東山動物園

 先日、久しぶりに名古屋の東山動物園へ行きました。
 数多くの動物を見て楽しました。なかでも特に印象深かった動物を藤子作品と絡めて語ってみます。





・段ボールをかぶって戯れるオラウータン。見れば見るほど人間に近い種だなあ、と感じます。今年はさる年ということもあって、トップに登場してもらいました♪






・同じくオラウータン。今度は洗面器のような容器で水をすくって飲んでいました(^^) ひとつひとつの動作から賢さと愛嬌が漂っています♪



オラウータンの次に観たのがアフリカゾウでした。



・ゾウの皮に触れられるコーナーがありました。硬いっ!


 オラウータンアフリカゾウ。この並びでただち思い出すのが、『大長編ドラえもん のび太と雲の王国』です。雲の上に住む天上人が進めていたノア計画。それは、これまで地球をわが物のように破壊し汚染してきた地上人(つまりわれわれ)の世界を洪水で洗い流し、まっさらにしてしまおうという、とんでもない計画でした。地上人から見れば全世界の破滅ですが、天上人からすれば、これ以上地上人に自然を破壊されないための已むに已まれぬ手段でしょう。
 その計画を実行するかどうかの最後の審判が、天上世界の議会で実施されました。その証人として、オラウータンアフリカゾウが証言台に立ったのです。彼らは、地上人に自分らの住み処を壊され、仲間たちの命を奪われてきたことを訴えます。そんな立場ですから、ノア計画に肯定的でした。
 オラウータンといえば、『大長編ドラえもん のび太とアニマル惑星』で描かれたアニマル星の町長がウータン氏だったことも思い出します(^^)


 そして、アフリカゾウとくれば、『ドラえもん』の「野生ペット小屋」(てんとう虫コミックス30巻)でのび太が飼った赤ちゃんゾウが印象深いです。群れからはぐれた迷子のゾウ。のび太によくなつき、のび太もとてもかわいがりました。


 いま紹介したゾウはアフリカゾウでしたが、東山動物園にはアジアゾウのほうが多くいます。アジアゾウといえば、それはもう『ドラえもん』の「ぞうとおじさん」でしょう!





アジアゾウを眺めながら「ぞうとおじさん」を思い出したりしました。





・東山動物園のアジアゾウ舎の隣には、アジアゾウミュージアムのような施設が設置されています。そこで戦争を生き延びた2頭のゾウ「マカニー」「エルド」やゾウ列車に関する展示を観られました。



・「ぞうれっしゃが走って50周年記念」(1999年7月)の石碑です。


 戦時下、日に日に激化する空襲によって檻のなかの猛獣が町へ逃げ出したら危険である、との理由から、全国の動物園に猛獣処分の命令がくだされました。それによって上野動物園ではゾウが3匹とも死んでしまいます。その事実を童話化したのが、土家由岐雄の『かわいそうなぞう』です。『かわいそうなぞう』の悲劇的な結末に胸を痛めたであろう藤子・F・不二雄先生は、同様の状況下でゾウの命が救われる話を描きました。それが「ぞうとおじさん」です。
 東山動物園でも猛獣処分は実行されましたが、園長はじめ関係者の尽力で、終戦時に2匹のゾウが生き残りました。ほかの動物園ではゾウを観られなくなったため、東京や各地から東山動物園に来られるよう特別列車「ゾウ列車」が運行されました。その出来事は、絵本『ぞうれっしゃがやってきた』などで物語化されています。


 東山動物園で観られる動物のうち、園の広告塔的存在のひとつがコアラでしょう。




・東山動物園コアラ舎のシンボルマークのデザインは鳥山明先生です。


「コアラと藤子作品」といって連想するのは、藤子不二雄A先生の『夢トンネル』に登場するウィ〜キ〜です。ウィ〜キ〜は“バクコアラ”という種族らしいのです。見た目がコアラっぽいです。ユーカリの木で休息するところもコアラ的。

・『夢トンネル』(小学館クリエイティブ、2013年発行)


 バクコアラという種族名は、「バク+コアラ」のイメージでつけられたのでしょう。コアラの要素は容姿などに反映されているわけですが、バクの要素はどこにあるのでしょうか。獏(ばく)という動物が人間の夢を食べて生きている、という言い伝えがあって、『夢トンネル』が夢をテーマにした作品であることから、夢つながりでバクというネーミングを用いたのだと推測できます。
 東山動物園にもバクがいます。

・白と黒のツートンカラーが目を引くマレーバクです。

『夢トンネル』については当ブログで解説しているので、興味を持たれた方はどうぞ!
 http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20080126


 現在の東山動物園で最大のスターは、ゴリラのシャバーニです。昨年あたりから「イケメンすぎるゴリラ」として注目され、写真集が発売されるなど大きな人気を集めています。



 藤子作品にゴリラは何度もいろんなかたちで登場していますが、ここでは、タイトルに「ゴリラ」の語がダイレクトに使われている『ゴリラ五郎くん』をまずあげておきましょう。「たのしい三年生」1963年1〜3月号に連載された作品です。

・『ゴリラ五郎くん』(「たのしい三年生」1963年3月号別冊付録より)
 主人公の少年、五利五郎くんは、ゴリラが大好きで、ゴリラになりたいとすら思っていました。そんなときゴリラ博士に出会った五郎くんは、博士から「人間をゴリラにし、ゴリラを人間にする薬」をもらいます。博士が50年を費やして開発した薬です。五郎くんはゴリラに変身して活躍したり騒動を起こしたりします。
“ゴリラ五郎くん”という語感から、『大長編ドラえもん のび太とアニマル惑星』に登場した「ゴリ郎」を思い出したりもしました(^^)ゴリ郎はアニマル惑星の住民です。ゴリ郎の父ちゃんは、ジャイアンを自分の息子とよく間違えていました。


 あと、かなり細かいところになりますが、個人的にひそかに気に入っているゴリラネタが、『ドラえもん』の「ヤカンレコーダー」に出てきます。のび太しずちゃんスネ夫の3人がヤカンレコーダーにジャイアンの悪口をいっぱい吹き込むのですが、そのなかに「ノーテンゴリラ」という語があるのです。ノーテンゴリラって何だ?と心に引っかかりますし、意味はよくわからなくても悪口としてかなり破壊力があるよなあ、と笑えるのです。
 もうひとつ『ドラえもん』の細かいゴリラネタで私が好きなのが「テストにアンキパン」で見られます。あした国語と算数のテストがいっぺんにあって、このままだと確実に0点を採ってしまう、と騒ぎ立てるのび太。それに対しあまり聞く耳をもたないドラえもんでしたが、のび太が泣きつくので4次元ポケットから扇風機を取り出して「学校をふきとばせば、テストがない」と言います。もちろんドラえもんは本気で言っているのではなく、のび太にまともに手を貸すつもりがなかっただけですが、その流れで、ドラえもんが次に言った案が「じゃ、この動物ライトで先生をゴリラに……」だったのです。先生をゴリラにしてしまう…って(笑)にっこりとしながら不真面目な案を出すドラえもんの態度が笑いを誘います。そんなふうに、泣きつくのび太に不真面目な案を2つ続けて出したドラえもんは、「ふだん、勉強しないのがいけないんだっ」と一発説教をかまして、ようやく次にアンキパンを出してくれるのでした。