赤塚不二夫展 〜ギャグで駆け抜けた72年〜

 松坂屋名古屋店南館8階マツザカヤホールで開催中の「赤塚不二夫展 〜ギャグで駆け抜けた72年〜」に行ってきました。

 松坂屋デパートメントストア100周年記念「赤塚不二夫展 ギャグで駆け抜けた72年」
■期間:平成22年6月23日(水)〜7月5日(月) 
■場所:南館8階マツザカヤホール
■開場時間:午前10時〜午後7時30分 ※最終日7月5日(月)は午後6時閉場(いずれもご入場は閉場の30分前まで)


『おそ松くん』、『ひみつのアッコちゃん』、『もーれつア太郎』、 『天才バカボン』などの大ヒット作で知られる赤塚不二夫氏。
2008年8月、72歳でこの世を去るまでの間、一貫して「ギャグ」という視点で作品を描き続け、多くの人を笑わせることで日本のマンガ史に大きな足跡を残しました。
その功績から「ギャグの帝王」とも称された人柄を偲ぶとともに、その独創的な世界を紹介いたします。
 http://www.matsuzakaya.co.jp/nagoya/promo/fair_event/s100622_02/

 この展覧会は、昨年8月26日から9月7日にかけて東京・松屋銀座8階で開催された「赤塚不二夫展 〜ギャグで駆け抜けた72年〜」が名古屋へ巡回してきたものです。
 同展は赤塚マンガの原画の展示をメインとしており、赤塚先生が残した作品の魅力をストレートに味わえる趣向になっていました。
 会場に入ると、まずはじめに、数々の原作絵の赤塚キャラが音楽に乗ってテンポよく動きまわる10分ほどのアニメーションが上映されており、次へ進むと、赤塚先生の先妻・登茂子さんの遺品から見つかったトキワ荘時代のモノクロ写真が展示されていました。若かりし頃の赤塚先生はもちろん、トキワ荘時代の仲間たちの姿も写っていて、じっくりと見入りました。もちろん藤子両先生のお姿もあって、二人の藤子先生が隣り合って列車の席に座っている写真が特に気に入りました。


 その後は、赤塚マンガの原画の展示がしばらく続きます。同展の核となる部分です。初期作品のコーナーから始まり、『おそ松くん』『ひみつのアッコちゃん』『もーれつア太郎』『天才バカボン』『レッツラゴン』といった赤塚先生黄金期の原画が、できるかぎり作品の内容を楽しめるようなかたちで展示されていました。赤塚マンガを立ち読みして回っているような楽しさでした。また、カラー扉や群衆の描かれた漫景などは、一枚絵としての魅力があふれていました。


天才バカボン』のコーナーは個人的に特に熱心に鑑賞できました。
ご存じのとおり『天才バカボン』は連載を重ねていくなかで通常のドタバタギャグマンガの枠を超え、マンガの文法を破壊するような、マンガの構造そのもので遊ぶような実験性を帯びていくのですが、そういう様相を一枚一枚のナマ原画で味わえるのが相当な醍醐味でした。見開きにドアップのバカボンバカボンパパの顔だけを描いた実物大マンガ、ぜんぶ左手で描いたマンガ、何も描かれていないコマが続くマンガ、登場人物の描き方がだんだんなおざりになってそのうち脚が消え体が消え顔の輪郭が消えて目だけになってしまうマンガなど、なんでもありのナンセンス、アナーキーを極めていきます。この時代にリアルタイムで『天才バカボン』を読んでいた読者は、赤塚不二夫はいったい次週なにをやってくれるんだろうという熱い思いで赤塚ワールドに引っ張られていたんだろうなと想像できます。
 過激でシュールなギャグマンガレッツラゴン』が結構なスペースを割いて紹介されていたのも印象的でした。


 手塚治虫先生の初期SF三部作の一つ『ロストワールド』を読んだ衝撃から14歳の赤塚先生が描いた習作『ダイヤモンド島』の原画も展示されていて、デビュー前の赤塚先生の才気を感じました。初期手塚マンガの影響がはっきりと見てとれる冒険活劇マンガで、主人公の少年は、手塚マンガに登場するケン一を彷彿とさせるキャラクターでした。


 通路の両側の壁からたくさんの赤塚キャラクターのパネルがせり出して並んでいて、その間を通り抜ける空間も楽しかった。それらのパネルの裏面を見ると、各赤塚キャラの後ろ姿が描かれていました。このパネルを見て、『へんな子ちゃん』というマンガに“のび太”なるキャラクターが登場することを知りました。もちろん『ドラえもん』ののび太とは全く関係のないキャラクターで、主人公のへんな子ちゃんの家で飼われている犬の名前のようでした。


 最後のコーナーは、“シェーッ!”のオンパレード。いろいろな有名マンガのキャラクターが“シェーッ!”のポーズをするイラスト(この展覧会のため各マンガ家が描き下ろしたもの)や、各界著名人が“シェーッ!”のポーズをしている写真がずらりと壁を埋めていました。そのなかには、藤子A先生が描き下ろした喪黒福造の“シェーッ!”もありました。


 売店では思いのほか多種類のグッズが売られていて、眺めているだけで楽しかったです。売店の一区画が「バカ田大学購買部」という設定になっていて、バカ田大学グッズがいろいろと販売されていました。私はアイデアの面白さに惹かれて、バカ田大学の校章と大学ノートを購入。



 非常に面白い展覧会だったし、地元で開催されていることもあって、時間があったらもう一度足を運んでみたいほどです。