藤子・F・不二雄大全集第2期第5回配本

 12月24日(金)、藤子・F・不二雄大全集第2期第5回配本分が発売されました。『オバケのQ太郎』8巻、『21エモン』2巻(『モンガーちゃん』併載)、『ドビンソン漂流記』の3冊です。


 
オバケのQ太郎』8巻は、「小学三年生」に連載された話を集めたものです。全34話を収録。第1話目が小三版独自のオバQ誕生エピソードで、第2話目で大原家への居候が決まるエピソードが描かれます。
 本巻所収の「Qちゃんの野犬がり」は、『エスパー魔美』の「サマー・ドッグ」にも通じていくテーマを持った話で、印象的な一編です。
 解説は、漫画家の高橋留美子さん。漫画家の大先輩であるF先生への敬意・共感が伝わってくる文章です。


 
21エモン』2巻は、「週刊少年サンデー」に連載された同作の後半部分を収録。21エモンが憧れの宇宙へ旅立つエピソードがメインです。“旅行”という程度を超えた苦難や恐怖に遭遇して21エモンたちは大変な目にあいますが、読んでいる我々は宇宙SFのセンスと魅力に満ち満ちた物語を堪能できます。
 また、同巻には「月刊コロコロコミック」に一度だけ掲載された読切の『21エモン』が収録されています。1981年の映画『21エモン 宇宙へいらっしゃい!』公開にちなんでF先生が新たに描き下ろした一編です。
 さらに、『21エモン』の幼年版『モンガーちゃん』も併載。『モンガーちゃん』は単行本初収録です。しかもオールカラーで再現してくれていて、本作の絵本風味を味わえます。
 解説は、東映プロデューサーの塚田英明さん。


 
『ドビンソン漂流記』は、これまでパワァコミックス(双葉社、1977年)と藤子不二雄ランド中央公論社、1988年)のレーベルから単行本化されていましたが、どちらもとっくに絶版状態でしたから、この作品が再び人目に触れる機会が訪れて嬉しいです。不思議な異分子が日常に闖入するというF先生お得意の児童マンガですが、掲載誌が「こどもの光」という農家の子ども向けの雑誌だったうえテレビ化・映画化といったメディア化がなされていないこともあって、どこか地味な印象がつきまとっている作品です。これを機に多くの人に楽しんでもらえたらいいなと思います。
21エモン』が、主人公が地球から宇宙へ飛び立つ話なら、『ドビンソン漂流記』は主人公が宇宙から地球へやってくる話です。ドビンソンの場合は好んで地球へやってきたわけではなく、タイトルにある通り“漂流”というかたちで心ならずも地球へ来てしまったのですが…
 ドビンソンは、「地球は文明の遅れた星」という意識からの言動が多いので小生意気な性格に見えるけれど、遠い星である地球に漂着し帰れる当てもなく両親と離れ離れの生活を送っているためどこか寂しさを漂わせています。また、ドビンソンの発言は、日本の日常の風景や習慣を当たり前と思っている我々に、その当たり前のものが新鮮に感じられる体験をもたらしてくれます。異化体験ですね。
「「直し屋機械」大暴れ!」という話は、壊れたものを何でも直したがる自動修理機の、直したい中毒ぶりと行動のエスカレートが面白くて強い印象を残します^^ 
 最終回は「すてきなXマスプレゼント」といういいお話なのですが、今回の全集の発売日がちょうどクリスマスイブである12月24日……この最終回を持つ『ドビンソン漂流記』をこの発売日に持ってきてくれたところが粋ですね。
 解説は、『ドビンソン漂流記』連載時の「こどもの光」編集長だった村谷直道さん。