『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記』感想

 3月7日(土)から公開の始まった『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』。私は8日に藤子仲間計8人で鑑賞しました。その後、29日に別メンバー計7人(私も含め2人が8日とかぶってますが)でまた観に行きました。劇場は、両方とも名古屋のピカデリー。
(以下、感想を書きますので未見の方はご注意ください)
 
 
 
 
 
 
 観終えた直後の大まかな印象は、勧善懲悪の明朗な平成版まんが映画、罪のないウェルメイドな作品、というものでした。近年の映画ドラえもんの中でも、とりわけ低年齢層に照準をしぼった感じでした。冒険物語で戦闘場面もあるのに、童心を傷つけない気づかいが随所になされていました。冒険シーン・戦闘シーンに軽みをきかせ、深刻になりすぎないよう、激しくなりすぎないよう気を配り、できるかぎり楽しくあろうとしているようでした。分かりやすく伏線を張って回収し、絵柄は安定していてかわいらしく、ストーリーは直線的で、「無邪気に楽しんでほしい」という制作者の声が聞こえてきそうです。

 のび太の半ズボンとパンツが脱げる場面を筆頭に、ところどころで子どもの笑い声が起こりました。上映が終わった瞬間「面白かった〜!」との声もあがりました。私がこの作品についてあれこれ言う立場ではない、と思えてくるほど。(それでも、映画ドラえもんが好きな一人として、こうやって感想を書いてしまってますが・笑)
 物語の最初と最後の空き地シーンで登場した幼児たちや、他者を疑わないお人よしのポックル星人たちの並々ならぬ純真さは、この映画の全体的なムードを端的に象徴しているような気がします。


 私自身は、この映画を観ておおいに感動したとか、傑作だと唸ったとか、のめり込んで熱く興奮したとか、そこまでの心の動きはありませんでしたが、リニューアル後のオリジナル作品(F先生の原作マンガがない映画ドラえもん)としては健闘していたと思います。これまでのオリジナル作品には、ストーリーが破綻ぎみだったり、どうしてこんな無理な場面をそこにねじ込むの?と違和感を抱かされる作品もありました。ですから私は、オリジナル作品をやるときは無理に凝ったことやヒネったことはせず、もっとシンプルな作品にしたらいいんじゃないか、となんとなく思っていました。今年は、その思いが通じたかのように感じられたこともあって、好感を抱きやすかったのです。
 ゲストの芸能人声優も、これまでの作品では明らかに実力不足の人がいることもあったのですが、今回は皆さん力を発揮してくれていました。


 欲を言えば、もうすこし緊迫感や恐怖感などがあったほうが冒険活劇として盛り上がったでしょうし、一つ一つの出来事や一人一人の登場人物をもうすこし掘り下げたほうが観客を誘い込むドラマ性を持ったと思います。そこがもったいない気がしました。いや、欲を言えば…以降のコメントは余分ですね(笑) そういう欲は、リメイク作品のほうでどうにかしてもらえればよいのですから。リメイク作品としては最近作の「新大魔境」も、もうひとつ前の「新鉄人兵団」も、その意味で私の欲をしっかりとくすぐってくれる作品でした。来年はアノ作品ですね。楽しみにしています。



※今回の映画、藤子Fマンガからいろいろとネタを採ってきてたところは、低年齢層向けというより、もうすこし大きなファン向けだったかもしれません。
 主要ゲストキャラのアロンのデザインは、『ドラえもん』「流れ星ゆうどうがさ」に登場した宇宙人をモデルにしています。それだけでなく、アロンの姿を見ると、チンプイを思い出さずにはいられません。 敵キャラのひとりハイドのデザインは、SF短編『なくな!ゆうれい』のゆうれいがモデルです。

 そのほか、気づいたFマンガネタをざっと挙げてみます。

 ・OP曲の最中にSF短編『征地球論』の宇宙人たちが登場。
 ・劇中のヒーロー番組『ミラクルヒーロー銀河防衛隊』に、『ドラえもん』「異説クラブメンバーズバッジ」に出てきた地底人が宇宙人として登場。(動物粘土で作られた丸っこいのとグロテスクなの)
 ・銀河防衛隊のコスチュームは、『ミラ・クル・1』がモデル。
 ・のび太の部屋に「おばあちゃんのおもいで」のぬいぐるみが置いてあった。
 ・アロンがポックル星から宇宙へ飛び出したとき、バイバインで増殖し続ける栗まんじゅうが宇宙空間に漂っていた。

 他にもあったような気がしますが、まあこんなところでしょうか(^^