つばな『第七女子会彷徨』『見かけの二重星』

 9月13日、漫画家“つばな”さんの新刊コミックスが2冊同日発売されました。
 
第七女子会彷徨』第4巻(徳間書店、通常版と限定版があり)と『見かけの二重星』(講談社)です。


 私は、『第七女子会彷徨』の第1巻を読んで気に入って、それから作者のつばなさんに注目してきました。しかし『第七女子会彷徨』以外のつばな作品を読んだことがなかったので、『見かけの二重星』の刊行でようやく他のつばな作品を読めることになりました。


第七女子会彷徨』も『見かけの二重星』も、いわゆる“すこしふしぎ”系のマンガといってよいでしょう。“すこしふしぎ”というサブジャンルは、藤子・F・不二雄先生が、自分の描く「SF」は「SUKOSHI FUSHIGIな物語」の意味です、と語ったことを発端として徐々に浸透してきたものです。


第七女子会彷徨』は、ユルさと不思議さの配合加減がよい感じです。主人公の女子高生2人(高木さんと金村さん)のボケとツッコミのようなやりとりが楽しいです。
ドラえもん』を思わせる不思議アイテムが登場したり、ぶっ飛んだ出来事がさらりと日常に入り込んできたりと、独特な生活SFの面白さを味わえます。
 デジタル化された天国とか、友達を組み与えられる制度とか、ちょっとシュールだったりブラックだったりといった要素も魅力的。


 第4巻では、第31話「生き人形」と37話「共有リング」が特に愉快でした。裏切らない友達を欲する高木さんの執念が、ちょっと怖くてかなり可笑しい。
 ちなみに、『第七女子会彷徨』というタイトルは、尾崎翠の『第七官界彷徨』が元ネタとなっています。


 つばなさんは、『それでも町は廻っている』の石黒正数さんのアシスタントだったこともありまして、つばな作品には石黒作品のテイストも感じられます。
 石黒正数さんは、記憶にあるなかで最初に読んだマンガが『ドラえもん』で、中学生になるまで『ドラえもん』『パーマン』『忍者ハットリくん』『魔太郎がくる!!』『オバケのQ太郎』『SF短編』など藤子マンガばかり読んでいたそうです。ご自身が描く作品も藤子マンガの影響を多大に受けているとのこと。
 藤子マンガが好きで石黒マンガが好きな私がつばなマンガも好きになるのは、じつに自然なことだったといえるでしょう。


『見かけの二重星』は、妙な実験に巻き込まれて2人に分裂してしまった女子高生の話。作品の漂然とした雰囲気は『第七女子会彷徨』に通じるものがありますが、『第七…』よりもシリアスなストーリーです。1人の人間が2人になれば、驚きや悩みが生じるし、具体的にさまざまな問題も起こる。もう一人の自分は自分でありながら他人でもある。それは不条理な状況だ。最後には何らかの解決が必要になってくる……。つばなさんがこのテーマをどう料理したが見どころです。