横尾忠則と藤子不二雄A

 今月初め、大阪の国立国際美術館で開催中の展覧会「横尾忠則全ポスター」へ行ってきました。(開催期間:7月13日〜9月12日)
 
 「横尾忠則全ポスター」チケット
 http://www.nmao.go.jp/japanese/b3_exhi_beginning_yokoo.html

 この展覧会は、横尾忠則が1950年代から現在にかけて制作したポスターを展示するものです。展示されるポスターはおよそ800点と膨大な数にのぼります。まずその数に圧倒されました。横尾忠則の作品は、1枚1枚が非常に派手でインパクトがあって、それらを見ることで受ける刺戟も強かったです。展示数の膨大さでも、1枚1枚の存在感でも圧倒される展覧会でした。
 ポスターの下絵・版下の展示も興味深かったですし、高校時代やデビュー当時の、まだ私が思う横尾忠則らしさに到達する前の作品も多く展示されていて、見ごたえたっぷりでした。
 私は展覧会を観に行ったらなるべく図録を購入するようにしているのですが、この展覧会の図録はあまりに豪華で12000円もして、ちょっと手が出ませんでした。手ごろな価格のポストカードやミニノートを少し購入して美術館をあとにしました。
 

 
 なぜ当ブログで「横尾忠則全ポスター」へ出かけたことをわざわざ書いたかといいますと、私は「横尾忠則」と聞くと、藤子不二雄A先生の作品を思い起こすからです。
 藤子A先生が「週刊漫画サンデー」で1969年から71年にかけて不定期連載した『黒ィせぇるすまん』(『笑ゥせぇるすまん』に改題)全22話のなかに、「勇気は損気」という話があります。この話に「横尾忠則」がちょっとだけですが出てくるのです(登場人物としてではありませんが)。
「勇気は損気」のメインゲストキャラは、人間的に目立たないイラストレーター。そのイラストレーターが雑誌の編集者に自分の作品を見せているとき、編集者がこんなアドバイスをおくります。

イラストはね、現代のファッションのひとつだよ それと同時にイラストレーターもまた現代のファッションなんだ たとえば横尾忠則をみたまえ 彼のイラストはモチロンすばらしいが作者である横尾忠則自身のタレント的魅力が相乗効果をあげてるんだよ! 

 この場面では、こうして横尾忠則の名前が登場するとともに、横尾忠則の作品一点と横尾本人の姿が描きだされます。「横尾忠則」と聞くと、私はこの場面で描かれた横尾の絵を真っ先に思い浮かべるのです。
 ここで描かれた横尾忠則の作品は、1969年公開の高倉健主演の映画『新網走番外地 さいはての流れ者』のポスターだと思われます(A先生は、このポスターの図版をコピーして貼りつけるのではなく、自分のタッチで描き直しています)。高倉健の額に「男」の文字が刻印されているのが非常に印象的。後年ゆでたまご先生によって描かれたキン肉マンの額の「肉」を彷彿とさせます(笑)


 また、横尾忠則と藤子Aマンガといえば、『仮面太郎』(1969年〜70年「少年画報」連載)も思い出されます。
『仮面太郎』の作中には、主人公・仮面太郎の初登場シーンをはじめ、毛筆調のナレーションの入った大ゴマが数箇所あって、そのような毛筆調の趣向が横尾忠則のイラストからの影響だと考えられています。


『黒ィせぇるすまん』も『仮面太郎』もほぼ同じ時期に連載された作品なので、この時期、横尾忠則時代の寵児であり、A先生もその存在や仕事ぶりを強く気にかけていた、ということなのでしょう。


横尾忠則全ポスター」の展示品のなかに、「BRUTUS」1999年8月1日号(マガジンハウス)の表紙として使われた絵がありました。「BRUTUS」のこの号は、「少年ブルータス 死ぬまでマンガを読みたい」というマンガ特集号で、表紙のイラストは元巨人軍の長嶋選手と王選手の体に有名マンガのタイトルが毛筆調でたくさん書かれたものでした。そのたくさんのマンガタイトルなかにA先生の『魔太郎がくる!!』とF先生の『ドラえもん』の文字も見られます。
 その表紙絵がポストカードになって売られていたので購入してみました。