うめざわしゅん『一匹と九十九匹と』

 4年ほど前に当ブログで、うめざわしゅんの『ユートピアズ』(小学館、2006年発行)という短編集をレビューしたことがあります。
http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20070206


 私はこのうめざわしゅん氏を、アイデアSFとか異色短編とか世にも奇妙な物語といった系統の短編マンガの良い描き手として評価しました。
 実際、2008年9月23日(火)放送の「世にも奇妙な物語 秋の特別編」(フジテレビ系)で、『ユートピアズ』所収の一作『どつきどつかれて生きるのさ』がドラマ化されています。
 そのうめざわしゅん氏の新刊が、4月28日に発売になりました。『一匹と九十九匹と』という書名です。ほんとうに久々の新刊になります。
 
 ・ビッグコミックス(スピリッツ)『一匹と九十九匹と』第1巻


月刊!スピリッツ」2010年12月号からスタートしたオムニバス・シリーズの単行本化です。
 この本も『ユートピアズ』と同様に短編集なのですが、アイデアSFとか奇妙な味の物語といった内容ではなく、重苦しく心がヒリヒリ痛むようなシリアスな人間ドラマです。別個の理由で学校で孤立している男女の話とか、あるアーティストのファンという共通性がありながらもそれぞれにかかわりのない人々のそれぞれのエピソードとか、たまたま犯罪の共謀者になった男二人の逃亡劇とか……。全く救いがないわけではないけれど決して救われているわけでもない物語です。


 収録作品は以下の通り。
『海の夜明けから真昼まで』
オーバードーズ
『ポップロンド』
『ガッコーの巣の上で』
『HOW TO GO【前篇】』
『HOW TO GO【後篇】』