かなざわアニメフェスタ2013

 1週間前のことになりますが、10日(日)、石川県金沢市で開催された「かなざわアニメフェスタ2013」に行ってきました。
 


 目当ては、2つの講演。
 1つ目は、鈴木伸一先生はじめ10名のアニメ作家で構成された、おそらく世界最高齢のアニメーション制作集団「G9+1(ジーナイン・プラスワン」のトークショー
 2つ目は、赤塚不二夫先生のご長女りえ子さんと『天才バカボン』の担当編集者だった五十嵐隆夫さんの対談です。
 


 金沢を訪れるのは20年以上ぶり。天気予報では荒れ模様とのことでしたが、幸い平凡な雨降りですみました。


 金沢に到着して真っ先にトークショーの会場「金沢学生のまち市民交流館」へ足を運ぶと、ちょうど車から赤塚りえ子さんはじめフジオ・プロの方々が降りてこられたところで、りえ子さんのほうから声をかけてくださいました。
 
 いったんりえ子さんたちと別れ、待ち合わせをしていた友人たちと合流。館内で開催されていた「赤塚不二夫展」を観ながらトークショーの開始を待ちました。
「赤塚不二雄展」は小規模な展示でしたが、代表的な赤塚マンガの複製原画を中心に、写真パネルや単行本など要所を押さえた品で構成されていました。トキワ荘の精密模型もありました。



 そうして、午後1時から「G9+1」のトークショーがスタート! 
 G9+1のメンバーは総勢10名なのですが、今回は8名が出席。お名前を挙げていくと、鈴木伸一福島治、きらけいぞう、大井文雄、一色あづる、古川タクひこねのりお、和田敏克といった顔ぶれになります。都合で欠席したのは、西村緋祿司、島村達雄のお二方。
 
 G9+1が制作したアニメ作品を上映しながら、その合間に作品の解説的なトークが和気あいあいと展開されました。
 G9+1は「年寄りが馬鹿なことをやろう」という感じで集まったもので、2年に1度くらい新作の上映展をおこなっているそうです。現時点での最新作『tokyo未完成』のなかで鈴木伸一先生が担当した短編アニメ『テレビアニメ50年…』は、壁に「原発反対」や「この世の終わりは近い!!」といったポスターの貼られた路地を鈴木先生(≒小池さん)がトボトボと歩くなか、アトムやパーマン1号・2号、喪黒福造などのアニメキャラクターとおぼしきシルエットがいくつも横切る作品でした。やっぱり、そういうのを見ると胸がときめきます。


 少しの休憩を挟み、赤塚りえ子さんと五十嵐隆夫さんのトークショーが午後2時半ごろから始まりました。途中から、G9+1のメンバーで赤塚先生と親交のあった鈴木先生、きらさん、古川さんも参加して、おおいに盛り上がりました。
 
 五十嵐さんは、『天才バカボン』の作中に「イガラシ記者」として登場する講談社の名物編集者で、赤塚先生や小学館武居俊樹記者らとの付き合いのなかで数々の面白い逸話を残しています。そんな逸話が披露されるたびに、会場内が笑いに包まれました。


・「少年マガジン」の編集長の頭を靴で殴れ、と赤塚先生から命じられた。自分の上司を殴る謂われはないけれど、やらないと『天才バカボン』の連載をやめる、先生からと脅されて実行した。編集長の頭を殴った瞬間、赤塚先生が「俺が頼んだんです。すみません」と土下座してフォローしてくれた。
・赤塚先生から「缶詰」(軟禁状態で執筆に集中すること)をしたいと言われた。希望の場所が、よりによって帝国ホテル。赤塚先生の部屋だけじゃなく、アシスタントの家族や編集者の部屋も必要だった。赤塚先生は仕事をしているように見えないし、経費が気になるし(笑)。でも先生は頭の中でちゃんとアイデアを生み出していたようで、缶詰が終わってから原稿を仕上げてくれた。
・新宿歌舞伎町の大規模キャバレー「サクラメント」でフジオ・プロの忘年会をやった。フジテレビからコスチュームを借りたりして一晩で大金が飛んだ。(そのとき五十嵐さんはマッカーサーの仮装をしたそうです)
・赤塚先生はハワイ旅行に行ってもどこへ行ってもやることは同じで、宴会ばかりしていた。



 こうした逸話は、すでにいろいろなところで語られているのですが、五十嵐さんご本人の口から聞くと、その話術の巧みさもあってホットな臨場感が醸しだされ、可笑しさが倍増です。



 きらけいぞうさんはスタジオゼロのスタッフだったので、同じ市川ビル内にプロダクションを置いていた赤塚先生と帰り際などに遭遇し、飲みに誘われることもあったとか。そのさい、きらさんが「仕事場の鍵をかけてきます」と言うと、赤塚先生は「そんなことしなくてもいい!」。せっかく盛り上がっている気分を、酒場に着くまで途切れさせたくない赤塚先生は、鍵をかけに行かれることで、シラけた瞬間が少しでも訪れるのが嫌だったのです。


 鈴木伸一先生は、亡くなった赤塚先生が火葬されているとき五十嵐記者と武居記者に挟まれる状態でテーブルに座り、2人の掛け合いがあまりにも面白くて、笑いだしそうだったとか。鈴木先生がニコニコしながら「彼(赤塚先生)が焼かれてるの最中なのに可笑しくってねえ(笑)」とおっしゃったところで、私も可笑しくなって噴き出してしまいました。


 そうやって大いに笑わせてもらいながら、皆さんの言葉の端々から、赤塚先生の天才性と、破天荒に見えながら細やかな気配りの人であったことが浮かび上がり、何かジーンとするものが胸に残りました。


 トークイベント終了後、赤塚りえ子さんのご著書『バカボンのパパよりバカなパパ』に、りえ子さんと五十嵐さんからサインをいただきました!
 
 
 ありがとうございます!!!


 それから、この日は金沢在住のIさんにたいへんお世話になりました。深謝です。