『夢トンネル』発売!

 19日(金)、藤子不二雄A先生の『夢トンネル』(小学館クリエイティブ発行)が発売されました!
 
 ファンのあいだで「80年代藤子Aマンガの最高傑作!」との評価を得ながら、初出からおよそ30年経過して初の単行本化です。これは記念すべき出来事でしょう。
 http://natalie.mu/comic/news/88999

 
 1980年代はドラえもんブームに端を発した藤子ブームで盛り上がっていました。そんなブームの狂騒のなか、アニメ化されて脚光を浴びた藤子作品とは対照的に、『夢トンネル』はどちらかと言えばひっそりとサンケイ新聞で1年間連載され、その後単行本にもならないまま、隠れた作品と化してしまいました。
 これほどの名作が、新聞連載マンガという事情はあったにせよ、なぜ連載終了後ただちに単行本化されなかったのか実に不思議です。そう思えるほど、このマンガは面白いのです。
 80年代、90年代が終わり、世紀も変わって、ようやく2003年に京都漫画研究会から1000部限定・定価2500円で『夢トンネル』が復刻されたときは胸が躍ったものです。ただ、これは部数限定の同人本でした。
 それから10年が経過し、やっと、やっと、やっと、商業出版レベルの単行本化を果たすことになったのです。
 なんと長い道のりだったことでしょう。それだけに感無量です。


『夢トンネル』は、過去を体験することで現代の少年が成長していく、ファンタスティックな物語です。夢見ることの楽しさとほろ苦さが胸に刻まれます。
 少年が訪れる過去は、藤子A先生の名作『まんが道』や『少年時代』の舞台とイメージが重なります。藤子A先生の青少年期の実体験が色濃く投影されているという意味で、『夢トンネル』は、『まんが道』シリーズや『少年時代』と一括りにできる作品と見ることもできましょう。
 ですから、『愛…しりそめし頃に…』が完結したばかりのこのタイミングで『夢トンネル』を読めるというのも、まことに意味深く感慨深いものと思うのです。
 この一冊を買えば全話読めるという点でも、お薦めの作品です。
 知名度の低い作品であったぶん、今回の単行本化で多くの人に手にとってもらえることを願うばかりです。