水田わさびインタビュー

 当ブログ7月1日のコメント欄でsuwatechさんが情報をくださったとおり、7月1日付「中日新聞夕刊」に、ドラえもんの声を演じる水田わさびさんのインタビュー記事が掲載されている。その記事の中から、私の印象に残った部分を紹介したい。

聞き手:大山のぶ代さんからの引き継ぎです。
水田:直接お会いしたことはありませんが、声優さん以外にも幅広く活躍されていて、尊敬しています。けれど、自分流に楽しくやらせてもらっているのでプレッシャーは感じていません。

 ドラえもんの声を引き継ぐさい、わさびさんが大山さんに直接会っていろいろとアドバイスを受けていたら、それが余計なプレッシャーになっていたかもしれないので、二人が会わなかったのは正解だったと思う。もし二人がじかに会って、大山さんが「美しい日本語を守ってほしい」「汚い言葉は使わないで」などと自分のポリシーを告げていたら、わさびさんは、原作どおりのキツイ言葉をよくしゃべる今のドラえもんを、わさびさん流にのびのびと演じられなくなってしまったかもしれないから。

五月に姉が住む名古屋に行ったのですが、ある商店街では、私の正体がドラえもんの声だと分かると、魚屋さんから八百屋さん、パン屋さん、みーんなが「これ持ってけ、あれも持ってけ」って。市場の兄ちゃんなんか、背中をまくって「生皮に(サイン)書いてくれ」(笑) ペンで書きましたよ。

 わさびさんは、ドラえもんの役をやっていなかったら、名古屋の商店街で市場の兄ちゃんにサインをねだられることもなかっただろうから、こういう面でも彼女がドラえもん役を得たのは大きなことだったと思う。
 それにしても、わさびさんが行った名古屋の商店街ってどこだろう? ちょっと気になる。

聞き手:三歳の娘さんがいます。
水田:夜寝る前に一時間くらい、その日の出来事をおしゃべりするんです。夫に「早く寝ろ」と言われるくらい夢中で。その時間がすっごく幸せ。主に私は聞き役で、何ちゃんとどこに遊びに行ったとか好きな先生の話を聞いて。会話するってすごく大切だと思います。それに、子どもが同じことを何度も繰り返し言う気持ちなどは、職業柄参考になります。
「よっぽどこれを強調したいんだな」というときのしゃべり方とか笑い声は子ども特有ですし。

 夜寝る前の娘さんとの会話で学んだことが、今後の『わさドラ』の中で生かされてくるのかもしれない。といっても、それは、とてもさりげなく微妙な、ちょっとしたニュアンスの問題だろうから、はっきりと「これだ」とわかるものではないだろう。でも、そういうささやかな変化が、「最近のわさびさん、前よりうまくなったなぁ」と我々に感じさせる因子になるのだと思う。

聞き手:今後の目標は。
水田:ドラえもんとしては、より一層のび太君と友達になって〝日常のにおい〟を視聴者に伝えたい。わさドラは、のび太君の保護者じゃなくて、友達なんです。未来からやってきた特別なロボットではなくて、ジャイアンやしずかちゃんと一緒に笑うし、一緒に泣く。そういうところを出していきたいです。

 わさびさんが伝えたいと言う、ドラえもんの日常的・友達的な側面は、これまでの『わさドラ』でよく表現できていると思う。のび太たちと一緒になって笑い泣き怒り遊ぶドラえもん野比家に家族として溶け込むドラえもん… 『わさドラ』ではそんなドラえもんを普通に見ることができて楽しい。
 ただ、そうなってくるとさらに欲が出る。ドラえもんは、友達的な側面を大きく持ったキャラクターだが、それとともに、保護者的な面や教養人的な面も有していて、それが『ドラえもん』という作品の多様性や深みにつながっている。
 わさびさんには、保護者や教養人的なドラえもんの演技にも磨きをかけていってもらいたい。

聞き手:視聴者にメッセージを。
水田:リニューアルして、絵もドタバタ感もより原作に近くなっているので、これを機に原作を読み返してもらえれば、もっとドラえもんを楽しめると思います。

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