藤子・F・不二雄大全集第3期第2回配本

 25日(火)、藤子・F・不二雄大全集第3期第2回配本が発売されました。
 月報によると、大全集オフィシャルグッズとして、11月末から「月報ファイル」や「透明ブックカバー」が発売される模様。


 ●『ウメ星デンカ』第1巻
 
 故郷の星を大爆発で失った国王の一家が地球に漂着するところから話が始まります。藤子・F先生が得意とした「異分子が日常に闖入する」パターンの作品です。この場合の異分子とは、ウメ星デンカをはじめとしたウメ星の人たちです。
 ウメ星の人たちは、地球の習慣や常識などを知らず、ウメ星に住んでいたときの感覚で行動するため、そこに齟齬が起こって笑いが生じます。この人たちは、宇宙人であるというだけじゃなく、王族という面でも異文化人です。ですから『ウメ星デンカ』は、地球に宇宙人がやってくるということに加え、庶民の生活のなかに王族が入り込むという点でも「異分子が日常に闖入する」パターンの作品だといえましょう。
 ウメ星の国民にとってはたいへん名誉なことでも、地球人にはありがた迷惑なのが、ウメ星の勲章です。この作品における勲章の存在は、何度も繰り返される定番のギャグになっています。


ウメ星デンカ』には、人や物がどれだけでも入る壺が登場します。この壺からは、不思議な道具が出てくることもあります。そのアイデアは、『ウメ星デンカ』の次に藤子・F先生が描いた『ドラえもん』の四次元ポケットにつながっていくのです。


 今巻は、「小学二年生」「小学三年生」で発表された話を収録しています。「小学三年生」で発表された話については、第2巻に後期分が収録される予定。



 ●『ポコニャン
 
 この1冊に、「きぼうのとも ようじえほん」版と「希望の友」版の全話が完全収録されています。カラー原稿を再現していて、ポコニャンのかわいらしさを色つきで堪能できるのが素敵!
 この作品にも、不思議な道具がいろいろと登場します。全体を読んでみると、ポコニャンがどこかから道具を持ってくる話と、ポコニャンが自分の手で道具を作る話と、ポコニャン自身が持つ超能力を使う話が混じっていることがわかります。
 のび太そっくりなキャラや、のび太のママにそっくりなキャラが出てくる話もあったりします^^


 原稿がF先生に返却されず外部に流出してオークションに出品されたこともあった「トランポリンになるくすり」が、(印刷物からの複写ですが)無事収録されたのもよかったです。


 ●『SF・異色短編』1巻
 
 夢があって無邪気で理屈抜きの楽しさがあふれた『ポコニャン』とは対極的な内容の1冊です。読者の精神に鋭く切り込んでくるようなハードな大人向け短編作品が詰まっています。今巻は、「ビッグコミック」系の雑誌で発表された作品を収録。(次巻も、引き続き「ビッグコミック」系の作品集)
 冒頭に収録された『ミノタウロスの皿』をはじめ、一話一話のクオリティが高く、読めば、カルチャーショックを受けたり、価値観を揺さぶられたり、人や社会の真実を突きつけられたような気持ちになったり、コクとキレのある濃密な物語に触れた充足感にひたれたりします。必ずしもハッピーエンドを迎えるわじゃなく、それぞれの作品が持つ独特の読後感に心が引きずられます。
 巻末の特別資料室には、各作品の予告イラストが掲載されています。『劇画・オバQ』の予告なんて、Qちゃんが実に楽しそうな表情で描かれているだけに、実際の『劇画・オバQ』の重いムードを思うと、その落差に痛ましい気持ちにすらなります。


 私は、これらの作品の多くを、中学生のとき、小学館のゴールデン・コミックス『異色短編集』で読んだのですが、そのときの鮮烈な衝撃や特殊な感銘は忘れがたいものがあります。このときの精神的体験が、その後私がずっと藤子ファンであり続けることの一つの要因になったような気がします。それほど、大きな体験でした。