20日(土)、「昭和30年代・トキワ荘のあった街」トークショーが、東京都豊島区の「区民ひろば富士見台」で開催されました。
講演者は、水野英子先生・よこたとくお先生・丸山昭さん。トキワ荘レジェンド3名がトキワ荘のあった街に集うという、なんとも豪華なトークショーです。
私は司会進行役(補佐)として先生方と同じステージに上がらせていただき、光栄の極みでした。
・先生方が登壇される前の様子
・受付の横で「少女クラブ」や「マーガレット」を展示。
午後3時ごろ、トークショーが始まりました。
先生方は、トキワ荘や椎名町のエピソードの数々を語ってくださいました。トキワ荘に入居した経緯、トキワ荘での生活サイクル、銭湯、喫茶店「エデン」、鈴木園、あけぼのハウスなどなど、興味深く楽しいエピソードが続々と披露されていきます。
石ノ森章太郎先生、赤塚不二夫先生、水野英子先生が合作のために名乗ったペンネーム「U・マイア」が誕生するまでの経緯も詳しく紹介されました。U・マイアは、水野先生がトキワ荘へ入居する理由そのものと言ってもよいものなので、「トキワ荘と水野先生」の話題となれば、やはり欠かせません。
・トーク中の先生方
これは、トキワ荘の先生方や担当編集者がよく通った喫茶店「エデン」にあったテーブルです。
トークショーのなかでエデンの話題がしきりに出てきました。それほどトキワ荘の先生方や編集者にとってエデンは思い出深い場所だったわけです。残念ながらエデンはもうありませんが、そこで使われていたテーブルやイスが保管されているのは大きな救いです。
ちなみに、今回のトークショーの会場となった「区民ひろば富士見台」は、もともと「あけぼの湯」「あけぼの荘(あけぼのハウス)」だった場所です。あけぼの湯はトキワ荘の漫画家が通った銭湯の一つで、『まんが道』に満賀道雄とテラさんがここへ入浴しに行く場面があります。あけぼの荘は、トキワ荘を出た石ノ森章太郎先生がお住まいになったアパート。そんな聖地でトークショーが開催されたわけです。
・区民ひろば富士見台
トークショーの終盤では、先生方がトキワ荘への深く熱い思いを語ってくださいました。先生方の言葉の一つ一つが胸に沁み入り、感銘をおぼえました。
とくに、水野先生が「トキワ荘のメンバーは決してライバルではありません。家族のようなものだったのです」ときっぱりとした口調でおっしゃったときは胸が熱くなって熱くなって…。「手塚先生が亡くなったことでマンガ界は中心を失った」という切なる言葉も心に迫ってきました。
よこた先生のほのぼの癒しトークや、丸さん節とでも言うべき丸山さんの語り芸もたまりません。
世界旅行に発つ石ノ森章太郎先生をご両親や仲間たちが見送りに来たときの集合写真など、貴重な資料の公開があったのもこのイベントの大きな魅力でした。
100名を超えるお客さんが詰めかけ、トークショー後のサイン会や物販も含めて大盛況となりました。水野先生が制作されたトキワ荘切手など売切れ品も出たようです。
・サイン会の様子
・販売された品の一部
じつに個人的なことになりますが、司会進行役が3人だったので、私は自分の存在が蛇足にならないか気がかりでした。今回のトークショーは、トキワ荘のあった街を盛り上げていく活動を地元住民の皆様に理解していただく…というのが主旨だったため、マンガ作品の細かい話などにはあまり立ち入らず、昭和30年代のトキワ荘・椎名町で先生方が体験されたエピソードを紹介するのが中心でした。そんななか私は、その主旨を充分にふまえたうえで、会場にいらしたマンガファンのお客さんに少しでも満足していただける話を先生方に振る役割をあえて選択しました。それがここにいる自分の役回りだろうと。
私の出番は少しでしたが、まあ、なんとかイベント全体の中の一つのアクセントになったのではないか…と思います(笑)
ちなみに、私が先生方に質問したのは、水野英子先生にとって初めての別冊ふろく作品『黄色いリボン』で描き直しを何度も命じられた件や、よこたとくお先生の『マーガレットちゃん』に登場する子どもたちが国際色豊かな件など。よこた先生の『ピタリちゃん』という作品にもちょっと触れました。
イベント後、水野英子先生、Kさん(同イベントの立役者の1人)と3ショット写真を撮っていただきました! うれしい〜!!
会場に足を運んでくださった皆様、ありがとうございました!
(拙著『ドラえもんは物語る』を会場に持ってきて、私にサインを頼んでくださったMさん、とっても光栄でした♪)
トークショー後、打ち上げにも参加させていただきました。
水野英子先生の代表作の一つ『ハニー・ハニーのすてきな冒険』の別冊ふろくを持参したので、先生にお見せしました。
この作品、読んでいると理屈抜きで心が明るくなってきて、大好きなんです。水野調と呼ばれる壮大な西欧ロマン『銀の花びら』『星のたてごと』『白いトロイカ』はもっと好きだし、『ファイヤー!』なども大傑作でたまらないし、もう少し短めの作品では『10月のセラフィ−ヌ』とか『にれ屋敷』などもお気に入りなのですが、そうしたシリアス系の作品に負けず劣らず『ハニー・ハニー』って読んでいて満足感のある作品なんです。
この別冊ふろく、裏表紙が着せ替えになっていて、いかにも少女雑誌のふろくという感じが素敵です。
昔のマンガ雑誌には、漫画家の住所がよく記載されていたのですが、この別冊ふろくには、雑司ヶ谷在住時代の水野先生のご住所が載っています。水野先生はそれをご覧になって「当時の住所を記録していなかったので、これをメモさせていただくわ」とおっしゃいました。自分が持ってきたものが先生のお役に立って光栄でした。
また、10年くらい前のイベントで、水野先生と藤子不二雄A先生のツーショット写真を撮ったことがあったので、その写真を水野先生に差し上げました。使い捨てカメラで撮影した画像の悪い写真でしたが、水野先生は「私は、藤子さんと2人の写真を持ってなかったんですよ」と喜んでくださいました。私も嬉しいです^^
先生方、トキワ荘通り協働プロジェクトの皆様、当日お会いした皆様、たいへんお世話になりました。貴重な機会をありがとうございました。