映画『のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』鑑賞

11日(日)、映画ドラえもんのび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』を観てきた。東海地方在住の藤子ファン・ドラファンが10人集まった。

 今回は、重大なネタバレのない感想をとりあえず書いておこうと思う。後日、もう少し具体的な感想を書きたい。(重大なネタバレはしてないつもりですが、真っ白な状態で映画を観たい方はお気をつけください。この日記の最後で来年の映画ドラに関する情報も記してあります)



 この映画は、『のび太の魔界大冒険』(以下、「旧魔界」)のリメイクとはいえ、新たなシーン、新たな展開、新たな構成、新たな設定がいろいろとあって、半ば初めて観る映画のように虚心に物語を追うことができた。
「旧魔界」を下敷きにしているので面白くないわけがないとは思っていたのだが、やはりトータルとして面白い娯楽作に仕上がっていた。キャラクターの絵柄やストーリー構成など、作品全体のまとまり方は、昨年の『のび太の恐竜2006』を上回っているな、と思った。
 過去作のリメイクではなく新たな作品ととらえてもよいところだが、「旧魔界」に深い愛着のある身としては、どうしてもオリジナルとの比較で観てしまう。



「旧魔界」で描かれたいくつかの魅力的な場面、たとえば出木杉による科学文明と魔法文明の歴史解説、魔法商品のテレビCM、魔界星に降り立ってから大魔王の城に到達するまでの道程、といった場面を省き、戦闘や爆発や暴風などのスペクタクルシーンや、キャラクターたちのかわいらしくやわらかい表現などに力をかけていた。今風というかハリウッド風というか、今の子ども達を飽きさせないよう、速度感のあるアクション、ダイナミックな見せ場をたたみかけてきた印象である。
(魔法と科学をめぐる歴史の話は、出木杉ではなくドラえもんが担当するが、旧魔界のときほどしっかりした説明ではない。新魔界での出木杉の存在感は限りなく薄らいでいる)


 では、「新魔界」が「旧魔界」にあった魅力的な要素を省くことで大味な作品になる一方であったかというと、そういうわけでもなく、「旧魔界」で不自然だったり詰めの甘かったりした部分に手をほどこして説得力や構成力を高めている。石像をめぐる謎やドラミちゃんが後半登場するに到る伏線の張り方は緻密だったし、美夜子・メジューサといったキャラクターたちが抱える背景の掘り下げによって人間ドラマとしての厚みも増した。
 月にこだわりを置いたところも本作の魅力となっている。



 危惧していた美夜子役の声だが、これはやっぱりプロの声優さんにやってほしかった。無難といえば無難な演技なのだが、美夜子さんを演じるのに無難ではダメなのである。観客の耳に生き生きと届く発声ができ、感情の細かいひだ、陰影、抑揚、艶っぽさを巧みに表現できる実力者がやるべきだった。
 満月牧師の河本さんやメジューサの久本さんも、場面によっては本人の顔が浮んできてしまって、ちょっと違和感…

 
 そのほかの感想をざっと箇条書きに。

 
のび太をかくまった美夜子さんがおとりとなって洞窟から飛び出すシーンが省かれなくてよかった。美夜子さんとのび太のやりとりで、うるっと来そうになった。

・背景美術の精緻さ・美しさ・スケール感・想像力に見惚れた。

・美夜子さんやしずかちゃんといった女の子キャラがとてもかわいらしく描かれていた。特に、ネコ姿の美夜子さんなんて、ファンシーなぬいぐるみみたい。

・ほうきやじゅうたんで空を飛ぶ場面では特有の臨場感や疾走感、浮遊感を味わえた。風を切る爽快な感覚、空飛ぶほうきやじゅうたんを操るキャラたちの身のこなしにリアリティを感じた。

・藤子ファンがニヤリとする小ネタが仕込んであるのは、昨年の『のび太の恐竜2006』に続いて楽しかった。



 上映時間112分と、映画ドラ史上最長の作品となったので、テレビ放映時の編集が今から心配w
 来年の映画は、過去の大長編ドラえもんのリメイクではなく、渡辺歩監督によるオリジナル作品になるようで、今から心配かつ楽しみ。F先生が描いた何らかのお話をベースにはするみたいだが…(情報ソース:「映画ドラえ本『のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』公式ガイドブック」楠場宏三総監督インタビューより)