「N・Sワッペン」「デンデンハウスは気楽だな」放送

koikesan2005-12-09

 12月9日(金)、『わさドラ』31回目の放送


●「N・Sワッペン」

初出:「小学六年生」1973年6月号
単行本:「てんとう虫コミックス」2巻などに収録


【原作】
 ジャイアンは、多くの人が常識として知っている磁石の磁極の性質を、世紀の大発見かのように得意げに発表する。のび太は、そんなジャイアンを指さし、「そんなのだれでも、しってるよ」「おくれてるなあ」などと真正面からジャイアンの無知と幼稚さを指摘。とうぜんジャイアンは怒り狂う。
 このように、のび太が口下手であるがため自らに災いを招いてしまう話は、『ドラえもん』でいくつも見られる。ときとして口達者な詭弁家ぶりを見せるのび太だが、基本的には口下手で損をするタイプなのだ。
 それにしてもジャイアンの怒りようは尋常ではない。男・ジャイアンが、涙まで流して怒り狂うのだから、よほどのび太にバカにされたことが悔しかったのだろう。ジャイアンのプライドは、のび太の正直すぎる言葉によって、本格的に深く傷ついたようだ。


 本作でドラえもんが取り出すひみつ道具は、N・Sワッペン。磁石のN極とS極は互いに引かれ合い、同じ磁極どうしは互いに跳ね返し合う、という性質を活かした道具である。
 これを使ってママとパパをくっつけ、「おしあわせに」と笑顔で歩き去っていくドラえもんのび太には、どことなくこそばゆい気持ちにさせられた。


 のび太は、自分とジャアインに同じSのワッペンを貼ることで、ジャイアンに襲われる危険から逃れることができた。それだけで済ましておけばよいものを、ワッペンを利用してしずちゃんを引き寄せようなどと余計なスケベ心を出すものだから、結果的にひどいめにあうことになる。それがのび太らしいといえば、のび太らしいのだが。
 気絶したジャイアンのび太に向かって飛んでくるコマは、一種のホラーシーンだ。



わさドラ
 磁石の性質を発見したジャイアンの感動や喜びが、原作よりもオーバーに表現された。ジャイアンの表情が実に豊か。ここでジャイアンの得意満面なさまが強調されたことで、「そんなの誰でも知ってるよ」とのび太に言われたジャイアンの激烈な怒りように、ますます説得力が感じられた。


 N・Sワッペンを貼った人が互いに跳ね返し合ったり引き寄せ合ったりする動きが、小気味よく表現されていた。とくに、しずかちゃんがピョンピョン跳ねるところや、気絶したジャンアンが宙に浮いていく場面がよかった。
 のび太のちょっとした動作も気に入った。N・Sワッペンのおかげでジャイアンにつかまらなくて済むと分かり、手を交互に大きく振って行進するように歩くところや、しずかちゃんにN・Sワッペンを貼るアイデアを思いつき、両腕を水平に広げて駆け出したりするところなど、とくに快活で楽しかった。


 原作ののび太は、N・Sワッペンの力でしずかちゃんがペタッとくっついてくる場面を想像してニヤニヤするが、『わさドラ』では、ただくっつくだけでなく、しずかちゃんをお姫様だっこする場面をイメージして、大いにデレデレするのだった。




●「デンデンハウスは気楽だな」

初出:「小学四年生」1975年7月号
単行本:「てんとう虫コミックス」9巻などに収録


【原作】
 テストの答案を捨てたんじゃないかとわが子を疑ったママに対する抗議のため、家出ならぬ家入りを実行するのび太。家入りとは、ひみつ道具〝デンデンハウス〟に立てこもることだ。
 のび太が、デンデンハウスのなかにお尻から入り込む姿勢や、デンデンハウスから顔だけ出している絵面など実におもしろい。
 

 デンデンハウスにこもってストライキを敢行したのび太は、ママへの要求を書いた紙まで差し出す。この辺は、本当のストライキで労働者が雇用者に権利を要求する構図さながらである。
 のび太が答案を捨てていなかった事実が判明し、ママはのび太の要求を聞き入れるのだが、それも束の間、出てきた答案が0点だったため、ママは激怒。答案を捨てても捨てなくても、どちらにしろ叱られるのび太であった。
 最後、デンデンハウスに身を隠すのび太は、立てこもりというより引きこもりといった感じになってしまった。



わさドラ
 家出を止めてくれるなと手を引っぱられるポーズをとるのび太と、のび太を止めるそぶりのないドラえもんの対比がおかしかった。


 のび太がデンデンハウスの入口にお尻を突っ込み、体を折りたたむようにして中へ入り込んでいくときの、スポンという吸い込まれ方がいい味を出していた。


 玄関先でデンデンハウスから顔を出し、道行く人を眺めるのもいいもんだと言うのび太だが、『わさドラ』では、道行く人に好奇の目で見られる描写が加えられたため、道行く人をただ眺める立場より、見世物になっている感が強くなった。


 のび太の要求が書かれた紙の文面が完璧に原作そのままで、ちょっと感動。文章の内容だけでなく、字体まで原作どおりなのだ。原作のひとコマをコピーしたかのような同一性だった。


 途中、郵便配達人が登場するが、この人が原作どおりキツネ目の顔で描かれるか、ひそかに注目していたが、原作とはまるで違う、普通の顔をした人になっていた。




 
 上の写真は、この秋、サントリーのキャンペーンで手に入れたドラえもんレジャーシート。サントリーのペットボトル入りドリンク(500ml)を4本買うと1枚もらえた。わさドラデザインのドラえもんの顔が多数プリントされている。写真は折りたたんだ状態で、このかたちにすると手提げバッグとしても使用できる。