氷見・高岡の旅(その7)「まんが道ゆかりの地(1)」

 藤子不二雄A先生の自伝的マンガ『まんが道』のあすなろ編から青雲編の途中までは、高岡を主舞台に物語が展開されます。ですから、劇中には高岡のいろいろなスポットが登場します。
 そんな、高岡市内の『まんが道』ゆかりの地をレポートしようと思うわけですが、今回はそのなかでも最も象徴的で印象深いスポットである高岡大仏と高岡古城公園を取り上げます。


●高岡大仏
 
 高岡大仏に到着。奈良・鎌倉の大仏と並び“日本三大大仏”のひとつと言われます。(奈良・鎌倉のほかにどの大仏を日本三大大仏とするかは諸説あるようです)


 
 『まんが道』の高岡を主舞台にしたパートでは、この大仏が町のシンボル的な光景としてたびたび登場します。とくに読者の脳裏に強烈なインパクトを残すのは、満賀道雄の憧れのマドンナ霧野涼子さんのキスシーンのくだりでしょう。高岡大仏の前で涼子さんと見知らぬ男がキスするところを目撃した満賀は、激しいショックを受けながらも「おれの恋人はまんがや!!」と叫んで机に向かいます。涼子さんのキスシーンを見た衝撃と、「おれの恋人はまんがや!」という名言に触れた感動。この場面では、そんな強い心の動きが読者にもたらされます。
 立志編の最終コマにも高岡大仏が登場します。高校卒業後就職したものの会社を一日で辞めた才野が、満賀に「おれは会社をやめてまんがに専念するけど おまえは 会社やめないでほしいんだ!」と頼みます。そして二人は、高岡大仏の前で「これからは しばらくふたり別べつにまわり道をすることになるけど 近いうちに きっとまた同じまんが道にもどるようがんばろうぜ!」と誓い合ったのです。





 
 アジサイ越しに見上げた高岡大仏。


 
 背後も神々しいです!
 高岡大仏の背中には円輪光背がついていて、『まんが道』でもこの光背が見られますが、これが高岡大仏に取りつけられたのは1958年のことなので、『まんが道』の舞台となった時代にはまだ光背はなかったことになります。『まんが道』で描かれた光背は、高岡大仏らしさを演出するためのフィクションなのです。



高岡古城公園
まんが道』の高岡を舞台にしたパートで、満賀道雄才野茂がことあるたびに足を運んだのが高岡古城公園です。そもそも、この公園は彼らの学校の帰り道にあったため、二人は毎日のように通っていました。
まんが道』で高岡古城公園はこんなふうに紹介されています。
「慶長年間、前田利家が築城した旧城跡を、そのまま公園にしたもので、昔のおもかげがしのばれる静かな公園である……。」


 
 高岡古城公園のなかでも『まんが道』において最も聖地的なスポットが二つ山です。正式には卯辰山といいます。
 満賀と才野が手塚治虫先生の『新宝島』と初遭遇したのが、この場所でした。二つ山で巨漢・激河大介が『新宝島』の単行本を顔にかぶせて寝ているところに、満賀と才野がやってきました。激河大介に無断で『新宝島』を読んだ二人は、目もくらむようなショックを受けるのです。
 手塚先生から直筆のハガキが届く…、「毎日小学生新聞」で自分らの作品が連載されていることを知る…、二人で作成した肉筆回覧誌が完成する…、といった記念すべきことがあったとき満賀と才野が訪れるのも、この二つ山でした。
 そして、何と言ってもこの地は、満賀と才野が「まんが家になろう!!」と誓い合った場所であるのです。


 
まんが道』では、満賀と才野が一冊の本を二人で同時に読むシーンが何度か描かれます。その素敵な行為を、二つ山で再現してみました(笑)


 
 高岡古城公園内にある射水神社です。満賀と才野は、毎年元日の明け方ここへ初詣に出かけることにしていました。
 また、上京して1年半後に帰省したときも、二人はここでお参りしました。おみくじを引くと「大凶」…。その不吉な占いが当たってしまうことになります。


 
 護国神社の忠魂碑。この碑は『まんが道』に何度かちらりと出てきますが、私の記憶に最も強く残っているのは、満賀と竹葉美子さんが古城公園でデートする場面です。二人のデートシーンを目撃した才野は、とっさに駆け出して、その場から逃げてしまいます。その才野の逃走場面のすぐあとに、この忠魂碑が描写されるのです。


 
 二つ山の真下にある相撲場。青雲編の「訪問者」の回に出てくるスポットです。『三人きょうだいとにんげん砲弾』が、満賀と才野にとって初めての別冊付録となりました。二人はこの相撲場で相撲をとったあと、別冊付録のページを開いて喜びを確かめ合います。


 
 満賀が弟の鉄郎と野球遊びをしたと思われる広場です。満賀が打者のときは弟に簡単に打ちとられ、満賀が投手になると弟はホームランをかっ飛ばします。


 
 この風景は、作中に何度か出てきます。たとえば、立志編「徹夜」の見開きトビラとか。


 高岡古城公園は、『まんが道』ゆかりの地のほかにも動物園など見どころがあって、憩いのひとときをすごせます。


 (氷見・高岡の旅(その8)に続く)
 http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20130726