オバQバッジラムネと『大人になんかならないよ』

 今回は、味覚糖オバケのQ太郎ラムネの紹介である。

 昭和60年4月からスタートしたテレ朝版『オバケのQ太郎』が放映されていた当時のものである。プラスチック製の容器にラムネ菓子が24粒入っていた。
 容器のフタの部分がオバQをかたどっていて、そのフタを容器から外すとバッジになる仕掛けである。定価は70円だが、値段ラベルを見ると、私は近所のスーパーで65円で買ったようだ。


 ラムネの話から離れるが、テレ朝版『オバケのQ太郎』のオープニング曲『大人になんかならないよ』とエンディング曲『BELIEVE ME』は、作詞・阿木燿子、作曲・宇崎竜童という、藤子アニメの主題歌としては異色の顔ぶれで作られた。

 個人的には、阿木燿子・宇崎竜童コンビの曲といえば、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドが歌った『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』が思い出深い。子どものころ、この曲中のセリフ「あんた、あの娘の何なのさ」が流行っていて、私はその意味合いをよく理解せぬまま、頻繁に口にしていた憶えがあるのだ。あと、山口百恵の各曲も懐かしい。


 そんな阿木・宇崎コンビが作ったオバQの主題歌『大人になんかならないよ』は、曲名のとおり“大人にならない”というメッセージを高らかに宣言している。私はこの曲を聴いたとき、藤子・F先生の問題作『劇画・オバQ』へのカウンター(対抗)ソングみたいだなぁ、と感じたものである。
 F先生は『劇画・オバQ』のなかで、オバQの登場人物たちが大人になった世界を描き、ただ一人いつまでも無邪気でいるQちゃんに対しドライで厳しい現実を突きつけた。『大人になんかならないよ』は、そんな『劇画・オバQ』の世界に対する一種のアンチ・テーゼじゃないか、とすら思えたのだ。
 阿木・宇崎が『劇画・オバQ』を意識してこの曲を作ったかは定かじゃないが、『劇画・オバQ』と『大人になんかならないよ』が、「問題提起」と「そのひとつの返答」といった関係で鮮やかに呼応し合っているように感じられたのは確かである。


 それほどこの曲は「大人になんかならないよ」というメッセージを力強く明朗に謳いあげている。昭和60年当時大人と子どもの中間にある高校生だった私は、この「大人になんかならないよ」というメッセージに強く誘引された。目の前に迫る“大人”という状態を忌避したい気持ちが相当あったのだろうし、外形的には大人になっても少年の魂を保ち続けたい、そしてその魂をよりいっそう涵養していきたいという甘美な欲求も強かったのだろう。



 さて、いよいよ明日から映画ドラえもんのび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』の劇場公開が始まる。さらに明日(3月10日)は、午後7時より映画『のび太の恐竜2006』がテレビ放映される。
 テレビのバラエティ路線や、映画での芸能人多数起用など、好ましくない事態がアニメドラの周辺を取り巻いているが、映画を観るときは余計な雑念を取り払って物語世界に入り込みたいと思う。