氷見・高岡の旅(その8)「まんが道ゆかりの地(2)」

 前回は、高岡に数ある『まんが道』ゆかりの地のうち、高岡大仏と高岡古城公園にしぼってレポートしてみました。今回は、それ以外の高岡『まんが道』ゆかりの地を取り上げてみます。


 
 文苑堂書店。満賀道雄才野茂が手塚漫画の単行本や漫画雑誌などを買うためよく通った書店です。この書店の店主は、タコに似た顔が個性的で、満賀と才野の“まんが道”を応援してくれる、人情味のある人物でした。二人が興味を持ちそうな雑誌や手塚漫画の新刊などが入荷すると親切に教えてくれたり、二人が何を目的に来店したかズバリ言い当てたり、といったことが日常的にありました。二人の投稿作品が雑誌に掲載されると、その雑誌をお祝いにプレゼントしてくれたこともありました。二人が少年雑誌デビューしたときは、「郷土の生んだまんが家足塚茂道の作品「冒険王」に掲載さる!」と店の表に貼り出そうと喜んでくれました。そんなふうに、なにかと粋なはからいをしてくれたのです。
 建物や経営者などは『まんが道』で描かれた時代とは変わっていますが、現在も営業しているのはじつにすばらしいことです。


 
 
 現在の文苑堂書店では、こうしてドラえもん・藤子本のコーナーが1階入口の近辺に設けられています。
 
 ドラえもん・藤子本コーナーの上には、藤子両先生の直筆色紙が!
 
 直筆色紙のアップ!!
 
 藤子本コーナーに私の著書も並んでいて感激(涙)



 
 高岡郵便局。満賀と才野は、漫画の原稿をこの郵便局の窓口から「第五種の速達」で出していました。大人向け雑誌に投稿して獲得した稿料を貯金していたのも、この郵便局でした。二人で作った貯金通帳の口座番号は「いなろ 2586」、名義は「足塚シゲミチ」。
 この郵便局の窓口にいるおじさんも、出番はわずかでしたが忘れがたい登場人物です。満賀と才野が持ってきた封筒の中身を尋ねたおじさんは、二人が「まんがです」と答えると、「えっ まんが!?」ときょとんとした反応を見せます。後日二人がまた漫画の原稿を持ってきたと思って「やあ きみたち またまんがの原稿出しにきたね」と言うと、今度は二人から「貯金にきたんです」と返され、おじさんは「貯金?」と再びきょとんとした反応を見せるのです。その二度のきょとん顔が私には印象的です。 

 
 高岡郵便局は、なかなか大きなビルです。



 
 定塚小学校。満賀と才野が出会った重要な場所です。ここから二人三脚の“まんが道”が始まったのですから!


 
 高岡高校。満賀と才野が通った学校です。あすなろ編に「昭和24年4月、満賀道雄才野茂は、ともに県立高岡高校へとすすんだ!」とあります。
 別々のクラスになった二人は、放課後校門で待ち合わせ帰宅していました。満賀にとって学校は決して楽しいところではなく、才野との帰宅が満賀の学校生活のなかで最も楽しい時間だった、とのナレーションがありますが、その後満賀はマドンナ霧野涼子さんとコミュニケーションがとれるようになったので学校生活が俄然楽しくなったことでしょう。立志編では、この学校内で起きた様々なエピソードが描かれています。武藤という嫌な同級生も登場します。
 実際に高岡高校へ通っていたのは安孫子先生だけで、藤本先生は、当時高岡高校の隣にあった高岡工芸高校の生徒でした。現在は高岡高校が別の場所に移ったため(すぐ近所ですが)両校は隣合っていません。


 
「養順湯」の跡地。養順湯は、満賀がよく利用していた銭湯です。今は焼肉屋ですが、「ようじゅんとう」と名を残しています。
 
 満賀は銭湯のペンキ絵が大好きで、とくに養順湯のペンキ絵がお気に入りでした。富士山と三保の松原駿河湾と帆かけ船、という構図がなんともいえず好きだったのです。湯につかりながら妄想を楽しんだり、女湯を覗いた犯人に間違われたり、といった出来事もありました。



 
 立志編「期待と不安」の回で、「満賀道雄の母は、伯父の経営する喫茶店に勤めていた」と紹介されます。作中に喫茶店の描写や店名などは出てきませんが、実際に安孫子先生のお母様が勤めていた喫茶店がこの「ピジョン」です。私がこの店を初めて訪れたときは2階で喫茶店を営業しており、コーヒーを飲んだ記憶がありますが、今は喫茶店はなく、1階の洋服店のみ営業しています。
 満賀の母は、この喫茶店から売れ残りのケーキやシュークリーム、古くなったアメリカ雑誌などをおみやげに持って帰ってくれました。なかでも特に満賀が楽しみにしていたおみやげは、アメリカ雑誌「コリアーズ」です。この雑誌には漫画が多く載っていて、気に入ったものがあると切り抜いて「外国漫画傑作選」と名づけたスクラップブックに貼っていました。


 
 山町筋の「志甫商店」。山町筋は、土蔵造りと呼ばれる古い町並みの通りです。志甫商店は、立志編「ときめきの雪」の見開きトビラに大きく登場しています。建物は建て替えられています。


 
 山町筋にある薬屋。あすなろ編にこの建物をモデルにした情景が出てきます。看板の文字がちょっと異なっていますが。



 (氷見・高岡の旅(その9)に続く)
 http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20130808