トークライブ「知られざる痕跡本の世界」

 きのう(21日)、名古屋・今池の「得三」で「知られざる痕跡本の世界」が開催されました。
 
 前に当ブログで紹介した『痕跡本のすすめ』(太田出版)の著者・古沢和宏さんが、名古屋のフリーライター大竹敏之さん、得三の森田裕社長を聞き役として、痕跡本のディープな世界を語る!というイベントです。
 得山は、ステージの設置された居酒屋で、毎日ライブを行なっています。通常は音楽のライブなのですが、今回はトークライブでした。


 私は、愛知県犬山市在住の劇画家・土屋慎吾先生、友人2人といっしょのテーブルに座り、トークライブを観覧。「週刊ポスト」3月16日号の特集「エロ劇画の時代」で土屋先生が紹介されていたので、私はその本を持参し、それを見ながらいろいろとお話をうかがいました。
 
 一度聴いたら癖になるという古沢さんの暴走トークが、今回も炸裂。痕跡本をめぐる妄想をハイテンションでたたみかけながら、たびたび下ネタへと転がり出す…、そこに大竹さんたちがクールにツッコミを入れる展開がとても可笑しかったです。場内では、何度も笑いが起きました。


 このライブで古沢さんが取り上げた本は、グラビアアイドルのシールの貼られたW.アレンズ『人喰いの神話―人類学とカニバリズム―』(岩波書店)、「同性愛」「割礼」という特定の語のみに執拗にラインの引かれたベンクト・ダニエルソン『愛の島々』(新潮社)、扉ページに「我ガ愛スル書」と書きこまれた横光利一旅愁』など。
 カニバリズムをテーマにした本にグラビアアイドルのシールが貼られているなんて、たしかに、前の持ち主についてあれこれ想像したくなりますね(笑) 古沢さんが妄想を掻き立てられるのも、うなずけます。
 そのほかにも、『痕跡本のすすめ』に登場する本の実物を見ることができました。



 ライブは2部構成でした。
 2部になると、大竹敏之さんがメインの話者となり、この地方にある“痕跡スポット”を紹介するというコーナーに。大竹さんは、いわゆる珍スポットとかB級スポットを扱った本を出していて、そうした大竹さんの専門フィールドを、今回のテーマ「痕跡本」と結びつけて“痕跡スポット”という名称が誕生したわけです(笑)
 名古屋の小幡緑地公園は、自宅からあまり遠くないところにあるのですが、そのなかにあんな仏像があるなんて(笑)小幡緑地公園内にあるのに、その仏像もその土地も公園の所有物ではないというのは、なんともミステリーで心惹かれます。
 日進市五色園には、浅野祥雲が制作したコンクリート像が100体ほど立っているのですが、なかでも不思議度の高い像を紹介していくくだりも興味深かったです。
 
 会場で大竹さんの著書『名古屋の居酒屋』を購入。サインをいただきました。帯が本の上部に巻いてあって、のれん風になっているのが洒落ています。


 2部の後半だったか、古沢さんが皆で痕跡本の謎を解きましょう!と提案し、デュマの『三銃士』に、なぜかユーゴーの『ああ無情』の表紙がすっぽりとかぶさった本を取り出しました。
 古沢さんの妄想に、シマウマ書房の店主さんの博覧強記が加わることで、この本の謎が推理され、ある説に到達するくだりはスリリングでした。


 ライブの最後に、古沢さんが「客席のなかに、ここで紹介したい方がいます」と、土屋慎吾先生と私を観客の皆さんに紹介してくださいました。その場で立ち上がって観客にお辞儀をしたあと、「ステージにどうぞ」という言葉に促され、土屋先生といっしょに壇上で自己紹介させていただくことに。
 土屋先生がお話をされたあと、古沢さんが拙著『ドラえもんは物語る 藤子・F・不二雄が創造した世界』の書影をスクリーンに映し出してくださり、そのご厚意に甘えて宣伝させていただきました。


 ライブが終了すると、私の前著『藤子不二雄Aファンはここにいる』を読んだという青年が声をかけてきてくれました。「まさか稲垣さんがここに来ているとは思いませんでした!」と感動してくれているので恐縮してしまいましたが、終電の時間が来るまで熱く語り合って盛り上がりました。
 藤子関連のイベントならともかく、こうしたイベントの会場で私を知っている人がいらっしゃるとは思っていなかったので私も驚きました(笑)


 この会場は、お酒を飲みながら、飲んでいるお酒が切れたら追加注文しながらライブを観られるので、それも嬉しいです(笑)
 ライブの内容、皆さんとの会話、お店の雰囲気、どれをとっても満足のひとときでした。
 ありがとうございました!