AERA COMIC ニッポンのマンガ

koikesan2006-10-24

 現在発売中の手塚治虫文化賞10周年記念「AERA COMIC ニッポンのマンガ」(朝日新聞社/2006年11月1日発行/1048円+税)は、浦沢直樹高野文子吾妻ひでお諸星大二郎谷口ジローといった手塚治虫文化賞受賞漫画家の描き下ろし短編マンガをはじめ、井上雄彦インタビューや手塚治虫文化賞10周年記念イベント採録など、実に内容の詰まったムック本だ。
 手塚治虫文化賞第1回(1997年)の「マンガ大賞」受賞作が藤子・F・不二雄先生の『ドラえもん』だったということで、同賞の選考委員でもある呉智英氏が「藤子・F・不二雄へのオマージュ」として『一生涯、少年「まんが道」』という文を寄せている。文題から察せられるように、壮年期をすぎてもなお優れた児童マンガを描きつづけたF先生の稀有な漫画家人生を讃えている。そのうえで、F先生によく与えられる「童心派」というレッテルに対し、それだけでは藤子・F・不二雄の全体像をとらえそこねることになるとして、卓抜な構成力を児童マンガの枠に封じ込めた禁欲性を指摘し、F先生がその禁欲性を例外的に破った事例として異色短編集を挙げている。
 呉智英氏が藤子F&A作品について論じた文章は非常に共感できるものが多く、今回の文章も私の藤子F作品に対する認識と共振しあった。たしか呉氏は、1996年10月1日放送のF先生追悼番組「ETV8 こんなこといいな、できたらいいな 藤子・F・不二雄の世界」(NHK教育)に出演したさいも、児童漫画家としてのF先生を高く評価したうえで、異色短編『分岐点』の切抜きを示しつつ、“藤子・F・不二雄は、単に甘い夢を描いただけの作家ではなく、人生経験を重ねた大人の鑑賞眼にもたえうる、社会や人間存在への鋭敏な眼差しを有した作家であった”といった主旨の発言をしていたはずだ。



AERA COMIC ニッポンのマンガ」でとくに嬉しいのは、今年発掘された幻の手塚作品が公開されている点だ。GHQが日本占領中に検閲のため収集した本を保管するプランゲ文庫で、これまでまったく知られていなかった、あるいは存在は知られていたが現物未確認だった手塚マンガが複数発掘され、それらの作品が本書で公開されているのだ。『ハンスと金のかみのけ』(「少年少女 漫画と読物」1949年新年号別冊付録)、『カキノユクエ』(「こどもの丘」1947年11+12月号)、『やりきれません』(「新世界」1948年3月号)などを読むことができる。



 本書を買いに行ったとき、書店のレジで「必携!鉄人28号ナビ手帖」という小冊子が無料配布されていたので、もらっておいた。潮出版社が現在刊行中の「鉄人28号 原作完全版」をPRするための冊子で、“「原作完全版」が「完全」と銘打たれた理由”“原画「蘇生」の舞台裏”“『鉄人28号』の中に手塚治虫先生を発見!”などけっこうマニアックな記事で構成されている。全24ページ。