ウイルス予防用ドラえもんマスク

 昨年末からノロウイルスが大流行している。これに感染して大変な目にあっている方もあろうかと思う。また、これからの時季はインフルエンザウイルスも流行しがちで、私も年によってはこのウイルスに感染して流行性感冒を患うことになる。現在これらの感染症にかかっている方はご自愛いただきたいし、かかっていない自分も気をつけたいと思う。気をつけるといっても、手洗いとうがいをする程度だが…



 こうした感染性のウイルスのことを考えていると、ドラえもん好きの私の頭には自然と「流行性ネコシャクシビールス」が浮かんでくる。てんとう虫コミックス第6巻に収録された「流行性ネコシャクシビールス」や、第9巻に収録された「王かんコレクション」に登場するひみつ道具である。
 流行させたい事柄をこのビールスに言い聞かせながら培養して町にばらまくと、ビールスに感染した人々がその流行を追いかけずにはいられなくなる… つまり特定の流行現象をつくるためのビールス、というわけだ。
ドラえもん』に出てくるひみつ道具の名前は、しゃれや語呂合わせなど言葉遊びの宝庫で、「流行性ネコシャクシビールス」もそんな言葉遊びの精神が充分に生きている。“流行性ビールス”というちょっと医学的な用語のあいだに“猫も杓子も”を縮めた“ネコシャク”を挿入することで、語呂的にも意味的にも秀逸な、楽しいネーミングになっている。



「ビールス」とは、今で言う「ウイルス」のことだ。藤子・F・不二雄先生がこの話を描いた頃は、「ウイルス」より「ビールス」のほうが一般的な言い方だったのだろう。「ビールス」ではなく「ウイルス」が定着した経緯は、ウィキペディアでこのように説明されている。

Virus はラテン語で「毒」を意味する語である。古代ギリシアヒポクラテスは病気を引き起こす毒という意味でこの言葉を用いている。ウイルスは日本では最初、日本細菌学会によって「病毒」と呼ばれていた。1953年に日本ウイルス学会が設立され、本来のラテン語発音に近い「ウイルス」という表記が採用された。その後、日本医学会がドイツ語発音に由来する「ビールス」を用いたため混乱があったものの、日本ウイルス学会が1965年に日本新聞協会に働きかけたことによって生物学や医学分野、新聞などで正式に用いる際は、ウイルスと表記するよう定められている。

 そんなわけで、2005年6月に放送されたアニメ『ドラえもん』「王かんコレクション」では、時流に合わせ、「流行性ネコシャクシビールス」を「流行性ネコシャクシウィルス」と改名した。



 ここから再び、現実のウイルスの話になるが、2003年ごろアジアを中心に世界的な規模でSARS(サーズ/重症急性呼吸器症候群)が流行した。多くのSARSウイルス感染者を出した香港では、SARS予防用のマスクが売り出されたという。
 そんなマスクの一つにドラえもんデザインのものがあった。

 これは香港在住の藤子ファン仲間が買ってきてくれたものだが、SARSの流行という深刻な状況と、マスクになったドラえもんのにっこりした顔とが少しばかりミスマッチだ。もっとも、ドラえもんまでが深刻な表情だったら、このマスクをつける気が失せるだろうが…
 ドラえもんのマスクなら、SARSウイルスから我が身を守ってくれるだろうと信頼感を抱けそう!?