『このマンガがすごい! 2010』より藤子ネタを

このマンガがすごい! 2010』(宝島社)が、10日頃に発売されました。
 
 オトコ編ランキングで1位に選出された『バクマン。』の作者2人(原作:大場つぐみ、作画:小畑健)が、インタビューの中で藤子A先生の『まんが道』に深いリスペクトを捧げていて、藤子ファンとして素直に嬉しかったです。小畑氏は『まんが道』について「もはや意識するとか、しないとかを超越したバイブル的なもの」と語っています。



まんが道』は、戦後マンガの揺籃期を描いたマンガ家マンガ、『バクマン。』は現在を描いたマンガ家マンガ、というふうに対置させられると思いますが、『まんが道』は“マンガ家マンガ”というジャンルの老舗というか古典というか、このジャンルにとって別格的な作品なので、その後に登場したマンガ家マンガとはおいれそと比べられないかもしれません。むろん『まんが道』以前にもマンガ家マンガはあったので『まんが道』がこのジャンルのルーツというわけではないのですが、マンガ家マンガをメジャーシーンに押し上げ、作品自体がずっと読み続けられているという意味で、「マンガ家マンガを確立した老舗的な作品」といえるんじゃないでしょうか。さらにすごいのは、『まんが道』の続編的な作品『愛…しりそめし頃に…』が現在もまだ連載中だということです。
 その『愛…しりそめし頃に…』の最新話を掲載した「ビッグコミックオリジナル増刊」1月12日号が12日(土)に発売になりました。今回は久々に女性との交際エピソードです。



このマンガがすごい!2010』のオトコ編ランキング3位に入った『青春少年マガジン1978〜1983』は、小林まこと版『まんが道』といえる作品で、小林まこと氏がマンガ家デビューし「週刊少年マガジン」から有望な新人が次々と輩出されていった時代を描いた秀作です。マンガ家という職業の華やかさと過酷さが1冊のなかに濃密に詰まっています。
青春少年マガジン1978〜1983』には1コマのみ「藤子不二雄」の名が出てきます。小林氏がデビューした当時の「週刊少年マガジン」では藤子A先生(当時は藤子不二雄名義)が『少年時代』を連載していて、その当時の「週刊少年マガジン」のある号の目次が描写されているのです。


「あの人気漫画家に聞く!」というコーナーの「初めて自分のおこづかいで買ったマンガ」というアンケートでは、『俺はまだ本気出してないだけ』の青野春秋氏が『ドラえもん』、『友達100人できるかな』のとよ田みのる氏が『オバケのQ太郎』と答えています。藤子マンガがマンガ読み・マンガ描きの入口になっていることはよく指摘されますが、まさにそういうことなんですよね。
 このアンケートに参加している福満しげゆき氏の最新コミックス『僕の小規模な生活』第3巻(講談社)を読んだのですが、この巻には福満氏が「週刊少年マガジン」に描いた『東村山あたりの夕日』という作品も同時収録されています。『東村山あたりの夕日』には空き地で少年がいじめられている場面があって、その場面に遭遇した主人公の超能力少女が「F作品によく出てくるような空き地でイジメられてるのは……」という台詞を発します。やはり空き地といえば「藤子Fマンガのなかにあるもの」というイメージが強いですよね。


 以前、私は福満しげゆき氏とネット上で少しだけやりとりしたことがあるのですが、そのとき福満氏は『まんが道』が好きだとおっしゃっていました。『僕の小規模な生活』の前身的な作品『僕の小規模な失敗』(青林工藝舎)の単行本のオビには「アックス版まんが道」と記されています。(「アックス」は、『僕の小規模な失敗』を連載していた雑誌です)
僕の小規模な失敗』のなかに、講談社の建物を見た主人公が「あー…この建物はまさに「まんが道」に出てきたアレじゃないか…」とつぶやく場面があります。
 いうなれば、『僕の小規模な失敗』と『僕の小規模な生活』は、福満しげゆき版『まんが道』ということになりましょう。



 11日に発売された拙著『藤子不二雄Aファンはここにいる Book2 Aマンガ論序説編』では『まんが道』についても論じていますので、ぜひご覧になってみてください。
 名古屋の大型書店をめぐって拙著が並んでいる光景を眺めてきたのですが、星野書店近鉄名古屋店が最もたくさん入荷してくれていました。藤子・F・不二雄大全集『バケルくん』が積んである隣に10冊平積みになっていたのです。
 ナディアパークの地下にあるジュンク堂書店ロフト名古屋店では「Book1」と「Book2」が隣り合って並んでいて、こういう光景は第2巻が出たからこそ見られるものだよなあ、と感慨深かったです。
 書店内で写真を撮影しなかったので、「Book1」と「Book2」を並べた写真を自宅で撮ってみました^^
 
 1巻が赤系、2巻が緑系というカバーデザインから、てんとう虫コミックス『バケルくん』や村上春樹の『ノルウェイの森』を思い出してくださった方がいます。あと、マルちゃん赤いきつね緑のたぬきという声もありました(笑)



■『藤子不二雄Aファンはここにいる Book2 Aマンガ論序説編』を確実に入荷した書店リスト 
 http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20091210