氷見旅行記その3(光禅寺)

 藤子A先生の生家である光禅寺へ足を運んだ。
 以前来たときはなかった、光禅寺を案内する標識が潮風通りに設置されていた。


 光禅寺は、650年以上の歴史を有した曹洞宗のお寺だ。藤子A先生のお父様がこのお寺の第49代住職だったのだが、先生が小学5年生のときお父様がお亡くなりになり、次の住職が外から来ることになったため、藤子A先生の家族は親類を頼って高岡市へ引っ越すことになった。
 その引っ越した先の高岡で、藤子A先生は藤子F先生と運命的な出会いを果たすことになるのである。


 光禅寺の敷地内に入った私は、ぶらぶらと散策しながら建物を眺めていた。すると、お寺の方(女性の方)が声をかけてくださって、建物のなかに上がらせてもらえることに。今まで2〜3度上がらせてもらったことがあるのだが、1人で見学するのは初めて。ちょっと緊張しつつ玄関から中に入ると、すぐに大広間が広がって、喪黒福造の達磨像が描かれた衝立が視界に飛び込んできた。この衝立は、光禅寺開山650年を記念して藤子A先生が執筆した入魂の力作。喪黒達磨の裏面には、藤子A先生の筆による21体の野仏が描かれている。

 大広間のテーブルの上には、シンちゃんをおぶったハットリくんの人形が置いてあった。これは、翌日に除幕式が行なわれるポストの上のオブジェの原型だそうだ。
 オバQとP子の描かれた直筆色紙(藤子不二雄時代のもの)も飾ってあった。


 大広間から廊下へ移動すると、写楽風藤子Aキャラのイラストが何枚も壁に展示されている。それを鑑賞しながら廊下を奥へ進むと、やや小さめの部屋に通された。大広間や廊下には以前も入ったことがあるが、この部屋まで来たのは初めてだ。
 この部屋には、昭和29年藤子先生がトキワ荘14号室に入居するとき、前の入居者だった手塚治虫先生が藤子先生のために置いていってくれた机が保管されているのだ。2004年に開催された「まんが道 藤子不二雄A展」でこの机が展示されているのを見たのだが、今回は、そのときよりずっと間近で見ることができて大感激。机の質感や匂いや傷みまでじっくりと味わうことができた。
 この机で若かりし頃の手塚先生や藤子先生が熱を込めてマンガを執筆されていたと思うと、心が震え胸がジーンとしてくる。現在は等身大の藤子A人形がこの机に向かっている。

 寺の廊下に園山俊二先生の描かれた「ギャートルズ」のイラストも飾ってあって、私は「これは園山先生がこのお寺に寄贈してくださったものですか?」と質問。お寺の方は「園山先生が安孫子先生とこのお寺に遊びにこられたとき、その場で落書き気分で描いていってくださったものなんですよ。せっかくなので、こうして飾らせていただいているんです」と答えてくださった。


 光禅寺を見学中、私を案内をしてくださった女性の娘さんと思われる女の子(小学生くらい)も一緒に付き添ってくれた。私が「藤子A先生は時々このお寺に遊びにこられると思うけど、先生はやさしいかい?」と尋ねると、女の子は「うん、やさしい」と答えてくれた。たったそれだけのやりとりだったが、なんだか心があたたまった。


 光禅寺を出ると夕刻が近づいていて、ホテルを予約してある高岡まで氷見線で戻った。チェックインするまでまだ少し時間があったので、高岡駅前にある高岡中央図書館へ行って、『ドラえもん』の初出誌コピーを何話か読んだ。この図書館では、藤子F先生が描いた『ドラえもん』全話(1344編)のコピー製本が置かれていて、館内のみで自由に閲覧できる。
 そうしてホテルにチェックイン。翌日のイベントをワクワクしながら待つばかりとなったのだった。ホテルの部屋で飲んだカルピスサワーがうまかった。



●藤子情報
サークルKサンクスで10月16日から11月19日まで「ドラえもんフェア」開催中。対象商品のレシートや点数シールを集めると、ドラえもん絵皿などの賞品がもらえる。
 http://www.circleksunkus.jp/special/doraemon_0710/index.html


・25日(木)頃から「熱血!!コロコロ伝説」Vol.4発売中。藤子マンガは『ドラえもん』『バケルくん(別コロ版)』『宙ポコ』が各1話ずつ掲載。『ドラえもん』の「しあわせ保険機」は単行本未収録作品。