「ふんわりズッシリメーター」「未知とのそうぐう機」レビュー

 3週間連続で休んでいたアニメ『ドラえもん』が10月20日(金)から再開。「ふんわりズッシリメーター」「未知とのそうぐう機」の2作品が放送された。


●「ふんわりズッシリメーター」

原作初出:小学五年生・六年生1989年12月号同時掲載
単行本:てんとう虫コミックス第41巻
アニメサブタイトル:「ドラミちゃん式ダイエット! ふんわりズッシリメーター」

【アニメ感想】
 導入部が怪奇テイストで、これからのび太ドラえもんにふりかかる災難と、ママのいら立ちが暗示された。
 リニューアル後2度めのドラミちゃん登場だが、全般的にママの大仰な動きや表情が目立ってドラミちゃんの存在感が稀薄に感じられた。ママがヘルスメーターに乗って自分の体重を確認したときのリアクションがとくに大仰で、一瞬ムンクの叫び状態になったりもした。個人的に藤子アニメにおける過剰演出は好みではないが、今回のママのリアクションは許容範囲、というか素直に笑いを誘われた。
 のび太の操作ミスで重量過多になったママが地面に埋もれていくシーンは、原作のようにいきなり垂直に沈みこむのではなく、ママが自分の体に異変を感じつつ背中から倒れこむように地面にめりこんでいった。
 ラスト、フトメレンズをかけたママの目を通したドラミちゃんやドラえもんらの太った姿は、動きが加わって原作からいっそう面白味を増した。



●「未知とのそうぐう機」

原作初出:小学四年生1978年4月号
単行本:てんとう虫コミックス第17巻など
アニメサブタイトル:「人類初の宇宙戦争か!? 未知とのそうぐう機」

【アニメ感想】
 本作の原作には登場しない円番さんが特別出演。UFOに関する薀蓄を披露したりUFOを捜し歩いたりとけっこう出演場面があった。円番さんは、てんとう虫コミックス13巻所収の「ハロー宇宙人」に登場するUFOマニアのおじさんで、原作ではこの「ハロー宇宙人」にのみ登場する。「ハロー宇宙人」は、リニューアル後のアニメ『ドラえもん』では2005年5月20日に放送されている。今後もUFO・宇宙人関連のエピソードで円番さんの再登場があるかも。
 放送当日、私はプリンどら焼きという、アンのかわりにプリンの入ったどら焼きを食べたばかりだったので、ハルカ星人のハルバルをもてなす各種食べ物のなかにドラ焼きがあったのが個人的にポイントだった。 
 ママがハルバルをほうきで叩くシーンは、なかなか豪快で面白かった。ハルバルがのび太の部屋でビー玉を発見したときの興奮した表情も良い。



「未知とのそうぐう機」は、そのサブタイトルが明示しているように、映画『未知との遭遇』(スティーブン・スピルバーグ監督)を意識した作品だ。
未知との遭遇』というと、私は、藤子不二雄A先生がこの映画を初めて観たときのエピソードを思い出す。A先生のコミック・エッセイ『パーマンの日々』第3回(「ビッグコミック」1978年5月25日号)で描かれたエピソードだ。A先生は、ゴルフの取材を名目にハワイへ行ったのだが、本当の目的は、日本で公開される前の映画『スター・ウォーズ』を観ることだった。
 現地でホノルル・ガイド新聞を見ると、ワイキキ2劇場で『未知との遭遇』を公開中、とあった。A先生は、『未知との遭遇』もまだ観たことがなかったので、『スター・ウォーズ』の前にそちらを観ることに。
 ワイキキ2劇場に入ると前のほうのシートに座って『未知との遭遇』を鑑賞。「やっぱりスピルバーグはすごい!」と感動したが、映画が終わって場内が明るくなっても辺りはシーンとしたままだった。「『スター・ウォーズ』は終わると拍手喝采だが、『未知との遭遇』は終わっても観客はシーンとしている」と聞いていたA先生は「なるほど」と思って後ろを振り向いた。するとびっくり。「うしろにはだれ一人としてお客がいなかった!お客はボクだけだったのダ!」 
 A先生は、その日の夜『スター・ウォーズ』を観に行ったのだが、そちらは満員だったそうだ。
 このときF先生は一緒ではなかったようなので、F先生は『未知との遭遇』を日本で観たのだろう。



 これもA先生の話になるが、A先生はSF作家・川又千秋氏との対談で『未知との遭遇』に関してこんなことを言っている。

川又「『未知との遭遇』や『スター・ウォーズ』はビデオやディスクで手に入れたい映画のはしりでしたね」
藤子A「『未知との遭遇』はビデオかディスクで見てても、結構いいんですよ。ちょっと、個人的な感じがあるような映画でね。『スター・ウォーズ』とはまたちがって、ひとりで見ていたほうが面白い感触があります」 
(「こんなビデオが面白い 洋画編」(世界文化社/昭和63年1月1日発行))

 A先生は『未知との遭遇』について、個人的な感じがあるような映画で、一人で観たほうが面白い感触がある、と述べているが、A先生がハワイで初めて『未知との遭遇』を観たときも劇場のなかにA先生しか客がいなかったわけだから、A先生はこの時点ですでに『未知との遭遇』を一人で観られる環境を得ていたことになる。