『T・Pぼん』【スペシャル版】第3巻

T・Pぼん』【スペシャル版】第3巻(潮出版社/2008年11月5日第1刷発行)が発売になりました。この巻に『T・Pぼん』の単行本未収録作品が3話初収録され、それが当単行本の目玉になっています。


 おさらいとして確認しておきますが、『T・Pぼん』全話のうち、これまで単行本未収録だったのは以下の5話でした。

「古代の大病院」(初出:「コミックトム」1985年4月号)
「神の怒り」(1986年3月号)
「ローマの軍道」(1986年4月号)
「王妃ネフェルティティ」(1986年6月号)
「ひすい珠の謎」(1986年7月号)

 このうち、今回単行本に収録されたのは、「古代の大病院」「神の怒り」「ローマの軍道」の3話です。残念ながら、「王妃ネフェルティティ」と「ひすい珠の謎」は、依然として未収録のまま残されることになりました。



 第3巻が発売されて、藤子ファン的に大きなニュースが飛び込んできました。おおはたさんが、ご自身のブログ「はなバルーンblog」で、今回初収録されたうちの一作「ローマの軍道」が加筆版である、と報告されたのです。
「ローマの軍道」は、「コミックトム」1986年4月号で発表された段階では全30ページの作品でした。それが今回の『T・Pぼん』【スペシャル版】第3巻では34ページに増えているのです。つまり藤子F先生は、本作を雑誌で発表してから、単行本収録に向けて加筆作業を行なっていたということになるのです。以前より藤子ファンの間で、『T・Pぼん』の単行本未収録作品がずっと単行本化されないのは原稿加筆修正作業が途中のままでF先生が他界されてしまったからだ、という不確定情報が流通していました。今回の【スペシャル版】第3巻の刊行によって、少なくとも、単行本未収録5話のうち、「ローマの軍道」に関しては加筆作業が実際に行なわれていて、公に発表できる程度に作業が仕上がっていた、ということが判明しました。そして、「古代の大病院」「神の怒り」については、初出の原稿に手が加えられていなかった、ということもわかりました。さらに、未収録のまま残された「王妃ネフェルティティ」と「ひすい珠の謎」に関しては、「加筆作業が中途のままでF先生が他界されてしまったため、単行本に収録することが困難なのではないか」という説が信憑性を帯びてきました。
 私としては、おおはたさんもおっしゃっているように、「雑誌から復刻する」という方法で残りの2話も収録し、完全版単行本として出版してほしかったところですが…
 ともあれ、これまで未収録だったうちの3話が陽の目を見たのは、たいへんめでたいことだと思います。

★「はなバルーンblog」:「T・Pぼん」SP版第3巻「ローマの軍道」は加筆版!
 http://blog.goo.ne.jp/hballoon/e/d8351ee799f0fb30f407be979d7abd80



 私も「ローマの軍道」加筆箇所をこの目で鑑賞したくて、早く単行本を入手したかったのですが、近隣の書店を数店めぐっても見つからず、結局ネットで注文したため、手元に届くのが発売日から数日たったあとになってしまいました。
 先述のとおり、「ローマの軍道」は、初出時には全30ページの話でした。それが今回の単行本では34ページになっていて、藤子F先生が生前に描き足された計4ページ分が、今になってようやく初公開されたことになります。「ローマの軍道」を雑誌ですでに読んでいた人も、この4ページ分の加筆箇所だけは見たことがなかったのですから、ある意味、F先生の新作に触れるような感慨をおぼえられた部分もあるでしょう。「ローマの軍道」を読んでいくなかで加筆箇所が現れるのは、トビラから数えて21ページ目からです。単行本のページ数でいうと、365ページからになります。もともと全30ページだった作品の21ページ目から加筆箇所が現れるということは、後半パートが描き足されているということです。主に、ローマ軍の兵士の描写が増えています。雑誌発表時、後半がやや説明的になってしまった面もあるので、F先生はそれを気にかけて、ドラマ性や人間味を少しでも加味したいと考えたのではないでしょうか。


 
 第3巻の「巻末特別企画」は、もうちょっと何とかならなかったものか、と思います。
「『T・Pぼん』を語る」で脳科学者・川島隆太氏が登場しているのですが、中身を読むと『T・Pぼん』について語っているとはとても思えません。そして「プレミアム企画」… こんな大仰な題をつけながら、1巻と2巻に掲載された「年表」と「タイムトラベルの軌跡」を単に再録しているだけなのです… 「プレミアム企画」は、わざわざ設けるまでもない内容で、まるまる無駄といってもいいでしょう。