藤子Fマンガとアトランチス

 ブラジル沖合の大西洋海底に、かつて大陸のような大きな陸地があった痕跡が見つかった、というニュースが報じられています。はるか昔、海に沈んだとされる伝説の大陸「アトランティス」との関連が注目されているとのこと。
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130507/k10014398171000.html
 先月、海洋研究開発機構がブラジルの研究機関などと共同で、潜水調査船「しんかい6500」を使ってリオデジャネイロから南東におよそ1500キロ沖合の海底にある台地を調査。その結果、深さ900メートル余りの海底で岩の崖を発見し、その岩が陸上でしか組成されない花崗岩だったことが判明。その岩が、かつてこの場所に大陸があった強力な証拠になるというのです。きのう6日に発表された情報です。


 アトランティス大陸は“失われた古代大陸”とされる大陸の中でも最も知られたものの一つ。その大陸上では高度な文明が栄えいていたのですが、大地震によって壊滅し、それにともなう大洪水で海の底に沈んだと伝えられています。その存在の有無をはじめ、もし存在したとすればどこにあったのか…など諸説あります。


 アトランティス大陸のことを初めて書き記したのは、古代ギリシアの哲学者プラトンです。プラトンが書き記した内容は、ギリシアの賢人ソロンがエジプトへ行ったさい神官から聞いた話。その話をのちになって伝え聞いたプラトンが、自分の著書『ティマイオス』『クリティアス』の2冊に書きとめたのです。


 アトランティスの建国神話には、有名なギリシア神話の神ポセイドンが登場します。ギリシアの神々はそれぞれ自分にふさわしい土地を手にしてよい、という習わしがありました。その習わしにしたがって、海神ポセイドンはアトランティスを手に入れました。ポセイドンは原住民の娘クレイトオと結ばれ、やがて5組の双生児が生まれます。その中の最年長の子をこの国の初代王として、「アトラス」と命名。その名にあやかってこの大陸や国家や海洋が「アトランティス」と呼ばれるようになった、ということです。(参考文献:『アトランティス大陸の謎』金子史朗、講談社現代新書、1973年)


 リンク先の記事で少し触れられているとおり、「アトランティス」は大長編ドラえもんのび太の海底鬼岩城』に登場します。作中では「アトランチス」という表記です。
 このアトランチス、もともと地上にあった国が海底に沈んだのではなく、はじめから大西洋の海底にあった、という設定です。太平洋にあるムーと激しく争って新兵器の鬼角弾(核ミサイルみたいな兵器)を開発したのですが、核実験の失敗で自国が滅びる羽目に。しかし国は滅びても鬼角弾の自動報復システムが残っていて、敵から攻撃を受けたと感知したらすぐに反撃できるようになっています。鬼岩城の中にあるポセイドンは、そのためのコンピューターです。


 藤子・F・不二雄先生のマンガには、ほかにも「アトランチス」の出てくる作品があります。

●『海の王子』の「海神ポセイドンの謎」:深海探検を行なった海の王子たちが、壊れた潜航艇を発見し引き上げます。その艇内に生き残っていたアポロという少年は、伝説の国アトランチス大陸の王子でした。アトランチス大陸は何千年も昔、地震と洪水で滅びたはずですが、大災害が起こると予言した科学者がいて、その科学者のつくった防水建築のおかげで命の助かった人々がいました。その人々が海底での生活を始め、やがてその子孫たちは海底で生きられる身体へと適応していったのでした。アトランチスの守り神として、海神ポセイドンが登場。反乱軍の手に落ちたポセイドンは、海の王子たちと戦うことになります。
 この話は、藤子Fマンガ史においては『のび太の海底鬼岩代』のルーツの一つにあたります。


●『海底人間メバル』:主人公の少年メバルが暮らす海底国の都が「アトランチス」といいます。この海底国は、自分らが栄えるために、地上の街を海に沈没させ領土を広げる作戦を実行します。


大長編ドラえもんのび太と夢幻三剣士』:ちょっとした登場でしかありませんが、この作品に出てくるひみつ道具“気ままに夢見る機”の夢カセット集の内の一つに『アトランチス最後の日』というタイトルのものがあります。このカセットと使うと、「伝説の大陸アトランチスが海底に沈んだとき、主人公の少年が王女さまを助け、やがて新しい王国を作る…」という夢を見られます。