたい。


「文藝春秋」5月号:『ドラ1組の26年』
 大山のぶ代さんが、ドラえもん降板にさいして感じたことを短い文章で綴っている。内容については、これまでの大山さんの発言の中で聞いたことのあるものがほとんど。
「厳密に言えば、私は初代ドラえもんではない」という話から切り出し、ドラえもんではきちんとした言葉で話そうと心がけてきたこと、小さい頃は「ドラ声ののぶ代ちゃん」と笑われたこと、2001年夏に病気になり「若い人たちに後を託したい」と思うようになったこと、北海道のラジオ番組に出演したときファックスのメッセージが番組最高記録を樹立したことなどについて書き記している。
 最後に、自分たち「ドラ1組」のあとを継いだ「ドラ2組」の番組がもうすぐ始まるが、「ドラ3組」「ドラ4組」とずっと受け継いでいってもらい、2112年のドラえもん誕生日を迎えても元気に続いていてほしい、と今後のアニメ『ドラえもん』にエールを贈っている。


●「週刊朝日」4月15日号:『「ドラえもん」声優総交代の驚き 最初のひと月が勝負だ』
 3月28日の新声優お披露目会見をうけた記事で、新声優5人を簡単に紹介しつつ、「声優グランプリ」編集長・竹内克行さん、「ボイスニュータイプ」編集長・古林英明さん、富山大学教授・横山泰行さんに、新声優の感想を聞いている。「ボイスニュータイプ」の古林さんは、「オーディションをした方は何度も審査を重ね、新しいドラえもんに本当に合った人を選んだんじゃないでしょうか。無名に近い人もいるのがその証拠。この世界のシガラミなしに選ばれたのだと思います」と話していて、私もその通りだと思った。今回の声優さんの人選からは、新しい『ドラえもん』をよりよい作品にしたいという製作者の本気さが伝わってきて、期待がもてる。


●「中日新聞」4月9日付夕刊:『15日、声優そろって若返り よろしく新「ドラえもん」』
 今回の声優交代が、通常12%台と安定している『ドラえもん』の視聴率に及ぼす影響について、テレビ朝日早河洋編成制作局長が「数字が下がらないとは百パーセント言い切れない。不安はある」と話している。この言葉から、今回のリニューアルが視聴率アップのための小手先の手段ではないことが察せられ、好ましく感じた。
 当記事にも、富山大学教授の横山泰行さんが登場している。


●「サンデー毎日」4月17日号:『〝新声〟「ドラえもん」の顔』
 3月28日の新声優お披露目会見の模様を伝えるカラーグラビア記事。ドラえもんの着ぐるみに頬擦りする水田わざびさんの表情がうまく撮れている。


●「東京スポーツ」(東海地方では「中京スポーツ」)4月6日号:『ドラえもん新声優 エロゲーム出演疑惑』
ドラえもん』の新声優が過去にエロゲームに出演していたのではないか、というネット発の根拠薄弱な噂を、スキャンダラスで下品な記事に仕立てている。東スポらしいといえばらしいやり口であるが、これから新たにスタートを切ろうとしている『ドラえもん』に悪意やからかいを投げつけたこの記事には不快感をおぼえる。
 東スポに載る記事の大半がそうであるように、この記事も、スキャンダルをおもしろがる読者のための扇情的な読み物であり、真実を伝えることを目的とした報道ではない。こういう記事を鵜呑みにする人は少ないと信じたいが、どんなでっちあげでも活字になったとたん信じてしまう人は大勢いる、というのが現実なので、その辺が心配である。


●「週刊現代」4月23日号:『ADは見た!「春の新番組」アホバカ舞台裏生中継・「ドラえもん」新声優陣にトラブル続出』
 これも、上記の東スポと同じく悪意のある記事だ。当記事中にこんな記述がある。
「新スネ夫役の関智一は旧スネ夫役の肝付兼太に電話して『新しいスネ夫役をやることになった関です』と挨拶したら、肝付は『あんた誰?』と言って電話を切ってしまったそうです。あまりに唐突な交代劇に、旧声優陣たちには不満が渦巻いている。ドラえもん大山のぶ代も、いまだに怒っています」
 ここで引合いに出された関さんと肝付さんの一件については、MISTTIMES.com Blogさんが真相を書いていて、もとはといえば、関さん本人が3月28日の新声優お披露目会見で笑い話として語ったことなのである。「週刊現代」の記事は、その関さんの笑い話のオチ部分を記述しておらず、それによって、事実がもつ意味を悪い方向へ捻じ曲げてしまっている。真相を知っていて故意に捻じ曲げているのか、ADの暴露話をそのまま載せているのかわからないが、悪質な記事であることに変わりはない。
 旧声優陣に不満が渦巻いているとか、大山のぶ代がいまだに怒っているというくだりも、いいかげんなものである。
 先に挙げた「文藝春秋」5月号で、大山のぶ代さんはこんなことを書いている。

今回、揃って卒業することになったが、私自身は、二〇〇一年の夏に直腸がんの手術を受けた頃からなんとなく卒業を意識してきた。(中略) このときから、誰かに何かあってから辞めるのはいやだと思ってきた。実際に「若い人に後を託したい」といった相談もしたが、テレビ局や製薬会社の方に相手にされず、簡単には辞められないんだと思っていた。それから四年近くが経ち、仲間全員で話し合い、スタッフも声優も一緒に交代することになりました。

 この文章からもわかるように、大山さんは今回の声優交代劇に対して怒っているとは考えられず、それどころか、すでにご本人が数年前からドラえもん卒業を頭に思い描き、そのことを関係者に相談したりもしていたのだ。
 それに、テレビ朝日側からの声優降板の打診は、たいへん礼を尽くした方法でおこなわれたようで、その点でも大山さんが今回の件で不満を抱いているとは考えにくい。他の旧声優陣についても同様で、もちろん「寂しい」とか「まだやれる」と思った方もいただろうが、それは『ドラえもん』を長年つとめてきた声優さんならごくごく自然に抱く感情であって、最終的には皆が納得ずくで『ドラえもん』を卒業したのである。
 リニューアル『ドラえもん』がスタートする記念すべき週に、こんなひどい記事が有名週刊誌に載ってしまい、残念に思う。


●新作情報
 藤子不二雄A先生の『愛…しりそめし頃に…』最新作が載った「ビッグコミックオリジナル」5月増刊号を購入。今回は、『まんが道』に登場したある人物が、満賀道雄に会うため富山県から上京してくる。