コメント欄でボタンポンさんから情報をいただいたのですが、長らく絶版状態だった藤子先生の自叙伝『二人で少年漫画ばかり描いてきた』が、来年1月に日本図書センターから復刊されます。著名人の自叙伝を取り扱ったシリーズ「人間の記録」の第171巻として刊行されるもので、価格は1800円+税です。
http://www.nihontosho.co.jp/newly_list.html
『二人で少年漫画ばかり描いてきた』は、二人の藤子先生が活字によって記述した自叙伝であり、“戦後児童漫画私史”という副題のとおり、自叙伝であると同時に戦後少年漫画の記録でもあります。この作品はもともと、1975年から76年にかけて『ぼくはこの歳になって、まだ少年漫画を描いている』なるタイトルで「TBS調査情報」という月刊誌に連載されたものです。1977年に毎日新聞社からハードカバーの単行本が刊行され、そのさい『二人で少年漫画ばかり描いてきた』に改題されました。1980年には文藝春秋社から文庫化されています。
文章の大部分はA先生が執筆し、F先生は各章の中書きを担当しています。F先生いわく「藤子不二雄を、二人の人間の組みあわせから成り立つ有機体と考えれば、安孫子素雄は、藤子の目であり、耳であり、特に口なのです。(中略) 中書きと本文の字数の比は、普段の口数の比に等しいとお考え下さい」とのこと^^
藤子研究のみならずマンガ研究のために必携といえるこの名著がついに復刊されるのですから、これは大きなニュースといえましょう。藤子先生のコンビ解消以降“二人で一人の藤子不二雄”という括りが公式の場においてはある種のタブーのようになっていましたが、今年になって藤子・F・不二雄全集の刊行が始まり『オバケのQ太郎』や『海の王子』といった合作マンガの封印が解かれることとなり、“二人で一人の藤子不二雄”という括りがやや復権の兆しを見せつつあるような印象です。
今月11日に発売された拙著『藤子不二雄Aファンはここにいる Book2 Aマンガ論序説編』の第一章に収録した文章「藤子不二雄Aギャグマンガ概論 一九六四年からのギャグマンガ道」の前半部分は、『二人で少年漫画ばかり描いてきた』を主要な論拠として論を展開しています。その拙著が発売されてすぐのタイミングで『二人で少年漫画ばかり描いてきた』が復刊されるということに、私は勝手に運命的なものを感じて興奮しております^^
藤子先生関連の活字本がこうして立て続けに発売になるのは稀有なことです。この機会に『二人で少年漫画ばかり描いてきた』と『藤子不二雄Aファンはここにいる Book2 Aマンガ論序説編』を合わせて読んでいただけると幸いです。活字による藤子ワールドをたっぷり・どっぷりと体験なさってください。
・ハードカバー版『二人で少年漫画ばかり描いてきた』(毎日新聞社、1977年)
・文庫版『二人で少年漫画ばかり描いてきた』(文春文庫、1980年)