映画『ドラえもん 新・のび太の大魔境〜ペコと5人の探検隊〜』感想

 今月8日(土)から、映画ドラえもん『新・のび太の大魔境〜ペコと5人の探検隊〜』が公開されています。
 私は先月試写会で観たあと、公開初日にドラえもん好きの仲間たち7人と再び鑑賞しました。このときは、下は高校生の女子から上は40代の男性(私)までが名古屋に集まって盛り上がりました。
 以下、映画の感想を綴っていきます。内容に触れますから、未見の方はご注意ください。


 
 ・前売券

 
 ・劇場ポスター

 
 ・パンフレット


 今年の映画ドラえもんは『のび太の大魔境』のリメイクということで、どんな新要素を加えてくるのだろうか…と思っていましたが、じっさいに観てみると、大きな改変や目立った新要素はなく、「原作に忠実であろう」という姿勢がはっきりと見て取れる作品に仕上がっていました。(細かいことを言えば、原作との違いはいろいろとありますが)
 尖ったところ・斬新な試みは少ないけれど、丁寧な安定感があり、バランスの取れた原作リスペクトがあって、好感が持てました。丁寧なあまり、物語のテンポが犠牲にされるところが若干あったような気がしますが、全体的には好印象です。


 これまでの映画ドラえもんのなかでも原作への忠誠度は最高レベルでした。原作の完全コピーをやらねばという凝り固まった忠誠心ではなく、原作の行間を掘り下げていくような、原作で足りなかった分をほどほどに補っていくような、柔軟で創造的な忠誠心だと感じました。
「原作に忠実」な映画化に対して、単純にわければ以下の二つの意見が出ると思います。


・原作通りにやってくれて嬉しい、という肯定的な意見。
・原作通りなので新鮮味がない、という否定的な意見。


 私も、その作品によりけりですが、概ねどちらかの感想を抱くわけです。今回の「新大魔境」は、たしかにストーリー面で新鮮味や意外性はあまりなかったのですが、藤子・F・不二雄先生の原作に余計なものを加えることなく節度を保ったアレンジで映画化してくれていて、好感度が高いのです。これまでの映画ドラえもんリメイク作品は、目立った改変や新規なキャラクターなどを加えてくるパターンばかりだったので、今回のように原作に沿ったリメイクを観ると、そのことが新鮮に感じられました。どこかでストーリーを大きく変えてくるんじゃないかと予期しながら観ていたら、最後までほとんど変えてこなかったわけで、そのことに少し驚きを感じたりもしました。




「新大魔境」のストーリー前半は、特に原作に沿っているなあ、と感じました。
 正体を明かす前の四足歩行状態のペコの、あまりのかわいらしさに目を見張りました。品のよいかわいらしさ、人懐っこいかわいらしさ。そのかわいらしさに、原作のペコとの差異を感じたりもしました。「新大魔境」のペコには、抱きしめたくなるような、いとおしくなるような、絶妙のかわいらしさがあふれているのです。
 原作のペコこそが私のなかでのペコらしいペコなのですが、「新大魔境」でのペコはペコで、かなり好きになれて、愛情を注ぐことができました。



 どこでもドアでアフリカへ移動し、ジャングルでの冒険が始まったばかりのシーンでは、冒険の純粋な楽しさがみなぎっていました。ジャングルに生息するさまざまな動植物たちとの触れ合い&格闘! 植物改造エキスを使った食事! そうした楽しげなのび太たち一行を観ていると、映画ドラえもんの冒険シーンにはこういう楽しげなワンシーンがあって然るべきだ、との認識をあらためて強くするのでした。



 バウワンコ王国に着いてからは、原作の行間を補うような丁寧な描写が加えられ、王国の住民たちの個性や生活ぶり、ダブランダーによるクーデターの内容などが具体的に描かれました。前半と比べると、後半には結構アレンジが加えられたのです。
 特にサベールの存在感が原作より魅力的なかたちで強められました。小栗旬さんの演技力も相まって、かっこよくてキレるニヒルな敵キャラのイメージが鉄壁のものになりました。



 ダブランダー側の圧倒的な戦力を受けて「もうこれまで…」と悟ったペコが、のび太たち一行を離れ敵が待ち受ける方向へ一人で歩いていく…。それをジャイアンが追いかける…。ジャイアンを追い返そうとするペコとジャイアンのやりとりは、原作でも旧映画でも印象深いサイレント演出でしたが、「新大魔境」では旧映画と同じようなタイミングで旧映画とは別の曲を流し、効果を上げました。ジャイアンが自分の覚悟を伝えるためペコの左頬を一発殴るシーンは、その行為自体が鮮烈でしたし、ラストのお別れシーンでペコがジャイアンに向かって自分の左頬を指す…という素敵なシーンにもつながって、粋な演出でした。


 バウワンコ像はCGで表現されました。ほかのキャラクターとの画風の違いが、石像の質感を浮き彫りにすることになり、巨大で硬いものが柔軟に動いているんだ!という迫力を出すことに成功。古代兵器もCGでした。デザインが大幅に変更され、原作や旧映画の古代っぽさが消え失せました。これは変えなくてもよかったかな、と思います。『宇宙戦艦ヤマト』の「波動砲」を思い起こさせる「遠吠え砲」が使われて、あの無敵の巨神像がいったん倒れる…なんて意外な一幕もありました。
 王国の美術(背景)の素晴らしさにも目を奪われました。この王国は、水力を重要なエネルギーにしているのだなあと思ったり。



 随所で登場人物たちが頬を赤らめる描写が見られました。これも印象的でした。恥ずかしいとき、うっとりしたとき、登場人物の頬が明瞭に赤く染まるのです。その描写の極みが、ラスト、巨大風呂に入浴するしずかちゃんの表情ではないでしょうか。あの表情はよかった(笑)
 しずかちゃんといえば、スーパー手ぶくろでゴリラに対処するときの動きも魅力的でした。ゴリラの攻撃を見事にかわしていく動きに惚れ惚れ。あのしずかちゃんが、プロレス技・ジャイアントスイングを披露するなんて(笑) 風呂好きしずかちゃんの面目躍如たる言動も、しっかり描かれました。



 空腹のペコを救ったソーセージの出番が増えました。ソーセージの出番が序盤だけだった原作と違い、中盤(ジャングルでの食事シーン)、終盤(バウワンコ王国でののび太とペコの対話シーン)とソーセージが出てきて、のび太とペコの心をつなくキーアイテムとして重んじられました。1袋3本入りのソーセージが、1本ずつ小出しに使われていったわけです。
 それを観ていると、こちらもソーセージを食べたくなってきて、映画を観た翌日じっさいに買って食べました(笑)



 私は現段階で試写会と公開初日の2度この映画を鑑賞しました。試写会のときは千人以上のお客さんで埋まっており、子どもたちの笑い声やどよめきが何度も聞こえてきました。会場内が沸く頻度では、ここ数年の映画ドラ鑑賞時の中で最高でした。
 ところが、公開初日に鑑賞した劇場は席が半分ほど空いていて(客数は数十人)、子どもたちも反応も薄かったのです。そういう周囲の環境の差が映画を観ているときの高揚感に影響を与えるのだということを、今回強く実感しました。



 劇場用グッズはあれもこれも欲しくなってしまうのですが、価格と魅力を考慮して「バウワンコ消しゴム」と「ペコぬいぐるみマスコット」のみ購入。バウワンコ像の立体品が出てくれたのが嬉しいです。
 
 
 ・バウワンコ消しゴム

 
 ・ペコぬいぐるみマスコット