羽海野チカ原画展レポート

 前回の記事で、東京都現代美術館で開催中の「手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから」をレポートしましたが、7月下旬には、このほか2つの漫画家原画展に行ったので(直接的には藤子先生と関係ありませんが)、それも合わせてレポートしてみます。
 どちらも名古屋で開催してくれて、じつにありがたかったです。



 まず、名古屋栄三越で開催された「羽海野チカ原画展〜ハチミツとライオン〜」!
 
 

会期:7月24日(水)〜8月5日(月)
会場:名古屋栄三越7階催物会場
開場時間:午前10時〜午後7時30分(8時閉場)
※最終日は午後5時30まで(6時閉場)

 
 入場口のところでオマケの『3月のライオン』ポストカードを手渡されました。じつにかわいらしい図柄!
 入場するとすぐ、実寸大のウミノクマぬいぐるみがお出迎えしてくれました。このウミノクマが今にも動き出しそうで、羽海野さんがこの中に入っているんじゃないかと妄想したくなるほど。羽海野さん直筆の挨拶文も貼ってありました。来場したお客さんへの感謝の言葉とともに、お客さんの体調を気遣う文面が添えられていて、もうこの時点で羽海野さんの人柄に心打たれました。


ハチミツとクローバー』『3月のライオン』の原画を中心に、羽海野さんが中高生のころ描いた絵(中二病の部屋だそうです・笑)、アイデアノート、仕事道具、羽海野さんお気に入りの小物、手づくりのセーターなどなど、さまざまなものが展示されていました。
 数々の原画の美しさには、ひたすらうっとりするばかり。扉絵、表紙絵、予告イラストといった1枚絵のカラー原画が多かったです(特に『ハチクロ』の原画はカラーが中心でした)。
 原画を観ていると、作品を読んだときの記憶(というか感情)がところどころで蘇って、そのたびに目がうるんできそうでした。たまんない気持ちになります^^
ハチクロ』の単行本未収録エピソード「一平さんの結婚」の原画が一話分まるまる展示してありました。このコーナーは、31日から「あゆちゃんと野宮さん」に展示替えされました。


 作中に登場した品々を実物化したものが随所にさりげなく展示してあって、とくに竹本くんが自分探しの旅で漕いだボロボロのママチャリは細かいところまで見入ってしまいました。はぐちゃんが竹本くんに渡したあのサンドイッチの包みもありました! これを見ちゃうと胸に熱いものが込み上げてくるじゃないですか(涙)


 アイデアノートを公開するコーナーでは、羽海野さんのストーリー構築方法が具体的に解説されていて、その念入りな作業行程に圧倒されました。1枚の用紙を鉛筆の線で8分割し、その8分割を8ページ分(4見開き分)の画面に見立てて物語を組み立てていく、という羽海野さん独自の方法です。1つの話を仕上げるまでに、その8分割紙面を何度も繰り返し描いて物語をブラッシュアップしながら最終的なネームにしていくのです。
 1枚の紙を8分割して8ページ分に見立てるという点だけに注目すれば、ノート1ページを8分割して話を構成していた藤子・F・不二雄先生の創作方法と印象が重なります。


 羽海野さんが『3月のライオン』のロケハンで撮影した風景写真がたくさんランダムに貼ってある壁がありました。風景写真とそれを元に描いた原画を対比して見せてくれる展示もありました。こういうのを眺めていると、零くんや三姉妹が住んでいる街のモデルとなった月島のあたりを巡礼してみたくなってきます。羽海野ファンの方、いっしょに巡礼しましょう(笑)


 漫画家、作家、棋士といった著名人の方々から贈られた直筆色紙も楽しめました。原画展開催を祝福するメッセージやイラストが描かれているのです。私の大好きな作家・辻村深月さんの色紙もありました! 辻村さんは、羽海野さんの「この原画展は私にとって、見にきたみなさんの背中を熱く見つめる“背中展”でもあるのです」という発言を引きながら、お祝いメッセージを綴っておいででした。


 会場限定グッズは以下のものを購入。
 
 ウミノクマのマスコットぬいぐるみ。見つけた瞬間「買いだ〜!」と思った品です。
 
 はぐちゃんのラバーストラップ。何らかのはぐちゃんグッズが欲しかったのです。
 
 ポストカード名古屋バージョン。
 
 どこが名古屋バージョンかといえば、この部分が名古屋なのです(笑)



 心晴れやかになり、胸がジーンとして、さわやかに満ち足りた気分を味わえる。そんな素敵な素敵な原画展でした。
 とても居心地がよくて、また訪れたいなあ、と思いました。
 その気持ちに素直になって、数日後再び足を運んでみました。原画を観に行ったという以上に、はぐちゃんや零くんやみんなにまた会いに行った!という気分です。


 前回も少しグッズを買いましたが、このときはウミノクマのコースターと『3月のライオン』クリアファイルを追加購入。
 
 

 9月27日から始まる「一番くじ 羽海野チカの部屋〜3月のライオン〜」も気になります!
 http://getnews.jp/archives/384789



羽海野チカ原画展」会場の栄三越から程近い松坂屋美術館で「鳥山明 The World of DRAGON BALL」が開催されていたので、そちらにも行ってみました。

会期:2013年 7月27日(土)〜 9月1日(日)
会場:松坂屋美術館
開場時間:10時〜19時30分 但し、8月22日(木)、最終日9月1日(日)は18時閉館)
(いずれも入館は閉館30分前まで)

 
 入場すると、まず『ドラゴンボール』に登場する500あまりのキャラクターを紹介したパネルと、劇中の出来事を羅列した年表パネルが立っていました。これが相当な情報量で、ちゃんと読んでいるとかなり時間がかかりそうでした。
 そして、同展のメインといえる「原画ギャラリー」のコーナーへ足を踏み入れます! 第1話全ページの原画から始まり、いろいろな名場面やバトル場面の原稿が展示してありました。きれいで丁寧で、鳥山先生の並はずれた画力を直筆で味わえる幸せを感じました。


 鳥山作品だと私は『Dr.スランプ』世代でして、『ドラゴンボール』よりもずっと『Dr.スランプ』に愛着があります。そのためか『ドラゴンボール』でも初期(1980年代後半くらい)の絵柄が特に好きなのです。キャラクターが魅力的なのはもちろん、緻密かつお洒落に描かれたメカもまたとんでもなく素敵です。高度な画力と万人に愛される画風が相まって、鳥山絵の無双状態をまのあたりにした感覚です。


 鳥山先生と野沢雅子さんの対談映像が流れていました。鳥山先生は相変わらず顔出ししていません(笑)
 鳥山先生は「野沢さんの演じる悟空の声を初めて聞いたとき、悟空ってこんな声だったんだろうなあ、と思った。それ以来、悟空の声は野沢さん以外考えられない。野沢さんの声が自分のなかで普通になっている」といった意味のことを語っていました。
 これを聞いて、藤子F先生が大山のぶ代さんの声について語った言葉に近いなあ、と感じました。F先生が初めてアニメ『ドラえもん』の録音スタジオを訪れたときのことです。大山さんが自分の演技について「先生、あのー、私、あれでいいんでしょうか」と訊くと、F先生は「ドラえもんって、ああいう声だったんですねえ」と答えたのです。大山さんの喜びは大きなものでした。役者冥利につきる言葉だったようです。
 
 売店ではパンフレットを購入。


●藤子関連情報
藤子不二雄ファンサークルマガジン「Neo Utopia」第53号が夏のコミックマーケット(8月10日(土)西2ホール・せ05a)で販売されます。AFG総選挙(藤子ヒロインの人気投票企画)の結果大発表のほか、藤子関連の情報とファンの熱気がぎっしり詰め込まれた渾身の一冊です。
 http://neo-utopia-net.blogspot.jp/search/label/


日本郵便が「藤子・F・不二雄 生誕80周年記念イベント at KITTE」をJPタワー商業施設「KITTE(キッテ)」で開催します。期間は、8月12日から9月1日まで。初日には、ドラえもんが1日局長に就任する模様。
http://kirei.biglobe.ne.jp/news/detail/20130806194349_esr20130806_462276