日芸で藤子不二雄A先生トークショー!

 マンガの神様手塚治虫先生の誕生日であり、まんがの日であり、文化の日でもある11月3日(水)、東京江古田の日本大学藝術学部藤子不二雄A先生のトークショーまんが道途中下車…」が催されました。日芸の学園祭のイベントのひとつです。
 午後1時大ホールにて開演予定だったのですが、私は夜行バスで早朝に新宿に着いたため、まず中央線で吉祥寺へ移動し、楳図かずお先生の「まことちゃんハウス」を探しに行きました。事前に「だいたいこのあたりだろうな」とアタリをつけて赴いたので、迷うことなく発見できました。
  
 壁の模様は楳図先生のトレードマークである赤白ボーダー! 上のほうを見ると、まことちゃんが立っています。屋根の円筒形部分の窓からはライトが点滅しているのが見えます。
 この家は閑静な高級住宅街のなかにあって、道を歩いていると、犬の散歩をしている人、道端の掃除をしている人などとよくすれ違いました。


  
 まことちゃんハウスの近所には井の頭公園があります。そこまで歩いて、池の鴨を眺めながらゆっくりと過ごしました。朝の散歩やジョギングをしている人が大勢いて結構にぎやかでした。


 そうして、池袋を経由して江古田駅へ移動。
 学園祭で人々がごった返す日芸の敷地に入って少しすると、怪物くんの直筆色紙を掲げたテントが目に飛び込んできました。ここでA先生のトークショーの当日券を販売しているようでした。(私は前売りを購入)
 
 トークショーが開演するまで、ビールを飲みながら学園祭の雰囲気を堪能。


 席はチケットの整理番号順という話でしたが、実際は整理番号50までの人がまず入場でき、そのなかでの早い者勝ちという状態になりました。私は頑張って最前列まで走って行って、どうにか一番前の席を獲得。その列には、顔見知りばかりがずらりと並ぶ格好に(笑)


 トークショーが始まってA先生がステージに登場すると盛大な拍手がわきおこります。私にとっては、昨年3月以来久々のナマA先生のお姿です! 今回のA先生は席に座ってお話をされました。A先生がワンマンのトークショーで着席されるというのは、私の経験のなかでは珍しいことです。


 トークの内容は、ファンにはお馴染みのエピソードがメインでしたが、何度聞いたとしても、A先生の口からじかに空気を伝って耳に届くお話には格別の波動があって感激的です。
 氷見の光禅寺で誕生、高岡へ引っ越し、藤本先生との出会い、手塚マンガの衝撃、新聞社時代の甘い思い出、上京の決断、両国2畳間、青春のトキワ荘時代のいろいろな出来事……
 その後時代が跳んで、各界の著名人との交友関係や相棒の藤本先生のこと、現在連載中の作品のこと、などなど……
 あとで藤子ファン仲間と「もうこれは古典落語の世界だね」「様式美だね」なんて話をしましたが、まさにそんな感じで、お馴染みのエピソードなのにそうした話題が出るたび「出たー!」「来たー!」と心のなかでリアクションできるし、何度聞いても新鮮な感興があるし、もうすぐ笑うところが来るとわかっていて実際にそのポイントが来るとやっぱり笑えてしまったり、今回はこことここのエピソードの順番を入れ替えてるなと話の微妙な構成に着目したりと、先生の講演を繰り返し聞けば聞くほど奥深い楽しみ方ができてくるのです^^ まさに古典落語の味わい。


 会場の反応も良好で、A先生は随所で笑いをとっていました。
 井上陽水さんとA先生は以前から酒飲み友達で、その縁で映画『少年時代』の主題歌を陽水さんに依頼した、というエピソードを話すなかで、A先生は、陽水さんの『少年時代』の歌詞の一部を引用したのち、
「この詞、ちょっと意味がわかりませんが(笑)」
 と付け加えました。
 会場がドカンとわきました。
 陽水さんの歌詞がシュールだというのはよく指摘されることですが、それをA先生一流のユーモアと友情で面白く表現してみせたわけです。


 新しい話題としては、今年日本テレビ系で放送されたドラマ『怪物くん』関係のものがありました。
「嵐の大野くんと対談したとき、飲み屋の女の子に見せびらかしてモテたいのでツーショット写真を撮りたかったんだけど、周囲のガードが固くて頼みにくい状況だった。でも、ありがたいことに大野くんのほうから、先生いっしょに写真を撮ってください、と言ってきてくれた。僕は内心「やった!」と思ったけど、その気持ちは隠して「おお、いいよ」と答えた。その写真を女の子に見せたらやっぱりキャーキャー言ってくれたけど、何度も見せたもんだから、もうあまり反応がなくなった(笑)」……


 1時間のトークショーが終わったあと、A先生が会場から外へ出たとたん一気に人だかりができ、サインや握手を求める人で騒然となりました。

 わかっていることですが、A先生人気おそるべし!と再確認。


 その後私は、藤子ファン・まんが道ファンということで知己を得た漫画家さんがたや、トキワ荘通りの商店会の皆さん、藤子仲間とともに江古田からトキワ荘通りまで歩きました。
 ここでご一緒させていただいた漫画家さんは、UJTさん、北沢バンビさん、シャシャミンさんで、この御三人はトキワ荘通りの商店会が8月に出したフリーマガジン「トキワ荘通り」Vol.1の企画「私とまんが道」にも寄稿されています。
 
 「トキワ荘通り」Vol.1 (2010年8月発行)


 UJTさんは私と同学年のヒップホップを愛する漫画家さんで『まんが道』を読んだことでご自身もまんが道を歩むことを決意されました。UJTさんがある雑誌で『まんが道』への熱い思いを語っていたのを読んだ私がその記事の情報をブログで書いたことなどがきっかけでご縁ができました。まったく同じ時代に藤子ファンとして歩んできた方だけに、心が響き合うものがあります。
 UJTさんと知り合えたのをご縁として、北沢バンビさんやシャシャミンさんがたともお会いすることができました。現在北沢バンビさんが集英社「コーラス」で連載中の『永田町ワールドフェイマス』には、トキワ荘通りをモデルにした風景が出てきます! 連載されたページ数からいって、もうすぐ単行本の1巻が出ると思われます。


 ・トキワ荘通り
 http://blog.goo.ne.jp/tokiwasou-street/


 ・UJT公式サイト
 http://www.mangatronix.com/ujt/


 ・北沢バンビ公式サイト
 http://www.kitazawa-bambi.com/


 ・シャシャミンwikipedia
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%9F%E3%83%B3


 トキワ荘通りまで歩くあいだ、もっぱらシャシャミンさんとお話させていただきました。シャシャミンさんは、雑誌「リラックス」の藤子・F・不二雄特集で小山田圭吾さんや宇川直宏さん、スチャダラパーとともに川崎市の藤子プロの倉庫へ入ってF先生の大量の生原稿をじかに見て触った、という羨ましい体験をされており、そのお話を聞いていた私はよだれが出そうでした(笑) シャシャミンさんのご友人がF先生のお宅とA先生のお宅のあいだに住んでいらっしゃる、というお話もインパクト大でした。
 
 藤子・F・不二雄特集の「リラックス」2002年8月号


 トキワ荘通りに着くと、まず南長崎花咲公園にある記念碑「トキワ荘のヒーローたち」を見学。昨年4月に除幕式が行われたものです。
 
 トキワ荘そのものが解体されて跡地しか残っていない現在、トキワ荘通りにおけるランドマークといえる構造物となっています。
  
 記念碑の上部はトキワ荘の外観を丁寧に模したミニチュア、下部はトキワ荘の各漫画家さんのプレートです。


 その後、皆で中華食堂「松葉」へ。『まんが道』で有名なあの松葉です。
 
  
 松葉の店内には、ゆかりの漫画家さんの色紙が飾ってあります。
 
 厨房の中。


 皆でビールで乾杯してギョーザを食べ、シメはやっぱりラーメンで「ンマーイ!」
 そこでUJTさんや北沢バンビさんのご著書にサインをいただきました!
 
  
 わーい!!
 UJTさんやトキワ荘通りの方が私の著書『藤子不二雄Aファンはここにいる』を持参してくださっていて、私もサインを書くことに。ただし私は自分のサインを持っていないので、単純に自分の名前を書くだけというそっけなさでまことに恐縮でした^^ 一日に4つもサインを書いたのはこれが初めてです(笑)


 松葉を出て、トキワ荘通りの方や漫画家さんがたとお別れしたあとは、藤子ファン仲間とともに新宿へ移動し、藤子不二雄ファンサークル「ネオ・ユートピア」のスタッフの面々と合流。居酒屋で飲み会となりました。
 日本でも(ということは世界でも)最高レベルのディープな藤子知識や情報や経歴を持った面々が10人ほど集まっての飲み会ですから、その話題の濃さといったら尋常じゃなく、ほとんどここでしか聞けないであろう話題が日常会話のノリでバンバン飛び交って極めて刺激的でした。
 二次会のファミレスでも盛り上がって、深夜11時半ごろ解散。私が夜行バスで帰る時間まで皆さんつきあってくださって、ありがたかったです。


 当日お会いした皆さん、ほんとうにありがとうございました!
 夜行バスで2泊しながらの日帰り旅行で、東京にいられたのはほんの一日だけでしたが、大勢のお仲間と会えて大感動でした。