藤子・F・不二雄大全集の続報!

 今週から、藤子・F・不二雄大全集のチラシが書店で貼られたり配布されたりしています。そのチラシを見ると、新たな情報がいろいろと判明して、この全集の本気度がますます実感されてきます。『オバケのQ太郎』や『ジャングル黒べえ』を復活させるだけがこの全集のすごさではありません。


 まず、この文面が嬉しいです。胸が熱くなります。
「全作品網羅を目指す初の全集。藤子・F・不二雄が生涯描いたまんがの総ページ数は約46000ページ、約3500話。(中略)この全集では、その作品をひとつひとつ丁寧に、整理し、構成し、新たな巻立てで皆様に複数年にわたってお届けする予定です。」
 こうして藤子F作品の総ページ数が公に記されたのは初めてじゃないですかね。



ドラえもん』は、全1300話余りのうちおよそ100話が単行本初収録となります。『ドラえもん』の既存の単行本……てんとう虫コミックス全45巻、てんとう虫コミックスプラス全5巻、てんとう虫コミックススペシャルカラー作品集全6巻、カラーコミックス全6巻、コロコロ文庫18巻、ぴっかぴかコミックス18巻、藤子不二雄ランド全45巻などを全部集めても読めなかった話がようやくすべて読めるようになるのです。
 収録方法がこだわりにこだわっています。『ドラえもん』は主に小学館の「学年別学習誌」に連載されていました。たとえば1968年生まれの私がリアルタイムで学年別学習誌を読んでいたとすれば、「小学一年生」1975年4月号から「小学六年生」1981年3月号までのおつきあいだったことになります。今回の全集は、そういう世代別の学年繰り上げ方式で『ドラえもん』各話を収録します。つまり、1学年12話×6学年=72話ずつが世代ごとに分類されて各巻に収録されるわけです。(年代によっては、連載期間が足りなかったりして変則的になる場合もあり)これは、大変マニアックなこだわりであるとともに、極めて妥当で賢明な収録方法であると思います。こういうかたちで読めるのが、ファンの夢でもありました。まさかその夢が、こんなに早く実現するとは。すごい、としか言いようがありません。
 第1回配本の『ドラえもん』第1巻は、「小学四年生」「小学三年生」「小学二年生」の各1970年1月号でそれぞれ発表された連載第1話から『ドラえもん』に出会った3世代分が同時に収録されて、なんと2種類の最終回が2つとも読めるようになります。『ドラえもん』には、ドラえもんが未来へ帰ってしまう最終回的なエピソードが、有名な「さようなら、ドラえもん」を含めて3話存在するのですが、「さようなら、ドラえもん」以外の2話は一度も単行本に収録されていないのです。「さようなら、ドラえもん」は翌月にドラえもんのび太のもとへ帰ってくる前提の作品でして、厳密には最終回エピソードとは言いがたいのですが、今回第1巻に収録される2種の最終回は、ドラえもんが完全にのび太とお別れして未来へ帰ってしまうお話です。これが普通に読めるようになるだけでもすごい。



オバケのQ太郎』『パーマン』は、「週刊少年サンデー」や「学年別学習誌」など複数の雑誌に連載されていました。従来の単行本は、それらをごちゃまぜにして収録していたのですが、この全集では初出雑誌ごとに分類して収録するようです。
オバケのQ太郎』は、「週刊少年サンデー」に初登場した回から、学年誌に帰ってきた『新オバケのQ太郎』の最終回まで、すべてを収録予定。第一期では「週刊少年サンデー」掲載分をすべて刊行。『オバケのQ太郎』はただ復活するだけでなく、すべての話がここで陽の目を見ることになります。すごいです。



 もうここまでの情報を知っただけで、感嘆のあまり「すごい」を連発するばかりで語彙不足に陥ってしまっていますが、「すごい」はまだ続きます。
エスパー魔美』は、雑誌初出時に4色カラー・2色カラーだったページをそのままカラーで再現。従来の単行本で完全に全話読めてしまう『エスパー魔美』は、大全集を買う旨みが少ないと思われていたのですが、カラーページがカラーで再現されるとあれば、新たに全集で揃える価値がぐんと上がります。


 チラシの縁にほどこされたデザインを見ると、これまたすごい!
『仙べえ』『チンタラ神ちゃん』といったA先生との合作や、『天使の玉ちゃん』『UTOPIA最後の世界大戦』『バラとゆびわ』『おやゆびひめ』『ユリシーズ』『海の快剣士』『電光豆剣士』『竹光一刀流』『宇宙冒険児』『タップタップのぼうけん』『ロケット五郎』『しゃっくり丸』『やじさんきたさん』『星の子ガン』『ろけっとけんちゃん』『とびだせミクロ』『すすめロボケット』『ろぼっとろぼちゃん』『ロケットGメン』『手ぶくろてっちゃん』『かけろセントール』といった初期作品、『モッコロくん』『パジャママン』『4じげんぼうPポコ』『Uボー』『ベラボー』『パパは天さい!』『ミラ・クル・1』『バウバウ大臣』『宙ポコ』『宙犬トッピ』といったマイナー作品などのトビラ絵が所狭しと並んでいるのです。
 こんなところに載せちゃってるってことは、この全集が途中で頓挫しない限り、これらの作品もいずれ刊行するつもりでいるってことですよね。「全作品網羅を目指す初の全集」との文言もありますし、そう解釈するのが自然ですよね。
 これはやる気ですよ。やっちゃってくれますよ。本当に本気で全作品網羅を目指してくれそうです。


「この全集が刊行されたあとにはペンペン草も生えない状態にしてほしい」なんて願望を以前の日記で書きましたが、まさにその願望が実現しそうな雰囲気です。だからこそ、刊行が途中で止まったりせず、最後まで完結してくれることを祈るばかりです。(過去に予定通り完結しなかった全集の事例が複数あるので心配です。「藤子不二雄ランド」(中央公論社)は第2期の構想がありながら第1期301巻で完結しましたし、石ノ森章太郎先生の「Shotaro World」(メディアファクトリー)は、収録内容や資料にこだわった質の高い全集になるはずでしたが、あまり売れず中途半端なところで刊行が止まってしまいました。) 
 藤子・F・不二雄大全集には、とにかく最後の最後まで走り続けてもらいたいです。


※チラシの内容は、藤子不二雄ファンサークル「ネオ・ユートピア」公式ホームページの掲示板で読めます。
 http://6513.teacup.com/ruruyan/bbs


 第1期全33巻の合計金額は50610円(税込)。支払い方法は書店に相談ということで、書店によって分割も一括もありということでしょうかね。