藤子・F・不二雄大全集第3期スタート!

 22日、藤子・F・不二雄大全集第3期の刊行がいよいよスタートしました。
 第1回配本は、『新オバケのQ太郎』第1巻、『T・Pぼん』第1巻、『ドラえもん』第15巻の3冊です。


 
■『新オバケのQ太郎』第1巻
「小学一年生」「小学二年生」に連載された話を収録。大半はカラーページです。学習企画用に描き下ろされた『雨ぼうやの旅』も収録。
 コアな藤子ファンの人と話をしているとき、F先生のギャグセンスを一般の人(Fマンガをあまり知らない人)に端的に理解してもらうためお薦めしたい作品としてよくタイトルがあがるのが、この『新オバケのQ太郎』です。私もその意見には大いにうなずけます。
 F全集の第1期と2期に刊行された「旧」の『オバケのQ太郎』ももちろん抜群に面白く、大ブームを巻き起こしたことなどを鑑みれば「旧」のほうがずっと人気がありましたし、画面からほとばしる熱気や勢いは「旧」のほうに分があると思うのですが、現在の視座から見て、内容の充実感、構成の巧みさ、ネタの脂の乗り方、絵の安定感など、『新オバQ』のほうがより現代性、普遍性があると感じられるのです。F先生の落語好きという資質が存分に発揮された作品でもありますし、話数が「旧」より少ないこともあって、それもお薦めしやすい理由です。
 私が幼児の頃リアルタイムで読んだ経験があるのが「新」のほうである、というきわめて個人的な理由も大きいです(笑) 個人的な理由という点では、私の大好きなO次郎が登場するという事実も見逃せません…。
 その『新オバケのQ太郎』がついに全集で刊行開始だと思うと、心が躍ります。


 今回発売された第1巻は「小一」「小二」という低学年誌で連載された分とあって、私が『新オバQ』の本領が発揮されるのは第2巻、3巻あたりだと思っています。むろん今巻もすでにとても面白いし、低学年向けならではのよさもあって、読んでいて幸せな気分になりました。
「Qちゃんのかぜ」という話で、普通のマスクでは口の大きさに合わないQちゃんがマスク替わりにある物を使ったのですが、そのときの格好がやたらと笑えました。
「小二」版の第1話「ゆかいなO次郎」では、人間の世界へやってきたばかりのOちゃんをQちゃんが案内するくだりがあって、その場面もとても可笑しかった。Qちゃんにとって駄菓子屋、理髪店、書店、学校がどんな場所なのかという、その偏った認識が笑えるのです。
「コップヌードル」のラストの一コマは、昔から大好きです。



 
■『T・Pぼん』第1巻
T・Pぼん』は、F先生の歴史への思い入れと造詣の深さが前面化した作品です。さまざまな歴史上の出来事が作品の舞台になります。歴史好きの人はもちろん、歴史に関心のない人でも歴史を面白いと感じられるようになる作品だと思います。この作品をきっかけに歴史好きになった、という人もいます。
 第1巻では、紀元前2625年のエジプト、1664年の南フランス、628年の天山山脈、紀元前1341年のクレタ島、1945年の沖縄、1億9千万年前の南アフリカなどが舞台になっています。


 T・P(タイムパトロール)とは、歴史のなかで不幸に死んでいった人を、時間を遡って救い行く仕事です。でも、その後の歴史にかかわる人物を救ってはいけません。それは歴史を改変してしまうことになるから。そういう制約があるため、T・Pの隊員たちは深い葛藤を抱きながら仕事をせねばなりません。そうした心理面の描写も印象的な作品です。時おり出てくる残酷な場面も心に刻まれます。


T・Pぼん』は、「少年ワールド」とその後継誌「コミックトム」で連載されました。第1巻は「少年ワールド」に連載された話を収録しています。主人公の並平凡は、「少年ワールド」連載版では、T・Pの見習い(助手)の立場です。その並平凡の先輩として、リーム・ストリームという女の子が登場するのですが、このリームは、F先生が描くお姉さん系、ロング・ヘア系のヒロインとしてファンのあいだでなかなかの人気を誇っています。



 
■『ドラえもん』第15巻
 1975年度と76年度に生まれた人が小学生のとき学年誌においてリアルタイムで読んだ話を収録。今巻に2つの年度分がまとめて収録されたのは、この年代の学年誌ではF先生がご病気のため新たな話を描けず、以前発表された話を再録することが多くて、6年×12ヶ月分の話がちゃんと揃っている年代と比べると話数が少ないからです。
 とはいえ、2つの年度分を合わせて1冊にまとめたため、この巻は全部で94話も収録されており、大ボリュームの1冊となっています。
「戦車スボン」は、戦車とズボンをかけ合わせるというシュールさが面白いです。ちゃんとポケットやおしっこをする部分もある、という凝りよう(笑) のび太のおしっこの出方がすごすぎます^^
「ゴロアワセトウ」は、オチのインパクトもさることながら、その直前のスネ夫の歯の異常事態が笑えます。
 ドタバタやナンセンスといった笑いが炸裂した「いたずらオモチャ化機」「時限バカ弾」も印象的です。
「とうめいボディガードプラモ」「きもだめしめがね」「ツーカー錠」などの話は、オチが効いていて好きです。