藤子・F・不二雄大全集第3期第7回配本

 23日(金)、藤子・F・不二雄大全集第3期第7回配本の3冊が発売されました。


 
●『大長編ドラえもん』5巻
のび太と雲の王国』『のび太とブリキの迷宮』『のび太と夢幻三剣士』の3作が、カラーページを再現して収録されています。
のび太と雲の王国』は、天上世界に絶滅動物の保護州があったりして、そういう設定が現在公開中の映画『のび太と奇跡の島』のアイデア元になっていると思われます。
 自然保護のメッセージがかなり強く押し出された作品で、短編『ドラえもん』に登場したドンジャラ村のホイとその一族、モアとドードー、キー坊といったゲストキャラたちと再会できるという点でも印象深い一編です。
のび太とブリキの迷宮』は、この時期の大長編ドラえもんでは個人的にお気に入り度の高い作品です。
『雲の王国』や『ブリキの迷宮』では、ドラえもんが狂ったり壊れたりと、かなりひどい状態になっており、そういうところでちょっと重く切ない印象が残ります。
のび太と夢幻三剣士』に対しては、大長編ドラえもんシリーズの中でも一種独特の異色の読み味を感じます。そう感じるのは、夢の世界を冒険の舞台にしているからということもあるでしょうし、F先生が語っているように、もともと構想していた物語のゴールから実際のゴールが大きく外れてしまったことによる影響もあるのでしょう。


 
●『ウメ星デンカ』4巻(完結)
「よいこ」「幼稚園」「小学一年生」などで発表された幼年向けの話をオールカラーで収録しています(もとからモノクロ原稿の話は、もちろんモノクロ収録です)。しのだひでお先生が代筆した話もあります。
 不思議な道具を使った話が多く、これが『ドラえもん』につながっていくのだなあ、と強く実感できます。


 
●『T・Pぼん』3巻(完結)
 本巻の目玉はやはり、これまで単行本未収録だった「王妃ネフェルティティ」「ひすい珠の謎」の2話が収録されていることでしょう。これによって初めて『T・Pぼん』が単行本に全話完全収録されたことになります。
「王妃ネフェルティティ」は、単行本に収録される機会に恵まれなかったものの、将来単行本に収録されることを見越してF先生が原稿の修正作業を行なっていたのではないか…という話が以前から伝わってきていました。本巻を読むと、実際にF先生は原稿の修正作業を行なっていたことがわかりますが、それが作業途中のままになっているためここに収録することが難しく、結果、雑誌からの復刻となっています。つまり、今回収録されたのは修正された版ではなく、初出版とまったく同じ、というわけです。
 綿引勝美さんの解説は、F先生をインタビューした経験とご自身の豊富な知識をもとに書かれていて、まさに“解説”というたたずまいです。
 この解説の中で、F先生が『T・Pぼん』について「あと1本ほど描くとよいのですが…」と語っていたことが紹介されています。『T・Pぼん』は、F先生がまだ続けるつもりでいた作品の一つだったわけです。結果として最終話となった「ひすい珠の謎」の初出の最終コマの下には「次回の登場をお楽しみに!!」と記されており、雑誌側としても不定期掲載ながら『T・Pぼん』を続ける意向だったことがうかがえます。