藤子Fマンガにおける宝探し

 
 先月刊行された「藤子・F・不二雄大全集」第3回配本は、『オバケのQ太郎』第2巻と『パーマン』第2巻でした。
 この2冊には、どちらにも“宝探し”のエピソードが収録されています。『オバケのQ太郎』「為左衛門の秘宝」と『パーマン』「ここほれワンワン」がそれです。サブタイトルからして、宝探しっぽいですね。
「為左衛門の秘宝」は「150年前に埋められた小判」を、「ここほれワンワン」は「金鉱」を探そうとする話なんですが、藤子Fマンガで宝探しネタというと、私は以下のF先生の発言を思い起こすのです。

誰にでも好みの題材、好みの世界って物はありますがね。例えば僕の場合、何かと言えば恐竜を登場させるなんてのもそれですね。アイディアに困ると宝探しを始めたりね。「オバQ」「パーマン」「ウメ星デンカ」皆やりましたね。「ドラえもん」に至っては、もう十回ぐらい宝を探してるんじゃないかな。
藤子不二雄ファンクラブ会誌「月刊UTOPIA」第7号、1983年)

 F先生は、アイデアに困ったとき作中人物に宝探しをさせることがよくあったようです^^ 
 この発言のなかで、宝探しネタを使った作品の例として『オバケのQ太郎』『パーマン』『ウメ星デンカ』『ドラえもん』が挙げられていますが、そのうちの2作品における宝探しネタを大全集第3回配本分で読めるわけです。
 今後、F作品で宝探しネタを見つけたら、「この話を描いたときF先生はアイデアに困っておいでだったのかなあ」などと思いながら読んでみるのも一興かもしれません^^


 そういえば、中学時代の藤子先生にめくるめく衝撃を与え二人の運命を方向づけたマンガ、手塚治虫先生の『新宝島』(原作・構成/酒井七馬、1947年)も宝探しの話でした。



パーマン』の「ここほれワンワン」には、最新型の探鉱機「ここほれワンワン号」という犬型の機械が登場します。実はこの機械は詐欺師が作ったインチキ品なんですが、その詐欺師が「ここほれワンワン号」ついて語ったインチキの商品説明が、けっこう私の琴線に触れました。
 詐欺師いわく「この探鉱機は花咲かじいさんの伝説をもとに、わが社の技術陣が作り上げた最優秀機ですぞ」……
 このセリフのなかの「花咲かじいさんの伝説をもとに」という部分が妙に面白いのです。いかにもインチキくさい説明なのですが、「花咲かじいさん」を持ちだしてくるところが魅力的な根拠づけだなと感じますし、「花咲かじいさんの伝説」という言い方に対し、各地に伝わる「浦島伝説」や「桃太郎伝説」に触れたときと同じように想像力を刺激されるのです^^


 ちなみに、私の住む市の隣の犬山市には「桃太郎伝説」が残っていて、桃太郎をまつった「桃太郎神社」があります。桃太郎の生誕地をめぐっては岡山と高松が「わが地こそが桃太郎が生まれた土地である」と熱い火花を散らしているようですが、愛知県の犬山市も「桃太郎が生まれ育ったのはわが地である」と宣言しているのです^^


 そして、藤子F流に「桃太郎伝説」の謎解きを試みたのが、てんとう虫コミックスドラえもん』第9巻に収録された「ぼく、桃太郎のなんなのさ」なのであります。
「浦島伝説」を謎解きした作品になると、もっとあって、たとえば『ドラえもん』の「竜宮城の八日間」や、『T・Pぼん』の「浦島太郎即日帰郷」は、F先生による「浦島伝説」新解釈の代表どころです。
 F先生は、昔話や伝説などにFマンガのキャラクターをからめて、「この話は実はこういう舞台裏があったんだよ」「この話はこういうふうにして成立したんだよ」とF流の解釈で謎解きをするのがお得意です。
 F先生による昔話の新解釈は、当然ながらF先生が創作したフィクションなのですが、おなじみの昔話の内容と結果的につじつまが合っていく展開は、パズルのピースが埋まっていくような面白みがありますし、「なるほどなあ」と納得させられてしまう不思議な説得力があります。