「Neo Utopia」40号

 藤子不二雄ファンサークル「ネオ・ユートピア」の最新会誌「Neo Utopia」40号が届いた。今号も、濃厚かつ多彩な藤子不二雄関連の記事・企画であふれていて、読み応えがあった。
ひととおり目を通してみたが、細かいところは読めていないので、これから1週間ほどかけてじっくり読み込んでいきたい。


 今号に関しては、記事の執筆や資料の提供などで個人的にいろいろと協力させていただいたので、いつもにも増して愛着のわく一冊となった。
 たとえば、特集「アニメ ドラえもん」のなかの「新作アニメレビュー」では、私がこのブログで書いてきた『わさドラ』1クール分の感想を載せていただいている。といっても、ブログで書いた長文をそのまま載せるわけにはいかないので、元の文章を大幅に縮小したうえ、新たなコメントを加えたりして、コンパクトに書き直している。
 私の文章と並んで、「はなバルーンblog」のおおはたさんの文章も掲載されていて、2人の感想を各話ごと対比的に読んでいける構成になっている。
 それから、「通刊40号記念 藤子トリビア40連発」という特集では、いくつかのトリビアで情報・資料協力をさせていただいた。
 あと、これは一会員としての投書だが、「とび出せ!感想」のコーナーに、私の長めの投稿文2本が掲載されている。1本は「藤子マンガに流れるあすなろ精神」について書いたもの、もう1本は「藤子Aマンガと仮面」をテーマにしたものである。
 自分が執筆したり協力したりした記事が、こうしてきれいにレイアウトされ、しっかりした本になったのを見ると、胸の底からじわじわと喜びがわいてくる。





 今号で私がとくに興味深く・素晴らしく思った記事を挙げていきたい。



・表紙
 あの渡辺歩さんが描きおろしたイラストが表紙を飾っていて、まず目を奪われる。ドラえもんを中心に、しずかちゃん、スネ夫ジャイアンのび太、ドラミちゃんが楽しそうにポーズをとっている。



・特集「アニメ ドラえもん」内、「大山のぶ代さんじゃないドラえもん
 前述した特集「アニメ ドラえもん」のなかに「大山のぶ代さんじゃないドラえもん」という記事がある。タイトルのとおり、大山のぶ代さん以外の人が演じたドラえもんの声について調査・考察したものである。執筆者は「藤子不二雄atRANDOM」のよねさんだ。
 今年3月によねさんとお会いしたさい、そのような記事を書く準備を進めていると聞いていたので、実際に読めるのを楽しみにしていた。
 この4月にドラえもんの声が大山のぶ代さんから水田わさびさんに交代して物議をかもしたが、この記事を読むと、大山さんや水田さん以外にもドラえもんの声を演じた人がこんなにいるんだ、と改めて驚かされる。昭和48年に日本テレビで放送された、いわゆる「旧ドラ」でドラえもんの声を担当した富田耕生さん・野沢雅子さんをとりあげているのはもちろん、「小学二年生」昭和49年4月号付録のソノシートドラえもんを演じた謎の女性声優や、昭和56年放送のアニメ『ぼくらマンガ家 トキワ荘物語』に出てきたドラえもんを演じた山本圭子さんといった、超マニアックなドラ声まで紹介している。素晴らしすぎる!



・特集「アニメ ドラえもん」内、別紙壮一氏インタビュー
 特集「アニメ ドラえもん」内には、数々の藤子アニメのプロデューサーを務めたシンエイ動画・別紙壮一さんのインタビュー記事もある。シンエイ動画の設立からアニメ『ドラえもん』放送開始に至るまでのエピソードや、映画『ドラえもん』の制作秘話など、アニメドラファンの心を誘う話が満載だ。
 私が最も心を動かされたのは、ジャイ子の本名を考えようという席で藤子・F・不二雄先生が「やっぱり、考えるのはやめましょう。もし××子と決めてしまって広まったとたんに、同じ名前の女の子が、ジャイ子と呼ばれてからかわれてしまうのは、かわいそうだから」と発言した、というくだりである。別紙さんはその藤子・F先生の発言について「藤本先生はそこまで考えている、すごい優しい方だったのですね」とコメントしており、私も同感だ。



・特集「通刊40号記念 藤子トリビア40連発」
「藤子トリビア40連発」は、マンガ、アニメ、ゲームから藤子先生本人、周辺的な事柄まで、藤子不二雄にまつわる様々なトリビアを集めた、「ネオ・ユートピア」ならではの濃ゆい企画だ。ここで紹介された「ムダ知識」の数々は、藤子ファンにとっては「お宝知識」となりうるものばかりであろう。各トリビアに付けられたNUスタッフによる解説文が気がきいていて読み甲斐がある。



・「藤子作品デザイン研究会」
 Hit‐TOSHIさんによる連載記事「藤子作品デザイン研究会」、今回は『くまんばち作戦』のくまんばち号大図解だ。
 私は、昭和30年代後半の藤子不二雄A先生は、メカニックを描くのが得意なマンガ家としての一面ももっていたと認識している。くまんばち号は、そんな時期の藤子A先生によって生み出された、昆虫のくまんばちをモデルにした戦闘機である。
 当記事は、くまんばち号を詳細な図解とリアリティに満ちた性能解説で紹介していて、楽しめる。
 あと、この記事を読んでいる最中に、「Hit‐TOSHIさんはこの記事の締切りが迫っていたので6月に私と愛知万博に行けなかったのだなぁ」と個人的なことを思い出した。



・インタビュー記事3点
 今号には、別紙壮一さん以外にもインタビュー記事が3点あって、それぞれに堪能できた。
藤子不二雄Aランド完結記念・ブッキング左田野渉専務インタビュー」
藤子不二雄Aランド復刊までの経緯が詳細に語られている点が注目だ。結果として、『怪物くん』がいちばん売れ、『忍者ハットリくん』も当然よくて、『まんが道』は他社と被っているのにいい数字が出た、という話も興味深い。「100票行っている『ミス・ドラキュラ』『さすらいくん』を第二期Aランドのようなつもりで丁寧に出して行きたいと思っています」という言葉には期待が持てる。


「元藤子スタジオチーフアシスタント・たかや健二先生インタビュー」
ドラえもんブーム時代に藤子・F・不二雄先生のチーフアシスタントだったたかや健二さんのインタビューとあって、藤子・F先生の仕事の仕方、考え方、人柄、作品制作の裏話など、ファンにはたまらない話が盛りだくさん。たかやさんが、ある時期から藤子・F作品のキャラクターの肩に見られるようになったシワを描きはじめた張本人であるとか、『鉄人兵団』のザンダクロスのデザインを担当したとかいう話は、ファンのあいだでは比較的知られているが、それ以外にも多くの裏話を読めて、大満足のインタビュー記事だった。てんとう虫コミックスで『ドラえもん』を読んでいると、たかやさんが代筆したぺージが26巻・35巻・36巻で見受けられるが、なぜそのページをたかやさんが代筆することになったかも語られている。


「NU会員さんインタビュー・たてじまさん」
たてじまさんは1980年代生まれの女性で、私はこの春にお会いしたばかり。当記事のなかで「彗星のごとくわれらの前に現れた彼女は…」と紹介されているが、まさにそんな印象だ。



・藤子マンガの再録
『Uボー』(3話分を再録)、『かけろセントール』(最終回)、『東京シンデレラ』、『べんきょうまんがパン太くん』(カラー再録)
サンデー毎日」に掲載された藤子・F先生と高円宮憲仁親王の対談記事も再録されている。
『東京シンデレラ』については、当ブログで感想を書いたことがあるので、参考にしていただきたい。
http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20041116