「クイック・ジャパン」vol.88で映画ドラえもん特集

 以前のエントリで情報を掲示したとおり、今月12日ごろ発売された雑誌「QuickJapan(クイック・ジャパン)」vol.88(太田出版)で「新シリーズ5周年!! 映画『ドラえもん』2006→2010 大いなる物語の継承」という特集が組まれています。声優やスタッフが交替したリニューアル後の映画『ドラえもん』が5周年を迎えることを受けての特集です。

 この特集を目当てに「QuickJapan」を買ってきたら…


 巻末の「寄稿者紹介」のページでライターの広瀬小太郎さんが拙著『藤子不二雄Aファンはここにいる Book2 Aマンガ論序説編』(社会評論社)に言及してくださっているのを発見しました。広瀬さんは今号で総力特集「いま、テレビは。」の構成などを担当されている方。拙著に対し、次のような言葉を捧げてくださっています。

在野のファンだからこその愛情あふれる視点と、地に足の着いた骨太の論評、揺るぎない真摯な姿勢に、「Cool Japan」や「Oriental」ではない日本文化の凄さを見た思いがしました。

 身に余るほどの最大級の賞賛の言葉をおくっていただき、短いコメントながら深く心が震えました。今後、この言葉に真の意味で応えられるような何事かを成し遂げねば、と前向きなプレッシャーにもなりました。
 このコメントを読んだ方のなかから、『藤子不二雄Aファンはここにいる』の新たな読者が誕生してくれたら素敵だなと思います。



 さて、特集「新シリーズ5周年!! 映画『ドラえもん』2006→2010 大いなる物語の継承」は、レギュラー声優陣5人の座談会、楠葉宏三監督へのインタビュー、武田鉄矢さんのエッセイ、といった関係者の言葉で構成されています。
 武田鉄矢さんはご自分が担当した映画ドラえもんの主題歌・挿入歌について語っています。私はかなり感情移入しながらこの文章を読んで感銘を受けました。旧シリーズの7〜8作目あたりで降板を申し入れたことがあるが引きとめられた、といった話から入って、今回の映画『のび太の人魚大海戦』の挿入歌に込めた思い、過去に歌った『少年期』『世界はグーチョキパー』について、『ドラえもん』という作品について、瞼の裏に残るF先生のお姿について、などの話題が語られていきます。


のび太の人魚大海戦』の挿入歌『遠い海から来たあなた』は、人間の身体の深いところに太古から記憶された「海」とのつながりをテーマにした曲とのこと。ジャン・コクトーの詩の「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ」というフレーズからも世界観を引用しているそうです。この「私の耳は貝の殻」というフレーズは、武田さんが過去の映画ドラえもんで最後に担当した『のび太と銀河超特急』の主題歌『私のなかの銀河』のなかで「私の耳も貝の殻」というかたちで使われています。そのことを思うと、このジャン・コクトーのフレーズが1996年の『銀河超特急』と2010年の『人魚大海戦』との時間の隔たりに橋を架けてくれているような気がしてきます。
武田鉄矢さんはジャン・コクトーのこの詩をさぞかし愛しておられるのでしょう。そして、創作のうえで影響を受けていらっしゃるのでしょう。
 ちなみに、この「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ」は、コクトーの『ポエジー』(1920年)という詩集に収録された『耳』という作品のフレーズです。訳者は、堀口大學
 私はジャン・コクトーの作品というと『恐るべき子供たち』くらいしか読んだことがなかったので、さっそく新潮文庫の『コクトー詩集』を買ってきました(古本屋で)。
 




 ◆情報
 2月27日(土)午後11時から放送の「Sma STATION!!(スマステーション!!)」(テレビ朝日系)は「ドラえもん特集」です。「映画30周年を迎えた『ドラえもん』の秘密を徹底検証。貴重な初回放送や幻となってしまった映像など、普段では見られない映像を公開する」とのこと。