藤子・F・不二雄大全集第1期完結

 25日(金)、藤子・F・不二雄大全集第12回配本の3冊が発売になりました。これで昨年7月から刊行開始した藤子・F・不二雄大全集の第1期全33巻が完結することになりました。それとともに、『パーマン』と『エスパー魔美』が完結巻を迎えました。第1期のなかでは、『ドラえもん』と『オバケのQ太郎』が第2期へ続刊となります。


 昨年3月に藤子・F・不二雄先生の全作品網羅を目指す本格的全集が刊行されるという情報が明らかになって狂喜乱舞し、長らく封印状態にあった『オバケのQ太郎』『ジャングル黒べえ』が第1期から復活するというサプライズがあり、7月から実際に全集の刊行が始まって「ついにスタートしたんだ!」と感激し、毎月の発売日にはワクワクした気持ちで本を手に取り、11月には第1期予約購入者特典の「F NOTE(エフノート)」が届いて大興奮し、今こうして無事第1期の終了を迎えてちょっとだけ感慨をおぼえています。感慨が「ちょっとだけ」なのは、これでF全集の刊行が終わるわけではなく、1ヵ月おいた8月からすぐに第2期が始まるし、全集本体が出ない7月にも別巻の『Fの森の歩き方』が発売されて、F全集の刊行がほぼ途切れなく続くからです。
 今の気分を簡単にいえば、「とりあえず一区切りだなあ」「なるべく早めに第2期の全巻予約をしないと…」といったかんじです(笑)
 とはいえ、この1年間大いに楽しませてくれたF全集第1期の終了にはやはり相応の思いがこもります。第1期に起こったあれこれに思いを馳せながら感謝を捧げたいです。


●『ドラえもん』8巻
 
 1968年度生まれの人が小学生時代にリアルタイムで読んだ全67話を収録しています。1968年度というのは、まさに私が生まれた年度なので、それを思うとこの巻への愛着がぐっと高まります。
 例年、「小学六年生」の3月号、つまり学年誌を卒業する読者が読む号に掲載される『ドラえもん』は、巣立っていく読者へ捧げるF先生の思いのこもった名作である場合が多いのですが、1968年度生まれの人が「小学六年生」3月号で読んだ「のび太王国誕生」は、ずっと単行本未収録の状態でした(2007年に発売された「熱血!!コロコロ伝説」Vol.6に再録されたので読んだ人は少なくないと思いますが)。それがついにこの巻で単行本に収録されました。F全集の全話収録の方針の素晴らしさを改めてかみしめる次第です。
のび太王国誕生」はのび太が王様ごっこをする話ですが、領民から税を取り立てたり、暴君の圧政から不満が募って革命が起こったりといった、現実の王制に対する鋭い風刺が感じられる内容になっています(F先生は風刺を目的にマンガを描いていないとおっしゃっていましたが、マンガがもともと持つ機能のため、出来上がった自作が風刺性を帯びる場合もあることを認めておいででした)。私は、この話のなかで、食べかけのスイカを税として取り立てた王様のび太が女王のしずちゃんに「半分こしようね」と持ちかけたにもかかわらず、しずちゃんが「いりません」ときっぱりつれなく断るコマが好きです(笑)


●『パーマン』8巻(最終巻)
 
 1980年代に復活した新版『パーマン』のうち「小学三年生」「小学四年生」で連載された話と、新版のために旧版最終話「スーパー星への道」を加筆修正して改題した「バード星の道」(初出はてんとう虫コミックス)を収録しています。F全集では、「スーパー星への道」を昨年9月に発売された『パーマン』2巻に収録しているので、双方を読み比べることができます。


●『エスパー魔美』5巻(最終巻)
 
 F全集の『エスパー魔美』は単行本初収録話がないかわりに、カラー原稿をカラーで再現するという趣向で刊行されてきましたが、連載後期になるとカラーページがわずかになってきて、この第5巻に収録された話にはカラーページはありません。でも一話一話の読み応えは非常に充実しており、最終話までテンションの落ちない質の高さを確保していますから、そういった話を既成の『エスパー魔美』の単行本より大きな判型のF全集で読めることには喜びを感じます。『エスパー魔美』は背景や小道具などが細密に描かれている部分がかなりあるので、その点でも大きめの判型で読めるのはありがたいです。