『チョコレート工場の秘密』

 ふたつ前のエントリで『ドラえもん』の「おかし牧場」をとりあげました。
 http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20150215

「おかし牧場」の中でのび太は、「たべてもなくならない…、そんなチョコレートがないかなあ」とじつにのび太らしい無茶な願いを発します。それを聞いたドラえもんが「おかし牧草」を四次元ポケットから出して、チョコを増やすことにするわけですが、私は今回あらためてのび太のそのセリフを読んだとき、ロアルド・ダールの児童小説『チョコレート工場の秘密』を思い出しました。
 
 この小説に、「たべてもなくならない」お菓子が出てくるのです。チョコレートではないのですが、その名も「永久ぺろぺろキャンディー」!
 いつまでしゃぶっていても決してなくならないキャンディーで、お小遣いをほとんどもらえない子どもたちのためにチョコレート工場のオーナーが発明したものです。


チョコレート工場の秘密』には、そうした奇妙なお菓子がいろいろと出てきて楽しいです。「子ども用なめられる壁紙」だとか、「寒い日のためのホット・アイスクリーム」だとか…。お菓子限定ながら不思議な発明品がいろいろと登場する点でも『ドラえもん』と通じるものがあります♪


 そんなふうに『チョコレート工場の秘密』では、いろいろなお菓子にロアルド・ダールの旺盛な想像力が活かされているわけですが、チョコレート工場内の光景にもまたダールの想像力があふれています。チョコレートの川が流れているとか、それが滝になって落下しているとか…。
 工場見学の場面で、行儀の悪い子どもたちが順々にひどいめにあっていくのですが、そのたびに、小人の工員たちが歌いだします。その歌のリズミカルな毒舌っぷりもおもしろいです。子どもたちとその親に対して辛辣で容赦がなく、とても痛快なのです。
チョコレート工場の秘密』は、ダールのイマジネーションとブラックユーモアを堪能できる作品なのです。


 ロアルド・ダ―ルは、児童向けの小説で人気を集めましたが、大人向けの小説でもまた高い評価を受けています。“奇妙な味”と呼ばれる短編小説の世界でその名を刻んでいるのです。
 藤子不二雄A先生はご自身のブラックユーモア短編について語るさい、そうした短編群を描くようになった動機として、ロアルド・ダールやスタンリー・エリンらの奇妙な味の小説からの影響をよく挙げられます。私は、A先生の文章で初めてロアルド・ダールという名前を知りました。F先生もダールの小説を愛読されていたようです。
 A先生もF先生も短編の名手です。そんなお二人の短編の名手っぷりの礎のひとつとして、ダールの短編小説も外せないものがありましょう。
「子ども向けでも大人向けでも傑作・人気作を残している」という点でも、両藤子先生と通じるものがあると思います。



●17日(火)、「ビッグコミック増刊」3月17日号発売。藤子不二雄A先生と西原理恵子さんのコラボ連載『人生ことわざ面白“漫”辞典』は、第39回「可愛さあまって憎さ百倍」です。ストーカーの話からブラック短編『水中花』に言及されています。