「ゆめの町、ノビタランド」放送

 アニメ『ドラえもん』、4月28日(金)の放送は、新生ドラえもん1周年記念SP!!パート2。



●「ゆめの町 ノビタランド」
【原作】

初出:「小学四年生」昭和49年7月号
単行本:「てんとう虫コミックス」3巻などに収録

 藤子・F・不二雄先生は、ミニチュア好き、模型好きであり、「藤子・Fの創作は一種の箱庭療法である」と論じる識者もいたりして、本作のように登場人物がミニチュアの町を作りそこで遊びに興ずる話は、F先生のそういった趣味性・精神性が如実に現れた好例だろう。


 F先生は、ミニチュアの町に魅惑された発端について、次のように語っている。

いろんな影響があったんですけど、谷崎潤一郎の小説で何という題名のものだったかもう忘れましたが、その中でミニチュアの町を作る話があったのです。夜には豆球も点灯し、それが鏡の池に映るという精巧な物でひどく刺激されたんです。まねして厚紙で家を作って並べてみたりしたのが最初かも知れませんね。
(「タミヤニュース」1985年1月号)

 ここでF先生が挙げている谷崎潤一郎の小説が何かと思って調べてみたことがあるが、結局判らずじまいだった。タイトルからして『小さな王国』(1918年)がそれっぽいかなと思ったが、どうやらそうでもないようだ。F先生のミニチュア趣味のルーツともいえるこの小説が何なのか知りたいところだ。





【アニメ】(よみがえった幻のストーリー ゆめの町、ノビタランド)

 テレビ朝日版『ドラえもん』で最初に放送された話が「ゆめの町 ノビタランド」である。その当時の映像が、今回20秒ほど流された。



 放送初期のテレ朝ドラは、関東地方では、月〜土曜の夕方に1話ずつ放送され、そのうえで日曜朝に30分番組で3本ずつ再放送されたが、私の住む東海地方では、月〜土の帯番組がなく*1、日曜だけの放送だったため、関東では再放送扱いの日曜放送分が、私にとっては初見の作品となった。だから、私がテレ朝ドラ第1回を観たのは、関東における第1回放送日昭和54年4月2日(月)ではなく、日曜版の初回となる4月8日(日)のことだった。



 昭和48年放送の日テレ版『ドラえもん』を当時観た記憶がない私にとって、テレ朝版の「ゆめの町 ノビタランド」が、アニメ『ドラえもん』で初めて観たエピソードということになる。動いて喋るドラえもん初体験が「ゆめの町 ノビタランド」だったわけだ。
 今回「わさドラ」で新たな「ゆめの町 ノビタランド」が放送されるにあたり、昭和54年4月8日当時の「ついにドラえもんのアニメがはじまった!」という感動を胸に蘇らせつつ鑑賞しようと思った。



 私はさほどミニチュアに興味があるわけではないが、それでも、のび太の部屋の中まで精巧に再現されているとか、書店から豆粒のようなマンガ本が散らばったとか、そんなミニチュアの細部に注目するシーンにはかなりそそられた。細部まで精巧に再現されたミニチュアに収集癖を駆り立てられたり、それを自分の手で組み立ててみたいと思う人の気持ちがよく分かる。



 ミニチュアの町で皆が遊ぶシーンは、原作では大ゴマひとつを使って鳥瞰的に描写されていたが、アニメではその部分がたっぷりと描かれており、ミニチュアの町のテーマパーク的な魅力と、そこで遊ぶ子どもたちの楽しげな様子が十全に伝わってきた。
 ドラえもんはドラ焼きを食べ放題、のび太はマンガ三昧、しずかちゃんは憧れの服を手にとり、スネ夫はゲームに夢中で、出木杉は図書館で調べもの。そんな、各自の好みに合った行動が生き生きと感じられた。



 建物も人間も縮小されたミニチュアの世界では、普通のアリがけっこう巨大な生き物に見え、タンポポの花は、人間がその上に乗れるほどの大輪と化す。そういった描写がインサートされたことで、ミニチュア世界から見た実世界のサイズ感をおもしろく味わえた。
 ミニチュアの町であっても皆で野球をやればなぜかボールが神成さん宅へ飛び込んでいく、というアイデアは気が利いていた。



 この作品は、全体的に楽しさがあふれていて、純粋な気持ちで観ることができた。「大山ドラ」第1話で実に印象的だったミュージカル・シーンは、さすがに「わさドラ」では描かれなかったなあ。



(「りっぱなパパになるぞ!」のレビューは明日書きます)

*1:アニメ『ドラえもん』の帯放送は、名古屋テレビでは1年半遅れで始まった。http://hanaballoon.com/club/tokai/data01.html