「しりとり変身卵」「石器時代の王さまに」放送

 3月17日放送の「わさドラ」は、てんとう虫コミックス28巻の「しりとり変身カプセル」と、7巻の「石器時代の王さまに」をアニメ化。相変わらず恐竜関連のエピソードが続いている。厳密に言えば、「しりとり変身カプセル」に出てくるゴジラは実在した恐竜ではないが、「わさドラ」ではゴジラをイグアノドンに変更することで恐竜を登場させた。
石器時代の王さまに」にも恐竜そのものは出てこないが、巨大なマンモスが登場する作品であることから、恐竜関連のエピソードに準ずるものといえそうだ。



●「しりとり変身カプセル」

初出:「小学四年生」1983年3月号
単行本:「てんとう虫コミックス」28巻などに収録

【原作】
 しずちゃんは、ペガサスに乗って青い空を飛んでみたいと夢を語る。それを聞いたのび太は、しりとり変身カプセルを飲んでペガサスに変身するが、そのペガサスはずんぐりむっくりした体格でぜんぜんカッコよくない。その不恰好なルックスが読者視点で見ると結構な笑いどころになるが、そんなペガサスに乗せられたしずちゃんはひたすら恥ずかしい思いをするばかり。しかも、憧れのペガサスに乗れたと思えばこんな不恰好な馬だったのだから、美しい夢を壊されることにもなったはずだ。


 個人的に笑えるのは、テンマからマメに変身したのび太スネ夫に踏み潰される場面だ。マメに変身するだけでも可笑しいが、それがスネ夫にギュと踏まれることでさらに笑いが喚起される。



わさドラ】(のび太が恐竜に変身!? しりとり変身卵)
 原作の「しりとり変身カプセル」から、「しりとり変身卵」に変更。「わさドラ」では薬系のひみつ道具の自主規制が目立ち、今回もそのひとつとなった。


 のび太が変身したマメは、スネ夫でなくジャイアンに踏まれた。原作には登場しなかったジャイアンがその場にいたので、マメを踏む役は、体重の重いジャイアンがふさわしいだろう。


 ペガサスから降ろしてもらったときのしずかちゃんは、口では感謝を示しながら、表情や口調は心からしらけた感じで、こういう演技は、かかずゆみ版しずかちゃんの真骨頂だと思う。


 話の最後でのび太が変身するものがゴジラからイグアノドンに変更された。「ン」で終わってこれ以上変身できなくなったというオチは、しりとりを題材にした本作にふさわしいものになった。オチの改変としては見事な部類に入るだろう。



●「石器時代の王さまに」

初出:「小学三年生」1971年10月号
単行本:「てんとう虫コミックス」7巻などに収録

【原作】
 のび太は、石器時代に行って現代文明の利器を見せつければ、原始的な生活を送るその時代の人々に驚かれ尊敬され、あわよくば王様扱いされるだろうと考える。その案を聞いたドラえもんは「そううまくいくかね」と無関心な様子。のび太はタイムマシンに乗ってひとり石器時代へ向かうが、結局は王様になるどころかサルだと思われペット扱いされてしまう。さらに、巨大マンモスを一撃でしとめたドラえもん石器時代の人々に神様扱いされ、のび太にとっては実に皮肉な結末を迎えるのだった。のび太の当初の目論見と、実際に起こった出来事の、はなはだしい落差が笑いを誘う。
 のび太が話す日本語が石器時代の人には動物の鳴き声に聞こえるところや、石器時代の家族がのび太をサルだと認識し「晩のおかずに…」などと話し合っているのを見たのび太が自分は尊敬されていると確信するところなどで、カルチャーギャップのおもしろさも味わえる。


 のび太は、石器時代に缶詰を持ってきて缶切りを忘れるが、これは「雪山のロマンス」でもやってしまった、のび太らしいうっかりミスだ。
 マンモスが登場する大ゴマでは、マンモスの体毛の一本一本まで描かれ、F先生の古生物への愛着が感じられる。



わさドラ】(のび太王? 石器時代の王さまに)
 のび太が部屋の中でフィギュアスケートのような踊りをするのは、やはりトリノオリンピックでのフィギュアスケートの盛り上がりを意識してのことだろうか。


 原始人の母親が石器を持って、捕えたのび太を「今晩のおかずに」と言う少しブラックな場面は、原作でも好きなところだが、アニメで観るとまたゾクッとするおもしろさがあった。そして、のび太がマッチを擦ったりラジオや懐中電灯を出したりして原始人をびっくりさせようとするが何一つうまくいかないところも、改めて楽しく感じられた。