『魔法のつえ』と『愛ぬすびと』届く!

 復刊ドットコムから藤子関連の復刊本が2冊同梱で届きました!
   
 ジョン・バッカン『魔法のつえ』と、藤子不二雄A『愛ぬすびと』です。
 Amazonを見ると『魔法のつえ』が10月16日、『愛ぬすびと』が10月23日発売とあるのですが、18日の時点で両方とも届きました。



 ジョン・バッカンの『魔法のつえ』は、2人の藤子先生が子どものころ愛読した童話です。『ドラえもん』はじめ藤子マンガの代表作にも大きな影響を及ぼしていると言われ、この復刊本の帯および巻末解説では、A先生が思い出を語っています。
 ダイレクトな帯コメントがそそります。
 
「僕も藤本くんも、夢中になって読んだ本!」


 
 F先生はあるインタビューで、ご自身の幼少期のSF体験の始まりとして『魔法のつえ』を挙げています。それほどまでに藤子マンガの原点といえる作品なのです。
 じっさいにこの童話を読んでみると、幼少期の藤子両先生の空想ゴコロがビシビシ刺激された理由がわかる気がします。
『魔法のつえ』で描かれる不思議現象は、『ドラえもん』のどこでもドアや『エスパー魔美』のテレポーテーションに通ずるもので、その不思議現象を活用しながら普通の少年が冒険を繰り広げ、話の途中で不思議現象の謂われが語られる……、そんなところに藤子Fマンガのすこしふしぎ精神を感じ取れるのです。とりわけ『魔法のつえ』の全体的な構造は、大長編ドラえもんを思い起こさせます。



 A先生は、『魔法のつえ』の、少年が遠い世界へ出かけて戻ってくる設定を面白いと感じ、その設定が「(藤子マンガでよく見られる)あっちから変な奴が来るという設定のパターン」の元になっている、と述べています。『魔法のつえ』は“こっちの少年があっちの世界へ行く”という設定なのですが、それをひねって“あっちの世界から変な奴がこっちへ来る”としたものが藤子マンガの王道設定、というわけです。『オバケのQ太郎』も『忍者ハットリくん』も『怪物くん』も『ウメ星デンカ』も『ビリ犬』も『ドラえもん』も『ウルトラB』も『チンプイ』も、その他いくつもの藤子マンガがこのパターンを踏んでいますから、『魔法のつえ』が藤子マンガに及ぼした影響の絶大さがわかります。
 
 ・『魔法のつえ』の底本(講談社、1951年)と復刊本(復刊ドットコム、2013年)。



『愛ぬすびと』は、結婚詐欺師の青年・愛誠を主人公とし、彼が出会った幾人もの女性たちとの関係を通して、男女の、人間の愛のありようを濃やかな筆致で描いています。
 これが3度目の単行本化。
 
 左から、小学館版(1978年)、中央公論社版(1996年)、復刊ドットコム版(2013年)です。だんだん本のサイズが大きくなっています。
 中央公論社版では伊集院静さんが解説を書いていましたが、復刊ドットコム版は山田太一さんです。山田さんは映画『少年時代』の脚本を手がけた関係ですね。



『愛ぬすびと』は1973年に女性向け週刊誌「女性セブン」で連載されました。A先生によると、それまで同誌には園山俊二先生が描くようなギャグマンガは載っていたのですが、いわゆるコミックとか劇画といったものは本作が初めてだったそうです。当時30代のオールドミスを狙った結婚詐欺が流行っており、それを調べて描いたとのこと。
『愛ぬすびと』連載終了後、「女性セブン」からまた描いてくれと言われ『愛たずねびと』を連載。その後、愛シリーズ3部作として『愛かりうど』も構想していたのですが、忙しさのため実現できなかったそうです。



『愛ぬすびと』は、挑戦的なテーマを扱い、1話1話が読み応えのあるドラマになっていて、物語全体(単行本1冊)の完成度が高く、人物の絵や構図やコマ割りが意欲的で、読んでいて実に面白く、そのうえ愛や人生について考えさせられもする、すばらしい作品です。
 この復刊を機に、多くの人に読まれることを願います。