喪黒福造缶バッジ

 ヴィレヴァンでこんな喪黒福造缶バッジを見つけました。
 
 『笑ゥせぇるすまん「押入れ男」』のトビラ絵が使われています。


 私が「押入れ男」を初めて読んだのは、中学生のころでした。『笑ゥ…』に改題される前、立風漫画文庫の『黒ィせぇるすまん』で読んだのですが、鋭い精神的衝撃を受けたのを今も覚えています。
 
 ・立風漫画文庫『黒ィせぇるすまん』(立風書房、昭和51年8月第1刷発行)


 押入れの中に入ると安心できる…という男がいました。男は、喪黒福造に促されて押入れ生活をおくるようになります。何日かすぎて押入れから出た彼は、直射日光を浴びてめまいを起こし、倒れてしまいます。狭く暗い押入れの環境に適応してしまったんですね。そんな男を、喪黒がなんとかすると言って連れていった先は、全面ガラス張りの温室内でした。男は「ドシーッ」と絶叫。直射日光がふんだんに降り注ぐ環境下ですから、それは男にとって、魚が陸に上げられたようなものです。もはや生きていけない環境なのです。
 男は、温室内に置かれた唯一の逃げ場である小さな机の下に引きこもってしまうのでした。
 机の下に潜ってしか生きられなくなった男の哀れな姿を描いて、話は終わります。中学生の私は心の底をえぐられるような衝撃を受け、男のように「ドシーッ」と叫びだしたくなるほどでした。
 この作品を含め、中学時代のこうした衝撃的・トラウマ的な体験は、私をずっと藤子マンガから離れられなくした要因のひとつなのです。