「あの人に会いたい〜藤子・F・不二雄」放送!

 23日(日)放送の「あの人に会いたい」(NHK教育/午後7時45分〜55分)は、藤子・F・不二雄先生がテーマだった。たった10分の短い番組だったが、生前のF先生の貴重な映像が、現在の日曜夜のお茶の間に紛れもなく流れたことがまず感慨深かった。



 当番組中、F先生が話をしている映像の大半が、1985年3月14日放送の「この人 藤子不二雄ショー」と、1983年8月31日放送の「おはよう広場 子どもおもしろ講座 藤子不二雄先生の自信をもつには」からのものだった。藤子不二雄A先生と一緒に並んだ映像を使ってくれたのは素直に嬉しいし、さらに手塚治虫先生まで出してくれてありがたかった。



「この人 藤子不二雄ショー」は、二人で一人時代の藤子先生が出演した番組のなかでも、最も内容が充実しておもしろかった番組である。二人で一人の藤子不二雄にスポットをあてたショー形式の番組で、演歌歌手・水前寺清子さんが司会を担当。手塚治虫先生と武田鉄矢さんがゲスト出演し、藤子不二雄について熱く論じた。藤子ファンのあいだでよくほほえましげにツッコミが入るのは、番組終盤、藤本先生が安孫子先生の、安孫子先生が藤本先生の少年時代の姿を、互いに描きあった場面である。できあがってテレビ画面に映されたそのイラストが、どちらも明らかに安孫子先生の画風だったのだ。つまり、前もって安孫子先生が描いておいたイラストを、その場で二人が描いているふりをしていたわけである。(その場で二人が描いていたのは、おそらく草や木など背景の一部のみ)
 今回は、この番組の一部が編集されて放送されたわけが、埼玉県にあるNHKアーカイブスへ行くと同番組の全体を観られるようだ。
 http://www.nhk.or.jp/nhk-archives/home.html



「おはよう広場 子どもおもしろ講座 藤子不二雄の自信をもつには」は、スタジオに集まった子ども達に向け、藤子先生が〝自信〟をテーマに語りかける番組だった。ここで、昨晩「あの人に会いたい」で放送されなかった部分で私が大いに共感した、「おはよう広場」での藤子先生の発言を紹介したい。
 子ども時代の藤子先生は、二人ともコンプレックスのかたまりで、藤本先生は「スポーツはダメ、勉強もそれほどではなく、自慢できるのは足で耳の後ろを掻けたことくらい」、安孫子先生は「背が低いことでバカにされ、肉体的・力的な劣等感に悩んでいた」と話している。そんな藤子先生が自信をもてるようになったのは、「マンガ」と「友達」との出会いだった。
 しかし、自信とはそんな単純なものではなく、ふらふらと動き回るもので、今でも自信のなさに苦しむことがあるという。藤本先生は、「自信がありすぎるとうぬぼれになるし、コンプレックスがバネになることもある」と話し、安孫子先生は「100%自信をもってしまうと嫌味になるので、6割は自信があって4割は自信がないほうが感じがいい」と述べ、二人ともが自信をもちすぎることに警戒心を示しているのが興味深い。二人の謙虚な人柄が感じとれる発言である。



 昨晩の「あの人に会いたい」のラスト、F先生がワイプ画面で「子どもの夢や願望ってのは、大人もみんな抱いてる色んな夢や願望の基本的なものなんです…」などと語っている映像は、1993年4月6日放送の「夢の工房 藤子・F・不二雄の世界」から抜粋したものだ。
 今回使われた映像は、個人的には、ほとんど過去に観たことがあるものだったとはいえ、F先生が動いて喋っている映像は、いつ観ても、胸のときめきを呼び起こし、幸せな感情を運んでくれる。と同時に、F先生が今はこの世にいない事実が頭をよぎり、少し切なくなってくる。


「あの人に会いたい 〜藤子・F・不二雄〜」は、7月30日(日)22:45〜22:55、BS2で再放送される予定。
 http://www3.nhk.or.jp/hensei/program/p/001/31-06627.html




※藤子情報
1986年と87年NHKで放送されたドラマ『まんが道』のDVDが、ついに発売される。(ドラマ『まんが道』は、今年になってCSの「チャンネルNECO」で再放送されている)

まんが道 Vol.1」
●発売日:9月22日
●価格:¥9,500(税抜)
●DVD2枚組(全15話収録)
●10月発売のVol.2とあわせて収納できるBOX付き
藤子不二雄A先生インタビュー収録の4P解説書封入


※「まんが道Vol.2 青春編」は、10月25日発売予定 価格:¥9,500(税抜)


http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000GPPL9O/249-5039841-9187537?v=glance&n=561958