「復刊ドットコム奮戦記」

●8月5日頃発売された「復刊ドットコム奮戦記」(左田野渉著/築地書館/2005年8月10日発行/1700円+税)を藤子ファンの視点で見た場合、最大の目玉は、なんといっても表紙イラストを藤子不二雄A先生が描きおろしていることだ。ブッキング社員の方々がオフィスに勢揃いして、著者の左田野渉さんを中心に皆が明るく楽しそうに復刊書籍を掲げている絵柄だ。


 本文では、7月に全149巻が完結したばかりの「藤子不二雄Aランド」と、復刊が強く望まれながら実現に至らなかった「藤子・F・不二雄ランド」にまつわるエピソードなどが書かれている。


 左田野さんは、足かけ2年の歳月を経て完成した「藤子不二雄Aランド」の初回配本分の発売日にはじっとしていられなくて、自宅近隣のコンビニを見学して回ったそうである。そして「三軒目にして、ようやく『怪物くん』と『ビリ犬』を発見。「やぁ」と思わずその背表紙に声をかけたくなります。その後、立て続けに『怪物くん』と『ビリ犬』が並んでいるのを見つけて、上機嫌でした」と述懐している。
 私も、「藤子不二雄Aランド」が発売されたときは、コンビニの棚に「Aランド」が置いてあるのを発見して感激したものだ。だから、送り手と受け手という立場の差はあるものの、左田野さんとは「藤子不二雄Aランド」初回発売日に同じ体験・同じ感情を共有したような気分である。


 それから、こんな文章も私の関心をそそった。

藤子不二雄A先生のサイン会の終了後、ちょっとしたプレートなどをファンの方が欲しがるため、藤子スタジオの方々も「どうして、こういう物を欲しがるのですかねー」と不思議がっています。しかし、先生に関するものなら何でも欲しがるというのがファンなのです。


藤子不二雄A先生のサイン会や原画展では、会場内の表示プレートみたいな物まで、皆さん欲しがります。また、サイン会や講演会の度に地方から出てくる高校生のファンもいます。

 このあたりのことは身に覚えがあって、自分たちの行動を書かれているような気がした。たとえば、2002年10月横浜で開催された「アジアMANGAサミット」で藤子不二雄Aブースが設けられ、そこで藤子A先生のサイン会が行なわれたことがあった。「藤子不二雄Aランド」を買うとサインがもらえる、というものだった。そのとき我々は、全イベントが終了したあと、藤子不二雄Aブースで使われたプレートやポスターなどをいただいて山分けしたのだ。
 私は、「藤子不二雄A」と大きく印字された長さ1メートルに及ぶプレートなどを手に入れた。この「藤子不二雄A」プレートは、折りたたんで鞄などにしまうことができなかったので、そのまま腕に抱え、横浜から愛知の自宅まで公共の交通機関で帰ったのだった。


「サイン会や講演会の度に地方から出てくる高校生のファンもいます」というのは、藤子イベントが関東や富山で開かれるたびに新潟からやってくるMくんのことを指しているにちがいない。そんなMくんとも最近会っていないが、藤子スタジオの社長さんから「Mくんの面倒をみてあげてね」とじきじきに頼まれた身としては、Mくんの近況がちょっと気になる。



復刊ドットコム奮戦記」
http://www.fukkan.com/sell/index.php3?mode=detail&i_no=42910153






●8月12日発売の「ビッグコミックオリジナル増刊」9月12日号に、『愛…しりそめし頃に…』の最新話「夢の58 新しいヒーロー」が掲載されている。その回で、ついに『シルバークロス』が登場。


 今回の話の中では、満賀道雄が「少年」の増刊号に描いた『フクロウの城』と『カラス人間』の評判がよかったことから「少年」本誌に『シルバークロス』の連載が決まった、という流れになっているが、これは現実とは時系列が違っている。『恐怖探偵局』の第1話として1963年に発表された『フクロウの城』も、1962年に読切で発表された『カラス人間』(原題『大鴉』)も、『シルバークロス』の連載が始まった1960年よりあとに発表されているのである。
 こうして、作中と現実の時系列の違いを発見するのも、『まんが道』や『愛…しりそめし頃に…』を読むときのちょっとした楽しみだ。





●明日19日は『わさドラ』の放送日だが当日中には観られないので、感想を書けるとすれば、土曜か日曜になりそうだ。