「赤塚不二夫のまんがNo.1シングルズ」が届く


 予約していたCD「赤塚不二夫のまんがNo.1シングルズ」が届いた。9月21日の記事でも書いたように、このCDは、1972年から73年にかけて刊行された赤塚不二夫責任編集の雑誌「まんがNo.1」の付録ソノシート全6枚全6曲を復刻したものだ。収録曲は以下のとおり。

① 少年A(=三上寛)/おまわりさん!! (画:佐伯俊男
佐藤允彦トリオ/Discover War〜自衛隊賛歌 (画:中山千夏
③ カミソリQ子/スケバンロック (ナレーション:小野ヤスシ
山下洋輔トリオ/ペニスゴリラ、アフリカに現る(画:杉浦茂)
井上陽水/桜三月散歩道(画:羽良多平吉
三上寛/ホイ!(画:長谷邦夫)

 私の最大の目当ては、井上陽水さんが歌う『桜三月散歩道』の“まんがNo.1版”であった。『桜三月散歩道』という曲自体は、陽水さんのアルバム「氷の世界」に収録されているのだが、これは、元の“まんがNo.1版”の歌詞(長谷邦夫作詞)に陽水さんが手を加えたもので、“まんがNo.1版”と“アルバム版“”とはバージョン違いの関係になっているのだ。
 また、『桜三月散歩道』には朗読パートがあるのだが、このパートを“まんがNo.1版”ではレコーディング・エンジニアの大野進さんが、“アルバム版”では陽水さん自身が担当している。
 私は、まんがNo.1版『桜三月散歩道』を今回のCDで初めて聴いた。



 このCDには「ベスト・オブ・まんがNo.1」という冊子もついている。B5判、およそ250ページもある冊子で、CDのオマケというより、CDと冊子が同等に主役の商品といえそうだ。
「ベスト・オブ・まんがNo.1」は、雑誌「まんがNo.1」の原本6冊から、主要な記事やマンガをセレクトして収録したものだ。表紙をめくるといきなり赤塚不二夫先生のカラーヌードグラビアが目に飛び込んでくるので面食らう。(そもそも表紙からして赤塚先生のヌードだが・笑)
 藤子不二雄A先生が「まんがNo.1」に描いたマンガも収録されるとの事前情報があって、どの作品が選ばれるかと思っていたが、これについては、1973年3月号で発表された『大悪漢』のみが収録された。『ブリット』『俺たちに明日はない』などのギャング映画を軽いタッチでパロディ化したナンセンスギャグマンガだ。A先生が大好きな映画をネタに、肩の力を抜いて楽に描いた作品、といった趣きである。
 ちなみに、藤子A先生が「まんがNo.1」で発表した作品は以下のとおりだ。

大殺陣』(1972年12月号)
『再び大殺陣』(1973年新年号)
『大決闘』(1973年2月号)
『大悪漢』(1973年3月号)
『大怪物』(1973年4月号)

大殺陣』『再び大殺陣』は、『血槍富士』『座頭市物語』などの時代劇を、『大決闘』は、『シェーン』『真昼の決闘』などの西部劇、『大怪物』は、『キングコング』『フランケンシュタインの花嫁』などの怪物映画を、それぞれパロディの題材として扱っている。



「ベスト・オブ・まんがNo.1」を読んでいると、「まんがNo.1」という雑誌の猥雑な熱気や悪乗り感覚、パロディ精神が凝縮して伝わってくるようだ。「まんが劇画家 100人メッタ斬り」という特集記事があって、当時の漫画家を「バカさ」「風刺性」「エッチ度」「残酷度」「知識度」「土着性」「収入」「将来性」という8項目で5段階評価している。「100人メッタ斬り」というタイトルのとおり、全体的に厳しい採点となっていて、手塚治虫先生ですら8項目の平均点が3にも満たない。そして、「日本版ディズニーをめざすのも、大変なことですよネー」と揶揄っぽいコメントが加えられている。藤子不二雄先生の平均点だって3をわずかに超える程度で、「オーソドックスだがイイ感じファンはいるぞ徹底してやれ」と評されている。藤子先生への評価はまだましなほうで全体的に辛い点がつけられているなか、8項目とも5点、すなわちオール5を獲得しているのが赤塚不二夫先生だ。さすがは赤塚不二夫責任編集の雑誌だけのことはある(笑)



ディスクユニオンのみのスペシャル特典」があると告知されていたが、その正体は特製バスタオルだった。