月曜ドラマランド『藤子不二雄の夢カメラ』

 1980年代、フジテレビに“月曜ドラマランド”という単発ドラマ枠があった。
 夜7時半から始まる1時間半の番組で、人気マンガをドラマ化することが多く、アイドルを主役に据えた回が目立った。
 マンガを原作にしながら、原作とは別物としか言えないような作品がけっこうあった、との印象が強い。
 演技力の拙いアイドルが主役をつとめたりして、ひとつのドラマ作品として見ても質的にいかがなものか、と思える回もあった。あのころの時代のノリみたいなものがあって、ライトな雰囲気をまとった作品が多かった気がする。
 と、なんだか否定的なことを書いてしまったが、アイドルファンには魅力的なドラマ枠だっただろうし、夕食でもとりながらライトな感覚で見るにはちょうどよい内容だったのかもしれない。



 この月曜ドラマランド枠のなかで、藤子・F・不二雄先生原作のドラマが何度か放送されている。
 その第1弾が、1986年3月3日放送のひな祭り特別企画『藤子不二雄の夢カメラ』だった。それまでメディア化(テレビ化、映画化など)されることのなかったF先生のSF短編がドラマになる!という驚きと喜びをおぼえたが、月曜ドラマランドの枠で放送されるということであまり期待はかけられなかった。
 実際にオンエアを観ると、小泉今日子中山美穂、荻野目洋子という当時のスーパーアイドル3人を主役に起用した全3話のオムニバス形式で、やはりF先生の原作から離れたオリジナル色の強いストーリーだった。F先生の上質なSF短編群が、原作に忠実にきっちりドラマ化されたらどんなに感動的だっただろう…と残念がりながらも、ドラマはドラマでなかなか面白かったのを救いに感じたものだ。“世にも奇妙な物語”のテイストだったかな。


藤子不二雄の夢カメラ』は、その1年後の1987年3月2日、月曜ドラマランドの枠で再び放送された。再放送ではなく新作が作られたのだ。
 前作と同様、“ひな祭り特別企画”で全3話のオムニバス形式だった。主演は、南野陽子富田靖子三田寛子の3人。1作めの3話分と2作めの3話分、合計6話すべてにイッセー尾形が出演していた。彼の役回りは、原作でいえばヨドバ氏にあたるのだろう。


 月曜ドラマランド藤子不二雄の夢カメラ』の放送内容は以下のとおりだ。

※ひな祭り特別企画『藤子不二雄の夢カメラ』(1986年3月3日放送)
第1話「不思議少女・サヨコ」(中山美穂
第2話「しあわせの黒い鳥」(荻野目洋子)
第3話「じゃんけんぽん」(小泉今日子


※ひな祭り特別企画『藤子不二雄の夢カメラ』(1987年3月2日放送)
第1話「ブルートレイン・ブルース」(南野陽子
第2話「さ・よ・な・らジゴロ」(富田靖子
第3話「闇からの訪問者」(三田寛子


 さらに、ドラマ『藤子不二雄の夢カメラ』は1988年になって月曜ドラマランドの枠から飛び出し、全5回のシリーズ物にもなった。1回が30分の放送で、主演は渡辺美奈代だった。

※『藤子不二雄の夢カメラ』(主演・渡辺美奈代)
第1回 「恋人カメラ」 (1988年2月25日放送)
第2回 「タイムカメラ」(1988年03月3日放送)
第3回 「もしもカメラ」 (1988年3月10日放送)
第4回 「恐怖カメラ」(1988年3月17日放送)
第5回 「さよなら夢カメラたち」(1988年3月24日放送)

 ここで、渡辺美奈代主演『藤子不二雄の夢カメラ』に関連したグッズを紹介しよう。
 
 これは、ポスターとテレホンカード。どちらも、同作のビデオソフト(ポスターの写真の左上に小さく写り込んでいる)がリリースされたときの販促品である。テレカもポスターもビデオソフトも、同じ写真を使っている。
 
 こちらは、ドラマの主題歌『両手いっぱいのメモリー』と挿入歌『グッバイBOY』のレコードだ。渡辺美奈代は、ドラマスタートの前日に「夜のヒットスタジオ」に出演して『両手いっぱいのメモリー』を歌った。このとき、司会の古舘伊知郎がドラマ『藤子不二雄の夢カメラ』について「(渡辺美奈代は)古い写真館の娘さんの役で色んなカメラと出会っちゃうというストーリーなんです」と説明した。そう説明したあと、渡辺美奈代に向かって「あと、胃カメラとかそういうのには出会いませんでしたか」とお寒いことを尋ねていたのが実に印象深い(笑)
 こうして写真を眺めると、藤子グッズというより渡辺美奈代グッズの様相を帯びて感じられるが、おニャン子クラブのメンバーのなかで渡辺美奈代は好きなほうだったので、彼女の写ったグッズを集めるのに抵抗はない。でも、これらはあくまでも藤子グッズとして集めたものである。
 渡辺美奈代さんは、愛知県西春日井郡西春町(現・北名古屋市)のご出身で、以前の職場の同僚に幼少のころ渡辺美奈代さんと同じクラスだったという人がいたのを思い出す。



 ちなみに、ドラマ『藤子不二雄の夢カメラ』は3作ともビデオソフト化されている。
 ビデオ化にさいして、小泉・中山・荻野目主演のものが『夢カメラ』、南野・富田・三田主演のものが『夢カメラ2』、渡辺主演のものが『夢カメラ3』とタイトルが若干修正された。『夢カメラ3』に関しては、全5話のうち、第4話「恐怖カメラ」が未収録となっている。
 また、「月曜ドラマランド」の枠では、『藤子不二雄の夢カメラ』のほかに以下のような藤子・F作品がドラマ化された。

文化の日特別企画『藤子不二雄赤毛のアン子』(1986年11月3日放送/主演・荻野目洋子)


子供の日特別企画『藤子不二雄のバケルくん』(1987年5月4日放送/主演・畠田理恵