「無人島の大怪物」放送

 すでに4日がすぎてしまったが、3月10日の「わさドラ」は、「無人島の大怪物」前後編を放送。この話も、ここしばらく連続している恐竜関連のエピソードである。前後編の合間には水田わさびさんと大原めぐみさんが登場し、映画『のび太の恐竜2006』の見どころを語った。


●「無人島の大怪物」

初出:「小学四年生」1981年9月号
単行本:「てんとう虫コミックス」41巻

【原作】
 原作は21ページあって、『ドラえもん』作品のなかでは中編の部類に入る。無人島を舞台にした冒険テイストの作品だが、男の子の下半身がしずちゃんの眼前にさらされるネタが繰り返され、そのネタがオチでも使われるため、この露骨な下ネタが何よりも本作の主題のように感じられてくる。
ドラえもん』は、のび太ドラえもんにものを頼むところから話が始まる場合が多いが、本作ではジャイアンスネ夫しずちゃんドラえもんに頼み事を持ちかけるところから始まるという点でちょっと新鮮だ。


 本作で私が好きなのは、人魚になったのび太ジャイアンの頭に手をついて「バァー、ぼくだよ」と海面から姿を現すコマだ。のび太に手をつかれたジャイアンの無表情さが笑いを誘う。
 無人島で悲鳴を聞いたジャイアンが、その悲鳴を「どうせ、のび太がミミズでもみたんだろ」と解釈するのもおもしろい。ジャイアンがいかにのび太を情けなく思っているかがうかがえる。このセリフは、スネ夫ジャイアンが、気絶したのび太を見て「小さなトカゲみてひっくりかえってる」と嘲笑する最後のコマへの伏線にもなっている。ジャイアンスネ夫のなかでのび太は、小さなミミズやトカゲを見ただけで悲鳴をあげたり気絶したりする小心キャラクターなのだ。


 無人島からいったん帰宅したのび太がナシを食べ「ナシ大好き」と言うところは、私も果物のなかではナシが好物なので共感する。



わさドラ】(生き残るのはダレだ!? 無人島の大怪物)
 普段着から水着への着替えは、原作と違って〝着せかえカメラ〟を使用。映画『のび太の恐竜2006』に出てくる道具なので、映画公開中のこの時期にタイミングを合わせて本作でも登場させたのだろう。


 人魚に変身したのび太が海中で泳ぐシーンが原作より豊かに描写された。「泳ぐってこんなに楽しいんだ!」というセリフは、自力で泳げないのび太らしい実感がこもっていた。ウミガメ、クマノミ、イルカなどいろいろな海中生物が登場し、画面に彩りを添えてくれたのも楽しい。
 人魚になったのび太が、ジャイアンの頭に手をついて海面に姿を現すところは、アニメで見てもジャイアンの表情が可笑しい。


 いったん帰宅したのび太が食べる果物が、ナシからバナナに変更。このときママが見ているテレビで、落語番組が放送されていた。「わさドラ」では以前にもママが落語番組を見ていたことがある。どうやら、「ママは落語好き」というプチ設定があるようだ。


 男の子の下半身のあの部分は、徹底して視聴者から見えないよう配慮されていた。しずかちゃんの身体や、地面に咲く花、ドラえもんが持つ木の枝などで、それが隠されたのである。とはいえ、作中のしずかちゃんは原作と変わらず、ことあるたびにそれを見せつけられ、悲鳴をあげたり恥ずかしがったりすることになるのだった。


 番組の前半で原作のおよそ15ページ分を消化してしまったため、後半はアニメオリジナルのシーンが多めに追加された。とくに目立った追加は、ジャイアンが物語の語り部のようになって、のび太が大蛇に丸呑みにされた話や無人島を舞台にした怪談話をしずかちゃんとスネ夫に語って聞かせるくだりだ。歌は暴力的にへたくそなジャイアンだが、物語を語って聞かせる技量は優れているようだ。ただし、ジャイアンの語りの場面は、尺を埋めるためにとってつけた感が少なからず漂っていた。




わさドラ」放送スケジュールコロコロコミック4月号より)

●3月17日
「しりとり変身卵」(てんコミ28巻)
石器時代の王さまに」(7巻)


●3月24日 完全攻略「のび太の恐竜2006」1時間スペシャ
「勉強べやの大なだれ」(2巻)
「化石大発見」(11巻)
「宇宙ターザン」(16巻)


●3月31日、4月7日、4月14日は休み