藤子・F・不二雄大全集『ロケットけんちゃん』3巻

 24日(金)、藤子・F・不二雄大全集第4期第12回配本『ロケットけんちゃん』3巻が発売されました。
 
「小学三年生」で発表された作品が完全収録されており、これが『ロケットけんちゃん』の完結巻になります。解説は、すがやみつる先生。
まぼろし王国の秘密」「ゴルゴンののろい」といった話は、不思議な出来事の謎を合理的に解き明かすミステリー的な要素が色濃く、読み応えがありました。
 当ブログで以前、藤子Fマンガの中の「反重力」「反引力」に着目したことがありますが、今巻には「引力を消す薬」という話が収録されています。http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20131111



まぼろし王国の秘密」に“フエール銀行”という銀行名が出てきます。この名を見れば、どうしたって『ドラえもん』に登場する同名のひみつ道具を思い出してしまいます。『ドラえもん』のフエール銀行って、お金を預けると1時間ごとに1割の利子がつくシステムですから、つくづくとんでもない高利率の金融機関だなあと思います。お金を預かるばかりじゃなく貸し出しも行っており、その場合は1時間ごとに2割の利息ですから、おそろしき超高利貸しです。いったんフエール銀行からお金を借りてしまったら、返済は至難のわざ。預金も借金もおおいに増えるのがフエール銀行なのです(笑)
ドラえもん』「フエール銀行」の作中で、こんな説明がなされます。(1時間に1割の利子がつくと)「十円が一時間後には十一円になる(中略)一週間あずけっぱなしだと、九千万円くらいになるんだよ」――。
 この説明によって、わずかな数値が短い期間に途方もなく増えていくことがわかり、驚きがもたらされます。『ドラえもん』でその類の驚きを味わえる最たる話が「バイバイン」ですね。栗まんじゅうが「始めの五分で一つが二つになって(中略)二時間で、千六百七十七万七千二百十六、それからわずか十五分で、一億個をこすんだよ」「それこそ一日で地球がくりまんじゅうの底にうまってしまう」という具合です。
「フエール銀行」も「バイバイン」も、始めのころの数字だけ見ると「大したことないなあ」と感じられるものが、案外短い期間のうちに膨大な数字に増えていく事実を突き付けてきます…。その事実に知的な驚きを与えられるのです。