『ガラスの仮面』

 美内すずえガラスの仮面』の最新巻(第47巻)が、26日(火)に発売されました。
 
花とゆめ」1976年第1号から連載がスタートし、今もまだ完結に至らない大河マンガです。私は小学生のころ親戚の家にあった単行本でこの作品を初めて読んで、その後、読むことから遠ざかる時期がありながらも、「まだ続いていたのか!」という驚きとともに再び手に取り、現在も単行本を買って読み続けています。


 作品の内容にドキドキさせられるのはもちろんですが、はたして無事完結するのか…ということでもハラハラさせられます(笑) 連載が中断したり、単行本の次の巻が出るまで数年かかったりして、未完の大作になるのでは…という不安が脳裏をよぎることがあるのです。
 40巻以降の単行本刊行ペースをざっと見てみると、1993年に40巻、1998年に41巻、2004年に42巻、2009年に43・44巻、2010年に45・46巻、そして今年47巻が発行されており、一時期の刊行ペースの遅さを思えば、2009年からはペースが上がってきています。それでも安心はできません(笑)


 演劇界の幻の名作と言われる「紅天女」の主役を、北島マヤ姫川亜弓のどちらが射止めるのか…それがこの大河マンガの中軸を貫くテーマであり、その結論・結末が大いに気になるところです。あと、北島マヤ、速水真澄、桜小路優らの恋の行方も…。
 ここまで来たら半永久的に終わってほしくないという思いもわずかに抱きながら、やはり気になる問題がすべて解決し、すばらしい大団円を迎えてほしいという願いが強いです。
 物語はクライマックスに入ってきているとは思うのですが、まだまだ終わらない雰囲気が漂っています。
 美内すずえ先生の頭のなかでは、すでに10何年も前からエンディングのセリフや構図が決まっているそうですが、それでもなかなかストーリーが進んでいかないのは、単行本化のさい完全主義的に作品を描き改めることや、劇中劇の多くがオリジナルなのでそれを考えるのが大変、といった理由があるようです。
 また、美内先生は「新幹線で東京から博多まで行く、というゴールは決まっているのですが、熱海で台風に遭遇したり、米原で降車したりするので……」という喩え話を用いてストーリーがなかなか進展していかない事情を語ったこともありました。(美内先生の話の内容は大意です)


ガラスの仮面』は少女マンガながら、演劇のためにスパルタな特訓をしたり熾烈なライバル関係が生じたりして、往年の“スポ根”のようなテイストがあります。ですから男性でもとっつきやすい少女マンガなのです。
 この作品では、役柄をうまく演じるため、その役柄の人物と同じような境遇で生活してその人物になりきる、という訓練の様子がよく描かれます。そんな場面も強烈に印象に刻まれます。そこまでやるか! そこまでなりきらなくてもいいだろう!と思えてくるような、狂気じみた過酷な稽古が繰り広げられるのです。
 そうした過剰さも『ガラスの仮面』の醍醐味です。その過剰さをギャグのように受け止める読み方もありますね^^


 登場人物が憎しみや嫉妬や敵意やショックを感じたときなどに、その人物の眼が白くなる描写もインパクトがあります。とくに、白眼になった者同士が見つめ合って火花を散らす場面が迫力たっぷり。美内すずえ先生らしい怖い表現だなと思います。


 普段は目立たず不器用な少女・北島マヤが演技のこととなると天才的な才能を発揮して光り輝く、という要素も魅力的です。普段は冴えない人物が、ある状況、ある場面では凄い人になる…… そういった要素は藤子マンガでも見られます。たとえば、F先生の『パーマン』は、普段はパッとしない少年が、スーパーヒーローになっちゃう話ですし、A先生の『ミス・ドラキュラ』は、普段は地味なOLが、美しくてゴージャスで華麗なもう一つの顔を持っているという話です。いや、それよりも、普段は不器用で不得意なことばかりののび太が、あやとりや射撃になると我然天才的な才能を発揮するさまのほうが、北島マヤが演劇で輝くさまと似ているでしょうか。
 と、『ガラスの仮面』を強引に藤子作品と関連付けて語ってみましたが、『ガラスの仮面』と藤子作品、といえば、もっと直接的なネタがあります。
ドラえもん』の「自動返送荷札」に出てくる作中作『ガラスのカメ』です。これはもちろん『ガラスの仮面』のパロディです。
『ガラスのカメ』がどんな内容の作品かわかりませんが、「自動返送荷札」のなかで描かれた『ガラスのカメ』の表紙を見ながら想像すれば、ガラス製の亀の置物をめぐる演劇をテーマにした少女マンガ、といった印象です。


 で、『ガラスの仮面』最新47巻の感想ですが、まだ発売されたばかりなので内容に触れるのは避けておきます。おおまかな印象としては、この巻については演劇マンガというより別テーマのマンガになっている感じをひしひしと受けます(笑) 
 ある人物とある人物の関係に関して、ついにこの時が来たか!という感慨もおぼえました。でも、そうすんなりと行きそうもないのが確実。
 それにあんなことも起こってしまうし…。次の巻がいつ出るのかわかりませんが、やっぱり待ち遠しくなってしまうのでした(笑)